エンタメはしんどい思いをしてまで享受する物なのか

 最近1つの興味深い質問を頂いた。「ラジオリスナーを続けていて、一番しんどい事って何ですか?」という質問だ。ラジオはそもそも楽しく聴くものであるし、「しんどい」という単語は似つかわしくない。しかし実際問題、ラジオリスナーを続けていると、しんどい瞬間というのは幾つもある。折角なので、ラジオリスナーを続けている中で感じたしんどさを、ランキング形式で具体的な当時の体験と共に、ここに記すことで、質問の回答としたい。


第3位 生活環境の変化

 人間誰しも、生活環境が変化する瞬間というのは訪れる。進学、就職、転勤、家庭環境などなど。毎週同じ時間に放送される番組を聴くことが、生活のルーティンとなるラジオリスナーにとっては、生活環境の変化というのは、いっぺんに確立されたルーティン破壊するものになる。大好きで毎週欠かさず聴いている番組の放送時間に、ラジオを聴くことが出来なくなってしまうと、嫌いになったわけではないのに、自然と耳が遠のいてしまう。4月や10月を境に、突如何名かのラジオネームをめっきり聴かなくなってしまうのは、最早風物詩である。私自身も就職に際して、明らかに土日のラジオ番組から離れてしまった。平日はみっちり働いている分、土日にあらゆる事をしなければならず、ラジオに割く時間を減らさざるを得なかった。しかし、リアルの生活を破壊するわけにはいかない。心が離れたわけではないのに、自然と好きだったパーソナリティの元から去る形になってしまうのは、大変心苦しいことである。


第2位 他のリスナーとの闘い

 これはマジでカス。最近「推し疲れ」というワードを、頻繁に目にする。余暇を充足させるためのものである、趣味の活動に疲れを感じる事がおかしいという世論は、真にその通りである。しかし、自分がエンターテインメントを享受する事を、第三者に不当に妨害されたり、否定された結果、疲れ「させられる」のは、全く納得のいくものではない。ネタメールの腕を競い合う、建設的な闘いはウェルカムだが、勝手に湧いてきたアンチとの闘いに疲れる時間は、1秒も要らん。「推し疲れ」というワードで可愛い感じにまとめ上げられるが、実態はドロドロと汚くエゲつない世界が広がっている。折角の機会なので、これまで他のリスナーと闘い続けてきた中で、笑い話にしたいエピソードを何本か紹介する。

①俺のせい?
 お世辞にもトーク力が成長しているとは言い難かった、新人声優の番組のリスナーから、当時その番組に毎週メールを書いていた僕に対して、「変に書き慣れたお前のメールが使われてばっかやから番組がおもんないわけで、〇〇ちゃんがおもんない訳じゃない。早く聴くのを止めろ。」という内容の、コメントが複数回継続的に届いた。これだけ好き勝手言われて聴き続ける気にもならないので、その番組から離れたが、「面白くないのはお前のせい」って言われていたのに、離れてからも普通におもんないまんまだったらしい。悪なかったやんけ!

②そこまでするか?
 番組名も聴いた事ない番組で、自分のメールが採用されていたという、ホラー過ぎる情報が届いた事がある。radikoのタイムフリー機能で聴いてみると、確かにラジオネームは自分のものだった。偶然にも同じラジオネームを思いついた人が居たという奇跡も考えたが、その番組のハッシュタグを付けてツイートしているアカウントが、自分に対する誹謗中傷をしているのを発見して、「なりすまし」を確信。疑わしき人物にコンタクトを取ってみると、「このラジオネームを使って、局に倫理観の無いお便りを送り続ければ出禁にでき、業界から干されると思った」という旨をゲロった。知らないところでBLに入れようとしてまで、特定のリスナーを採用させたくない勢力がいるらしい。

③即落ち2コマ
 盲目的に推しちゃん(笑)が大好きなオタク君が、推しちゃん(笑)の番組に届くメールに対して、「オタクの自分語りなんか求められてない。メール職人は金を払わず承認欲求満たしてるだけのカス。金払ってる奴が偉い。告知と作品の感想だけまとめてろや。」と、熱い批判を展開。直後の放送でその推しちゃん(笑)が、「みんなの話どんどん聞きたい!特に恋バナとか!ふつおた送って!!」と、オタク君の批判と真逆のコメントを、偶然かはたまた必然か披露。その日の放送だけ彼は番組の実況に現れませんでした。


第1位 安定性

 他のリスナーとの闘い以上にしんどいのは、己との闘い。メールを書く人間としては、ずっと出力を安定させる事は至難の業である。安定した納品が出来てこその、「職人」の免許皆伝だ。似たような内容のコーナーは色んな所で行われるので、ネタが切れて全く書けない時期は来るし、同じ番組で何か月も不採用が続くのもザラ。そんな時には心が折れて、書くのを、更には聴くのを止めようと普通に思う。ただ、筆を止めている間にも、他の人はネタを送ってるし、まだ未公開のネタを多数秘めた新顔が、どんどん出てくる。
 「常連」という言葉は本当に重く、「常に名を連ねる」という字面の通り、パーソナリティや他のリスナーから、毎週のように採用されるのがある種当然のことのように期待してもらえる。特にパーソナリティから公認を貰っていよう物なら、簡単に折れるのはプライドが許さない。誰から頼まれて書いてるわけではないが、自分に負けたくない一心でメールを捻り出す時間が、一番しんどい。その時間には最早、エンタメを楽しむ気持ちは1ミリもないし、傾向と対策から導かれた「置きに行った」1通を、泥臭く書く姿勢を出すときもある。全打席ホームランを狙ってこそ「職人」という声もあるが、私は「職人」という言葉には、飛距離だけでなく出塁率も大いに必要と考えているので、チームバッティングに近いようなメールを納品することも、必要だと思い送っている。ただ、長いトンネルを抜けた先で飛び出す1発が、一番破壊力を持つことを、圧倒的な達成感をもたらすこともまた知っているので、当然次にホームランを放つ瞬間に向けて、刃を研ぎ続ける事は止めない。最早ラジオリスナー生活は、エンタメを超えてスポーツの域にある。

※感じているストレスの大きさによっては、キッパリ手を引いて自分の心身の健康を守る事も大事なので、壊さない程度に頑張って行きましょう。スポーツ選手も強い負荷と故障を天秤に掛けてトレーニング計画練る訳ですし。健康第一!


以上、エンタメは自己実現の手段として本気で向き合う場合に限っては、しんどい思いをしてまで享受する物である!

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