スパイス

連載『オスカルな女たち』

《 スパイス 》・・・13

 玲(あきら)は「バカね…」と前置きし、
「逆にたいしたものだと思っているのよ。昔は昔で父親のせいで、寄ってくる男は将来を気にするやわなおぼっちゃんばかりで…ちょっと粋がっていると思うと、口先だけで逃げ腰だったり、女遊びでトラブル抱えていたり? そんなのばかりだったから」
「はぁ…」
 頭をかきながら緊張を誤魔化す秋山。
「20歳過ぎればなにかが変わるかと思っていたら、この派手顔と高飛車な性格のせいでどこかのおじさんの愛人扱いで、むしろ私を口説こうとする男はいないに等しかったの。…強硬手段はどうかと思うけど、…」
 と、最後に「いきなりのキス」に対する皮肉を込め、それでも「今までにないタイプの男」だと玲なりの励ましではあった。
「じゃ、じゃぁ俺にも少しは…」
 秋山の笑顔もつかの間、
「ないわね」
 そこは冷たく言い放つ。
「そんなっ、即答っすか~」
 落胆するも、オーバーリアクションのいつもの秋山節に、
(やっと調子が出て来たわね…)
 ふふ…と小さく笑って、
「あたりまえじゃない。あいにく私は主人に愛想もつかしていなければ、不満もないの。ヨコヤリ入れられたところでなびく要素はひとつもないわ。…本気で口説く気がないなら、そのやる気を他の娘(コ)に向けなさい」
 そう言って叱責した。

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