カニ鍋

連載『オスカルな女たち』

《 最初で最後の晩餐 》・・・9

「手術の都合もあるけど…今、繁忙期だし。仕事減らしてるとは言っても、今月は披露宴も週末だけにとどまらないし…」
「最近、忙しそうだもんね」
 織瀬(おりせ)と一緒にいることが多いつかさの気になるところでもあった。
「今までもそれでやってきたし、生理じゃなきゃ痛みも貧血もないから、今さら安静にしたところで、ね。理由が解れば、むやみに怖がる必要もなくなった」
「それにしたってだろ…」
 急に過保護モードの真実(まこと)に、
「でも今は、サポートに回ってるから立ち仕事もそんなにはないよ」
 と、それでも過度な仕事はしていない…と微笑む織瀬。
「そのための今日、かな。あんまり考えなくて済むように、さ」
 鍋に野菜を足しながら織瀬はなんでもないことのように話した。確かに手術も2週間も待たされれば、だれかと会ってでもいない限り考えてしまうのは必至だ。
「でも術後3日で退院できるんだね」
 盲腸なみの速さだ…と、同じく手術に過敏になっているつかさが続いた。
「うん」
「思ったより大変じゃない?…のかしら…」
 ついと専門家である目の前の真実に目配せする玲だったが、思いのほか乗りの悪い様子に未だ「自分が先に気づけなかったこと」を気にしているのかと、あえて話を振るのを避け織瀬に視線を戻した。

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