チューリップ紫

連載『オスカルな女たち』

《 真実を語る 》・・・14


 堕胎でなかったことに一瞬安堵するも、婚姻前の出来事に動揺を隠せない真実(まこと)。
「だとしても…全適は厳罰すぎだろ…」
「まぁ…そうかもね」
「相手は…? ユキくん、じゃない…」
(結婚前、だもんな)
「うん」

「ユキくんは」
「しらない…言えない。…言えなかった」
 結婚後「すぐさま子どもを…」と望む義母がいては、言えなかったのも無理はないだろうか。
(こういうことがあるから…!)
 女はいつも苦しむのだ…と、日々の診察に憤りを感じる真実だった。
「ずっと言えずにひとりで…?」
 結果真実は、やっと落ち着きを取り戻した織瀬(おりせ)を再び泣かせてしまうことになった。
「これからどうする? 家にいられないなら、うちに…」
 とはいうものの、真実は実家住まいで、自宅には多感な時期の機嫌の悪い娘と、腰痛持ちで詮索好きの母親がいる。少し考え、
「つかさは今、開店前で忙しいだろうし。うちはうちだし…」
 早口に述べた後、頭をかきむしり「玲(あきら)…んとこしかね~よなぁ…」と独り言ちた。
「もう大丈夫だよ。真実に話せたから…」
 すっきりした…とでもいうつもりだろうか。

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