海

連載『オスカルな女たち』

《 孤独な闘い 》・・・14

「しかし、こんなに必要かね…?」
 ソファの前には細かく箱が並べられ、さらにその上に高さをそろえてお行儀よく乗せられたピンヒールやらハイヒールを見「店が出せるな」と皮肉る真実(まこと)。
「あら、玲(あきら)さんだってそのくらい持ってるでしょ」
 淹れたての紅茶を手に、突っ立ったままの真実に手渡し、自分はベッドに腰掛けた。
「そういうこと言ってんじゃない」
 確かに、自分と靴のサイズが同じ玲に以前結婚式用のヒールを借りたことがあったが、クローゼットの中は同じような光景だったことを思い出した。
「あぁでも、自分じゃ修理なんかしないか。本物のお嬢様だもんね」
 わたしと違って…と、言葉を濁してカップに口をつける弥生子(やえこ)。
「こういうのって、支給されるもんじゃないの? 女優様は」
 それまで弥生子が座っていたソファにドサリ…と荷物でもおろすようにして座る。
「あぁ、そういうこともあるわね。けど全部じゃないわ、借りるのよ、あれは。でもこれは私物、プレゼントがほとんどだけどね…」
 いちいち語尾に音符がはねたような言い方をする。
「あぁそうですか」
(聞くんじゃなかった)

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです