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連載『オスカルな女たち』

《 過去からの手紙 》・・・15

 あの日のふたりのただならぬ雰囲気は、勘違いだったのだろうか。
「つかささんは…ペリエでよろしいですか?」
 だが、いつも以上に淡々とした真田の接客に、つかさは違和感を覚えながら
「えぇ…」
 生返事をし、
「あ、おりちゃんは…」
 静かに席に着く織瀬(おりせ)伺うと、
「ホットウーロンにでもしましょうか?」
 と、相変わらず織瀬を気遣う真田の言葉。
(気のせい…?)
 だが、「なにか」が違う。「これ」とは言えないなにかが違うのだ。
「ありがとうございます。少し、ぬるめにお願いします」
 力なく答える織瀬もまた、別段おかしなところはないのに、小首をかしげたくなるようなもやもやが漂う。
(なんだろ、これ…?)
「胃潰瘍だって聞きました。ちゃんと食べてますか?」
「えぇ。あの日以来、痛みはないので。…食べてます」
「お大事になさってください」
「お気遣い、ありがとうございます」
 淡々と、かわされる言葉がさみしい。つかさがそう感じるくらいなのだから、織瀬本人とてなにか感じているはずだ。それとも「あえて」なのだろうか。
 そんなふたりのやり取りを眺めながらつかさは、あの日夜遅くに真田に連絡した時のことを思い返していた。

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