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絶望の先にあるもの ~7歩芽~

両方の手をくっつけた私の手のひらに、
先生はわが子をのせてくれた。

先生。男の子ですかね?
と、私は聞いた。
そうかもしれませんね。
と、先生は言った。

すでに決めていた名前があって
私は手のひらのわが子を心の中でよんだ。

逢いたかった、わが子。

幸せだった。
本当は、逢えなかったかもしれなかったんだ。
いっぱい、いっぱい治療してきたことを思い出した。
辛かったけど、今、この子に出逢うために
頑張ってきたんだ。

小さな箱を用意してくれ、
夫が昨日お見舞いのときに持ってきてくれたお花を
わが子のまわりに敷き詰めてくれた。
冷たいところに保管しないといけないと説明を受けた。
先生も、看護師さんも、優しかった。

翌日、火葬した。
役所に死亡届を出してもらい、
親には来ないようにお願いして、夫と二人で火葬場に行った。

できれば骨を残してほしい。
と火葬場の方にお願いした。

身長10センチ、体重15グラム。

ネットで調べたら、小さすぎて骨まで燃え尽きてしまうそうだ。
箱には、私が手作りしたよだれかけを入れてもらった。

外にでて、煙を眺めた。
なんとも言えない思いがこみあげた。

火葬場の方が、とってもいい方で、頑張ってくれたんだと思う。
あばら骨がわかるくらい、きちんと骨を残してくれた。
そして、火葬場の方はこう言ってくれた

「なかなか、残せないんです。いいお子さんですね。」って。

心があたたかくなった。

それからの日々、私は毎日、毎日、信じられないくらい泣いて過ごした。
声をあげて、あーーーん。わぁーーーーん。って泣いた。
一人で、しゃっくりをあげるくらい泣き続けた。
病院では、精神病と診断された。
薬を処方された。
精神病の病院に行くことを勧められた。
悲しい気持ちが薬で止まるとは、思えなかった。
処方された薬は飲まなかった。

また授かるよ。
と事情を知っている人に言われたが、絶対授かることなんてない。と思った。
今回は奇跡なんだ。
ほんの少しだけ、神さまが私に妊娠という幸せをみせてくれたんだ。

毎日毎日泣き続けていたが、ある日なぜか私はyoutubeで
北海道出身の登山家である栗城史多さんの動画をみた。
火葬した日から1ヶ月がたっていた。
そのとき「がんばれ」と応援する気持ちがわいて、
久しぶりに、自分の表情がかわっていくのが感じられた。




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