海

連載『オスカルな女たち』

《 孤独な闘い 》・・・19

「やっぱりね…。お母さまのあの様子だと、なんの進展もなさそう…」
「話したのか? おふくろさんに…!」
「やだ、コワイ。そんな…」
「いいから! 話したのかって聞いてんの」
「話してないわ…一応、主治医はあなたですもの。でもね、」
 こっちもこっちで生まれてきてからでは遅い…と、話を続けたい弥生子(やえこ)だったが、少々大げさすぎる真実(まこと)の態度を訝しんだ。
「なんなの? なにかあるの?」
「は…」
(よかった…。でも、潮時か)
 そんな弥生子の疑いの眼差しなど気づく余裕もない真実は、その場をやり過ごし去ろうとする。
「まぁいいや、今夜はあたしいないからおとなしくね」
 いい終えて、出口に向かう。
「あらどちらに?」
「同級生のおうちに引っ越しの手伝いに」
 わざと勿体つけた言い方をする。
「今から?」
「今夜は前夜祭。とにかく、例の件については、もう少し時間を…」
「真実さん。なにか話があってきたんじゃないの?」
「え…」
「診察以外で、ご機嫌伺いでもないでしょうし。わたしの話し相手をしてるほど暇じゃないはずよね? 今夜は予定があるみたいだし…? ホントはなにしにいらしたの?」
 さすが女優というべきか、実にいやらしい目で疑いを掛けてくる。
「あ~」
(なんでそんなとこばっかり鋭いんだ…?)
 でも事実はそうなのだ。弥生子に確かめたいことがある。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです