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読書感想文(伊沢拓司『クイズ思考の解体』:第二章 早押しの分類(P.309~P.126))其ノ①

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以下、読むのと同時進行で殴り書きしたメモを元に作成。(2021/11/2)

  ◇  ◇  ◇

・さて、早押しの分類。一番厚いところ。どうやらカラーページもあるようだ。

・今までに世に出されたクイズ問題構造の総まとめとアップデートとなっているのだろうか。25の構文、楽しみである。

史  上  😆  初  !!  

・マーカーとな。色分けか、全6種類。
・確定要素、前おき、確定後補足。んで、構文マーカー(ほぅ、これは独特だ)、あと形式と実質。ふむ。

・「確定要素」は、いわゆる確定ポイントがある節ね、たぶん。
・んで、「前おき」と「確定後補足」かあ。これ、長戸勇人・著『クイズは創造力《理論篇》』で登場した「クイズの文法」に連なる、いわゆる「クイズ問題の構造」の話をするのかと思っていたら、その先の話をするようだ。長戸本では「はなはだ抽象的で申し訳ない」と説明されていた(確定)ポイントの話を詰めていくのだな!!これは本質的ぜよ!!
・Quizologyでいうところの「限定力」概念で分類を試みたわけだ、多分。たしかに、これならば「早押しクイズ"問題文"の分類」ではなく、「"早押し"クイズ(をするときの思考を解体するため)の分類」だわ。この本の標題に合っているし、巻末の解説で徳久さんが「早押しの分類」と書いていた疑問も解決した。なるほど。

・ん?ともすると、帯に書いていた謳い文句は虚偽ではないか?帯にはこう書かれている。

★史上初(2) クイズの問題文をフレームワーク化
これまで体系化されることのなかったクイズの問題文を分類し、その構造を分析。クイズプレーヤーが早押しで用いる「思考過程」、クイズが持つ「推測や発見の面白さ」を余すことなく解き明かす。

・色々と、いや真っ赤っかな、赤一色でダブル役満の嘘である。
・先ず、伊沢氏が分類したのは「クイズの問題文」というよりも、「"早押しクイズの思考に合わせた"クイズの問題文」の分類であり、「早押しクイズの思考」に重点を置いた分類(というより例を列挙したのみ)である。
・「クイズをする時の思考の分類」には分析対象であるクイズの問題文が絶対に必要なので、表面だけをみるとクイズの問題文を分類しているように見えるが、帯を書いた者の理解が浅いと言わざるをえない。これは、仕方ない部分もある。
・しかし、決定的に事実誤認している点がある。
「クイズ問題文を体系的に分類したのは、本書が史上初である」という記述だ。これは、事実誤認が甚だしい。あと、もう一つ加えると、本書の分類は、体系だったものを見せれてはいない。土台、タマ出しだ。
・クイズ問題文の体系的な分類は、今までに長戸本、黒本、マニュアル2、(あと、途中に東大クイ研も一部はさむか?)、古川本と、アップデートが為されてきた。
・具体には、1990年の長戸本で、ストレートと複合型の二分類とその先の純ストレート、名数、多答、択一、パラレル、ディグの大枠とともにクイズ問題を構造として捉える考え方が示され、続く1994年には、黒本(『挑戦クイズ王への道~正道編~』)で、「よく出る切り口」として、語源、名言、冒頭の一節、正式名称、名数などなど切り口(ファセット)レベルの分類が示された。約10年の時を経た2002年、これらをマニュアル2がまとめなおし、その後、また10年以上を開けた2016年、古川本で再度、全体のおさらいに加え、金竜読みとよばれるクイズを読み上げ出題する側からの構造分析も加えて、押しのポイントをアップデートしてきた経緯がある。
・そして、今回、2021年、伊沢氏の解体本が登場。1990年から、2000年代、2010年代、2020年代と、各年代で「クイズに関する分析書」が出てきたことになる。

・この帯の謳い文句は、先人の業績を蔑ろにしているので、即刻、差し替えるべきである。注意深く読んでいけばわかるが、伊沢氏はこの本で新しく25の分類を紹介しているが、今までにない全く新しいものを出したのではなく、今までに示された「クイズ問題文の構造」の知見を下敷きにしながら、それを「クイズ思考」という「早押しクイズをあそぶときの思考分析」から捉え直し、アップデートしたものを示している。25の構文を、俯瞰してみると、ちゃんと、「クイズの文法」の流れで登場した構文が網羅されている。

・「クイズの文法」の先人達の書籍の例に則れば、先ず「クイズ問題文の構造的な分類」を行い、その次にそれを下地に「どこでボタンを押せるか?」という流れを踏むこととなろう。Quizologyでいえば、クイズ問題論のKnowWhat(構造把握)からクイズプレイヤー論のKnowHow(分析)へと繋げていく流れである。
・表面だけを見れば、本書では、今までのクイズ問題構造のKnowWhatを無視して独自のKnowWhatを提示し、「早押しクイズの思考」というKnowHowを出したので、全てが新しい史上初の要素だ!と見えてしまうのかもしれない。
・しかし、あえて伊沢氏はKnowHowから書き始めたのだろう。「構造」→「分析(ポイントの研究)」という王道の流れの「構造」の部分は既に先輩方が残してきたものがあるので、そこを踏まえた中級編として、巨人の肩に乗らせて頂こう。ということで、「ポイントの研究」を主語にして書きあげたことが、数々の発言や態度から察せられる。

・なので、伊沢氏本人は十分にわかっているのだ。しかし、「早押しの文法」を継承しアップデートさせていることを見せるために、過去の研究の「クイズ問題の構造」の説明を入れることも出来たろうが、ただでさえ厚い本をさらに分厚くもできないし、その順番で書くと構造論との対応関係や、構造論のみの視点では見落としてしまう視点も出てくる。なので、あえてここは、先人達の肩に乗らせて頂いて、「クイズ思考の解体」のみに注力させてもらったのだろう。

・となると、これは本の帯を書いた者が理解していないのだ。本を売るための過激でわかりやすい謳い文句のためならば、本の内容とあっていようが無かろうが関係ないのだ。ここは、伊沢氏はノータッチだったのだろうか?

