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連載『オスカルな女たち』

《 母か、女か、》・・・6

「ごめん。大変な時に…」
 自分もついて行きたい様子の真実(まこと)が心配そうに見送る。
「そんな…ごめんね、仕事中なのに邪魔して」
「だからつかさに来てもらった。大丈夫、ちゃんと仕事はしてるよ」
 とはいうものの、気が気じゃない真実はまったく仕事が手につかずに操(みさお)先生を呼んでいた。
「こっちが落ち着いたら、マンションに寄ってみるよ」
 帰りがけ、真実はそうつかさに声を掛け別れた。

 気が重い。

 本音はマンションに、幸(ゆき)のもとに帰りたくない織瀬(おりせ)だった。もう、しばらく幸とまともに会話をしていない。顔を見たら、いや顔を見なくても、今日病院で言われたことをきちんと話せるのか不安でたまらなかった。
「このまま帰って大丈夫? やっぱりまこちゃんのところに…」
 それが容易に想像できるつかさは、そう言ってはみたものの「やはりあの病室では酷だろうか」と口をつぐんだ。
「大丈夫だよ。黙ってるわけにもいかないし…」
「そうだろうけど…あたしも一緒に行こうか?」
「ぅぅん、平気。心配性なんだから…。でも、ありがとね」
「そうじゃなくて…」
そう言いながらなんと声を掛けたらよいのか、つかさも内心考えがまとまらずにいた。
「解ってる。…でも、自分で言わなきゃ」
「うん。でも、無理はしないで。なにかあったら電話してね」
「うん。ありがとう」
 そうは言っても本音はやはり、
(帰りたくない)
 会いたくない。少なくとも今は・・・・。

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