カニ鍋

連載『オスカルな女たち』

《 最初で最後の晩餐 》・・・7

「また新しいオスカルが出てきた」
 空のボトルを受け取り自分の足元に置くつかさは、とことん『オスカル』には疎い様子で苦笑い。
「あたしも知ってる。子リスちゃん、人の彼氏とっちゃうって子でしょ? え、まさか」
 と、なんとなくうろ覚えの織瀬(おりせ)。
「そのまさかよ。どうやらお兄様の浮気相手がその子リスちゃんだっていうのよ。明日香さんの話だと、ね」
「どっから湧いて出た?」
「店で仲居をしているらしいわ」
「へぇ~」
「気づかなかったの? その、雇う時に…」
 自分の分を取り分けたところで席に着く織瀬。
「仲居を雇うのは仲居頭に任せてるらしくて…明日香さん自身、履歴書を見た時は名前だけじゃ気づかなかったみたいなのよ」
 箸を止め、ため息をつく玲(あきら)。
「なんて名だった? 子リスちゃん」
「若林舞さん…って言ってたかしら」
「若林さん…知らないなぁ」
 そう言ってつかさはグラスを口に運んだ。
「それは事実なの? 浮気の話は…」
 曲がりなりにも明日香の夫は玲の実兄だ。追及するにも遠慮がちな織瀬。
「知らないわ。でも、どうかしらね…? 明日香さんは話しだすと泣き出すし…お兄様はお兄様で、なぜ家出されたのか気づいてもいないようだったし…?」
「子リスちゃんひとりが盛り上がってんのか?」
「と、思うわよ。私は…」
 そう言って玲はグラスを空けた。

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