連載『オスカルな女たち』
《 過去からの手紙 》・・・17
帰り道、それとなく織瀬(おりせ)に聞いてみようとつかさは言葉を探していた。だがそれは、織瀬も同じようだった。
「ごめんね、つかさ。つかさにこそお礼しなきゃ…」
タクシー乗り場に向かいながら、ポツリと織瀬が言った。
「あぁそんなこと。気にしなくていいのよ」
どう切り出そうかと考える。
「…彼。あきらめるって」
静かに織瀬が切り出す。
「え?」
「あの日、彼と会ってた日にね。『あきらめる』って言われたの」
「あきらめる、って、おりちゃんのこと?」
織瀬が、コクリと頷く。
「へぇ…」
そんな話をしていたのか…と、つかさを沈黙させた。
「ま、当然っちゃ当然? こっちは既婚者だしね。あきらめないって言われてもね…困る、だけよね?」
(困ってる、のよね?)
「なんか、振られた気分…」
「振られたのは、向こうでしょ?」
「そう、なのかな?」
「そうよ」
そう言いながら、つかさもその答えに納得しているわけではない。
(これで、ふたりは終わり…ってこと?)
そんなに簡単じゃないことはつかさも承知していた。
Prr…Prr…
「もしもし…つかさです」
『・・・・・・』
「こないだはごめんなさい。バタバタしちゃって…」
会おうと思うとなかなか会えないものだなと、圭慈に電話を掛けながら思うつかさだった。
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