コーチングからの学び①

いよいよ2018年も大晦日を迎えました。昨日12月30日は富士山女子駅伝が開催され、私がコーチとして携わる東京農業大学は6位という結果がでした。エース、主力でありながら、故障や調子が上がらず補欠に回った選手、エントリーには入れなかった選手、それぞれが違った受け止め方があったことでしょう。

さて私が2018年、大学チーム、市民クラブチームの指導を通して気づいた事、学んだことを書いていきたいと思います。練習スタイル、環境の違いはありますが、大会での目標を設定して練習を行っていくという点ではどちらも共通する部分です。

私が思う、しっかり結果を出す選手と出せない選手の大きな違いは何かという点にフォーカスしてみます。第一に言える両者の大きな違いは、常に自分自身に意識を向け自身の現状を把握する、すなわち「常に自分の現状がアップデートされていることに気づける力」ではないでしょうか。この力が低い選手ほど、目標タイムと現状の力に対して大きな差があります。目標タイムに目がいきすぎて自分の現状を把握できず、毎回同じようなところで失速してしまいます。失敗レースが続くことにより本当の実力が分からなくなり自信をどんどん無くしてしまうという悪い循環に落ちてしまいます。

次に見うけられるのが、「目的のずれ」ではないでしょうか。ここでも例として先日行った16000mのペース走という練習でのことを紹介します。1km手前で一人の選手の靴紐がほどけ結び直すために立ち止まります。(ほどけないようにするのが当たり前ですが、ここでは一旦置いておきます。)結び終えてすぐに前を追いかけるためにペースを上げ、追いついた時には息が上がり数キロ一緒に走ったところで離れてしまいました。ここでペース走の目的(一定のペース、リズムで走る)をはっきり持っていたならすぐに追いかけるではなく一周待って合流し、最後にプラス1周という判断ができたと思います。しかしこの選手の目的がいつの間にか「16000mを走る」になってしまったのではないでしょうか。現に練習後に聞いてみたところうまく目的を答えることができませんでした。

これは体重管理にも言えることで、体重の数値にばかり目がいってしまい、「走るための体を作る」から「体重を落とす」が最終目的になってるように思えました。その結果、後者の目的を達成しても前者の目的には程遠くなってしまいます。

故障明けの選手が復帰していく段階でもこの双方が試されます。まずは自分の力が故障前に対してどの程度なのかを把握することが大事ですが、痛みがないから朝練習、ポイント練習にも合流しようとします。本来、朝練習は負荷をかける高い強度の練習ではないので余裕を持って走るものですが、上記の考えでやってしまい、自分の体力がそのレベルにも達しないで続けることでどんどん疲労がたまり、負荷をかけるポイント練習でかけることができない、もしくは朝練習の段階でまた故障をしてしまうというパターンになってしまいます。

2015年9月、オーストラリア10000m記録保持者Benと出会った当時、彼はハムストリングスの怪我でメスを入れる手術の影響で歩くのがやっとの状態でした。34歳という当時の年齢でリオ五輪の代表を取るのは難しいのではと私は思っていましたが、常に自身の現状に目を向け、適切なトレーニングの質、量を考えていく力はすごく勉強になりました。周りの選手の結果に振り回されることなくどっしりと構え、自分のやることに意識を集中させる力の高さが現れていたと思います。当時は3人(Harry Summers,Oliver Hoare(今年度 NCAA1500m優勝),Ben)での練習が多く周りの二人が飛び出す時も、振り回されず自分の適切な負荷レベルを意識して練習をこなす姿は印象的でした。2016年4月、オーストラリア選手権5000mでは3位入賞。5000m代表はなりませんでしたが、見事10000mで代表を勝ち取りました。

一見、すごく単純なことのようですが、この自分自身を把握するというのは難しいことなんだと私自身痛感しております。だからこそコーチの役割として抑える時にしっかり抑えさせる、ひとつひとつの目的を明確化させる必要性があると思います。そのために選手の声を聞き、またそれが言える関係性が重要になってくると思います。


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原口孝徳

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コメント1件

「焦らない」という教え。アスリート向けを含め、コーチングの実例には、いつも人生訓あるいはビジネスノウハウが同時にあるとつくづく思います。
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