・帯といえば、森博嗣の『面白いとは何か?面白く生きるには?』というワニブックスplus新書の本があり、クイズ等々の「おもしろポイント」研究のヒントになることが訥々と書かれてたので、誰かの参考になればと、Twitterで貼ったことがあった。
・んで、後々見返して驚いたのだが、Amazonのリンク画像の書影に、本の紹介の帯が含まれており、そこには、次のように書かれていた。

つまらないなんて、ありえない。

・は?

・である。本の内容を読んでいれば、このような宣伝文句になるはずはないのだ。そんなことは森博嗣は書いてない。
・おそらく、出版社の誰かが内容を理解しないで(あるいは、理解した上で売上のために)つけた売り文句だろう。そして、この帯を見た人がどんな気持ちになるか想像できなかったのだろうか?
・色々と考え詰めてもつまらないものしかないと塞ぎこんでいる者がこれを見て思うのは、「お!つまらないを脱却するヒントがある!読もう!」ではなく、「世の中のみんなは、「つまらないなんてありえない」と思うような陽キャラばっかで、自分はありえないダメなやつなんだ。」と世間から攻撃されたような思うのではないか。良いことがひとつもない。
・本書の方は『面白いとは何か?面白く生きるには?』という題名からも滲み出るように、主観の押し付けではなく、純粋に客観的に「面白い」という概念を眈々と分析していくものであり、俗人的なものでなく世界に普遍的に存在するものごとへの分析であり、読者側でも、ここはもっともだ、ここは別の考え方があると読んでいくことができ、すーっと、「面白い」についての価値観がアップデートされていく本なのだ。


・著者の配慮も、編集で台無しである。酷い。

・逸れた。戻ろう。

  ◇  ◇  ◇

・えっと、あと「構文マーカー」と「形式」と「実質」か。

・構文マーカーか、ちゃんと示したのは偉いな。
・あと、形式と実質、うーん。定義を書いてないね。ここで、注釈を書いちゃってる。これは、書き方がよくないね、うん。
・たぶん、難易度概念や接触可能性を考慮せずに、事実ネットワーク上で限定力が1となる場所のことを、「形式的には確定している」との意味で「形式」としているのだろう。
・んで、実質的、、。うーん、わからん。これは具体例を見ながら理解を深めた方がいいな。おそらく、接触可能性制約や、競技クイズルールメタ制約を考慮した、主観的な確定具合を「実質」としているのだろうなぁ。

・「形式」は「何について」「どんな観点で」形式的なのかという説明が抜けているし、「実質」も同様で、パッとイメージしづらい印象を受けた。
・厳密性はともかく、まだ、客観と主観の方がイメージに近いと思う。「客観(=形式)」はクイズプレイヤーを外側から観察した、非クイズプレイヤーからの見えかた、「主観(=実質)」はクイズプレイヤーが競技クイズの文法を理解した上で行っているクイズプレイヤーを内側から観察した、クイズプレイヤーはこう考えているよ!ってのだよ、ぐらいの理解が丁度よい気がする。
・この、非クイズプレイヤーとクイズプレイヤーの思考の違いを示すに、網掛けで示すってのはデザイン的にもよくないと思う。なんか、最後まで書いてた章だってことで、読者への導線が整わないまま出てしまったのだなとは思う。洗練の余地があまりある。

・ここらへんは、東大経済学部卒なのだから、「クイズ問題とは、制約の束である」とする問題観を取り入れて欲しかったなと思う。このように捉えると、大抵のものがスーっと説明でき、応用も効くようになる。東大卒で教授も監修ときいていたので、アカデミックな観点からの話を心の底でちょっと期待していたが、残念。配信でもご本人が、「論文と言われるが自分はアカデミックの人間ではない、エッセイだ。」という旨のコメントをしていたのは本当のことなのだろう。ぬぅ。

・欧米のクイズ界隈だと成熟しててアカデミックな人材もいるんだけどねぃ。日本だと、医者とか公務員は多いけど、教授まではいないもんなぁ。クイズ研究会に入る前は、クイズ研のOBはお医者様とか政府高官とかテレビ局重役、大学教授なんか天才ばかりの凄い世界だと夢見てたけど、現実はそんなことないもんね。セルフ調達は厳しいか。ぬぅ。

  ◇  ◇  ◇

・構文一覧をざっとみる。25コ。
・あぁー、ごじゃらあってなってるな。全体的で統一的な視座が見えづらい感じがする。体系的には見えない。何か統一的な視座があってのこの並び、25コなのだろうか。あえて、これを選んだ理由。
・一つ一つみていこう。

続く
(読書感想文(伊沢拓司『クイズ思考の解体』:第二章 早押しの分類(P.309~P.126))其ノ②)

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