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連載『オスカルな女たち』

《 母か、女か、》・・・5

 こんな皮肉なことはない…と、真実(まこと)は拳を打ち付け「もっと早くに自分が気づいてやれたら」と激しく自分を責めた。
「ごめん。そばにいながら…」
 そう、疑っていたのは事実だった。
「そんな、真実のせいじゃないよ。あたしが悪いの…」
「でも…」
 40歳を過ぎていたなら、あるいはもう少し気持ちも違ったのかもしれない。いや妊娠を切望する女にとっての「不妊宣告」は、いくつだろうとその衝撃は他人が想像できる範疇ではないだろう。
 せめて「不妊治療」でもしていれば、あるいはもう少し早く病状が解ったのかもしれない。だが、今となってはすべてがあとの祭りだ。
 
 ひとしきり涙を流し、ようやっと落ち着くと、
「ありがと、ふたりとも。今日は、帰るね…」
 と、静かに布団をめくる織瀬(おりせ)。
「このまま泊まってってもいいぞ」
 体調を考えれば本音は「帰したくない」と思う真実だった。しかし、赤ん坊の泣き声の聞こえてくる産婦人科内の病室では、それは余計に織瀬を落ち込ませるだけかと、無理に引き留めることはできなかった。
「じゃ、あたし送るわ」
 真実の電話で、とるものもとりあえずとやってきたつかさは、はなからサロンに戻るつもりはなかったらしく自家用車で駆けつけていた。
「すぐだからいいのに…」
「あたしも帰り道だし…ついででしょ」
 そう言ってつかさは、自分のバッグと織瀬の荷物を抱え立ち上がった。

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