花茶

連載『オスカルな女たち』

《 ブレインストーム 》・・・3

「いったいいつまでそうしているおつもりかしら? まさか、ここに住んでるつもりじゃないでしょうね」
 あくまでも冷静に、だが声の調子は変えずに明日香を見遣る玲(あきら)。
「わ、私だって、考えてないわけじゃ…」
「そう。なら、今後どうするつもりかおっしゃって」
 当然、言葉が出るはずもなく、
「玲(あきら)さんのいじわる…」
「拗ねないでよ」
「す…拗ねてなんかっ」
 ぴんぽ~ん♪
 チラリと時計に目をやり、
「来たみたいね。…時間ぴったり」
 意地の悪い目で明日香を見ながら立ち上がり、玄関に向かう。
「お兄様、まさか手ぶらじゃないでしょうね…」
「ぁ、玲さん…!」
 すがるように呼び止める声も空しく、明日香はその場に小さくなっておとなしくしているしかなかった。隠れようにも他人の家でうろうろするわけにもいかない。自分が使っているゲストルームに逃げ込みたくても、たった今玲が出て行ったドアを出て正面に位置する玄関前を横切らねばならないのだ。敵(夫)に姿をさらしてまで逃げるような、そんなみっともない真似はさすがにプライドが許さなかった。
 気を落ち着かせようと紅茶の香りを吸い込み、一気に喉に流し込む明日香。
「ふぅ…」
 一方の玲は、電話連絡の際、短いやり取りの中いまいち乗り気ではなかった兄を思うと、ドアの前でどんな顔をして立っているのか、明日香以上に緊張を感じずにはいられなかった。

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