スパイス

連載『オスカルな女たち』

《 スパイス 》・・・3

「部屋の間取りはみんな一緒?」
「間取りは、正面から見て左端の部屋が2LDKで、他は2DKよ。便利さを考えるなら2階かしらね」
「今までアパートに住んだことがないから、ちょっとワクワクする」
 自立しているとはいえ、つかさは生まれた家を出たことがない。
「なにせコンビニもスーパーもない辺鄙なところだったから…。でもやっとコンビニ付きのマンションが1ブロック先に着工されたから、少しはましになるかしら」
「へぇ。そこも玲(あきら)の旦那様が?」
「というより、お兄様かしら」
 それは以前夫の泰英が、玲の実兄である〈望(のぞみ)〉から『社宅になるようなマンションを建てたい』との相談を受けたことから派生して進められた物件だった。

 当時の玲が、今のこの状況を見越していたかは解らないが、家族用と女性専用マンションの2棟が建てられることとなっている。
「お兄さんの会社の社宅?」
「全部ではないのよ。転勤で移動してくる社員の住居を、自分のところで造れば一石二鳥って考えてのことじゃないのかしら。ひとつの選択肢として」
「へぇ。だから女性専用?」
「それは私が、ね。あったら便利かしらって思ったのよ。…ここね」
 場所が記されているA4サイズの簡易地図を指し、流域面積の広い川を境に建物が密集している地域と開発途中の地域とがはっきりと解る部分を示す。発展途中のまだ新しい土地だ。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです