第2セメスター開講「Quizology入門B(Ⅰ)」中間レポート課題:タンパン力を下げる改題技法について

※2022年12月3日のメモより

次のクイズ問題について、
(1)出題される「場」を想定し
(2)生じうる課題を記述し
(3)改善案を示しなさい

Q.製紙法が西方に伝わるきっかけとなった、751年に唐とアッバース朝との間で起こった戦いは何?

こたえ:タラス河畔の戦い


ちゃんと講義を聴講している生徒さんなら、ちょちょいのちょい♪なはずぜよ(´ー`)

タンパン力、単語のアフォー度、「盛る」や「飾る」の概念等々、講義を思い出すぜよ(´ー`)

  ◇  ◇  ◇

例題としたクイズ問題は、彩緋さんのノートから拝借させて頂きました。

例会で、このような形で出題し、ベタ問の改題スキルを磨く遊びに使わせて頂きました。

レポート課題をchatGPTに答えてもらうなど、おかげさまで楽しい時を過ごせました。黙礼を捧げます😌

11月29日:文房具クイズ20問|彩緋@クイズ好き


これをご覧の皆様も、どのような改題が可能か、そこにはどのような技法が使われているか、そして改題後の問題の出題意図がどのように変化するか、という観点で考えてみると、色々な発見があり、中々に楽しいと思います。

  ◇  ◇  ◇

以下、元のOFP(*1)は残しつつ「飾る(*2)」方向でタンパン力(*3)を下げる改題例を、幾つか残しておく。

≪元のクイズ問題≫
Q.製紙法が西方に伝わるきっかけとなった、751年に唐とアッバース朝との間で起こった戦いは何?

≪改題例その1≫
Q.西側のイスラーム世界へと製紙法が伝わるきっかけとなった、西暦751年に唐とアッバース朝との間で起きた戦いは何でしょう?

≪改題例その2≫
Q.この戦いに敗れた唐の捕虜によりイスラム世界へと紙の製法が伝わったとされる、西暦751(ry

≪改題例その3≫
Q.アッバース朝が成立した翌年に発生した、イスラム世界に製紙法が伝わるきっかけとなった戦いは何でしょう?

*1:Object-Facet-Propertyの組み合わせのこと。具体には、「タラス河畔の戦い」というAW(答え)となるオブジェクトや、「【影響】西への製紙法伝播の契機、【発生年】西暦751年、【v.s.】唐とアッバース朝、【def】戦い」といったファセットープロパティといった情報の構造のこと。

*2:F-Pに対するマロリー拡張や抽象度操作を適用することで、情報量や情報密度を高めること。

*3:単語が有する反応力(=特定制約下での被想起余域の分布具合)、略して「タンパン力(りょく)」。「製紙法」という単語は「タラス河畔の戦い」と共起しやすいが、「西側のイスラーム世界」という連語には共起しやすいワードは、現状では少ない。


≡以下、LINEからぐだめきを抜粋≡

幾つか(3)の想定解をば、
[例①]Q.西側のイスラーム世界へと製紙法が伝わるきっかけとなった、西暦751年に唐とアッバース朝との間で起きた戦いは何でしょう?
[例②]この戦いに敗れた唐の捕虜によりイスラム世界へと紙の製法が伝わったとされる、西暦751(ry
[例③]アッバース朝が成立した翌年にあたる西暦751年、唐の節度使が現在のタシュケントに攻めいったことで勃発した戦いは何でしょう?

例③に関しては「成立間もない新興王朝に対し、隣の大国が攻めいった」という「戦の位置付け」の知識を問う意図が大事なので、「西暦751年」は場によっては不要かも。

飾りが多く重苦しいので、短文風に改題。
[例③改]
アッバース朝が成立した翌年に発生した、イスラム世界に製紙法が伝わるきっかけとなった戦いは何でしょう?

「◯◯の翌年に発生」のパタンは無数に作れるため、人によっては、一見「751年」へのタンパンチを避ける意図、つまり早押しクイズにおける「ベタ外し」をするためだけに無理繰り問題文を弄んでいるだけやんと、不自然な改題だとの印象を受けるかもしれない。

しかし、[例③改]のクイズ問題の裏には「成立間もない新興王朝に対し、隣の大国が攻めいった」という「戦の位置付けの知識の有無」をゲームの勝敗に絡めたいという意図が隠れている。
とはいえ、それが伝わるように情報を盛り込むと、改題前の[例③]のように冗長な問題文となり、逆に伝わらない問題文となってしまう。

ここが悩ましいところである。
この一例からもわかるように、情報を盛ったり飾ったりする現代短文()においても、きれいに問題文におとしこめる情報とそうでない情報とが存在する。
それゆえ、ベタを避けることをモチベーションの1つとして技法を進化させてきた現代短文であっても、突き詰めていけば、これに落ち着くしかないというベタフリ、ベタ問が発生してしまうのだろう。

森羅万象からの出題を謳うとはいえ、限られた制約の中で作られた傑作たちだ。行きつく先は皆同じ。世界の約束により、当然に収束するのである。(=この項おわり)

(終)

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