花茶

連載『オスカルな女たち』

《 ブレインストーム 》・・・6

「そんなのっ、関係ありませんわ。せいぜい気まずくなさっていればよろしいのよ」
 そう言って語気を荒げてそっぽを向く明日香は、明らかにいつもと様子が違っていた。
「私だって居心地悪いわよ」
「私に味方してくださらないの…?」
 すがる明日香の言葉に、玲(あきら)は振り返り、
「味方もなにも…。正直、私はどうでもいいわ」
 すっぱりと言い放ち、ちらと兄を見るも目を背け、
「明日香さん。何年お兄様の妻をなさってるの…! ここにこうしてあなたがいることさえ違和感があるのに、更にお兄様がいるこの事態、私には気持ちの悪い状況でしかないのよ。御門の家で、これまであなたにだってほんの数回しか会えていないことを思えば、いい加減私の立場も理解できるでしょう?」
 とうとう本音を吐いた。
 料亭を営む聖(ひじり)は、生真面目だけが取り柄でほとんど家を空けたことがない。まして兄妹愛の希薄な妹のマンションを訪ねるなど思いもよらないことだろう。それを踏まえれば玲とて、年に数回しか顔を合わせない兄を、自分の家に呼びつけるだけでも大変勇気のいる行動だったのだ。
「そんな…」
「だから拗ねないでよ」
「拗ねてませんわっ!」
 普段はおっとり構えている明日香も、気を許している玲には遠慮がない。

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