カニ鍋

連載『オスカルな女たち』

《 最初で最後の晩餐 》・・・19

「だよね、だよね。でも、まさか…」
 正直この尋常でない妄想が現実であって欲しいわけではなかったが、当人にそれとして問いただせないことは往々にして人の興味を引くものだ。
「まぁそんな度胸はないと思うけどねぇ…」
「玲(あきら)もなかなか、意地が悪いねぇ…」
「やだ、つかさだって気にしてるじゃない」
 くすくす…と隠れるように笑い合うふたりは、パジャマパーティーの少女の姿そのものだった。

 一方、あっさりと放置された継(つぐ)の部屋のふたりは、
「ね、寝るか…。明日早いし」
 と、なにやら気まずい空気に包まれていた。
「そうだね。9時にはトラックが来るんだもんね」
 明日は継の家族の引っ越しのトラックがやってくる。織瀬(おりせ)と真実(まこと)は荷下ろしを手伝ったあと、つかさの新居に移動し、先に行っているつかさと玲と一緒に荷解き作業をする予定だった。
「寝よう」
 妙な掛け声とともに、ふたりは部屋の真ん中に敷かれた布団にお互い両側から入った。仰向けに並べられた人形のように同じ形で天井を仰ぐふたり。
 気まずい…。
「2度目だね…一緒に寝るの」
 さらに気まずい言葉を投げかける織瀬は、おかしい…といってくすくす笑った。






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