7つのルール

【組織論】わたしがNewsPicksに参画したワケと"海賊とよばれた男"の書評。

今日は、2018年1月からNewsPicks社(ユーザベースグループ)に参画した理由を振り返りながら、「海賊とよばれた男」の名言と重ね合わさる点をまとめつつ、この希少な「組織」についてご紹介します。

私がNewsPicks(ユーザベースグループ)に参画したワケ

2018年1月から参画したNewsPicks社だが、実は最初にお声がけを頂いた時、単なるメディアビジネスであればお断りしようと思っていたのだ。
がしかし、社員と会話するたびに、その魅力と可能性に激しく共感したことを思い出す。ユーザベースグループの連結子会社であるNewsPicks社は、当然にユーザベースグループの文化(バリュー)を体現し、同社が掲げる"7つのルール"の再現性が高い組織である。結論から言うと、「この文化が体現できる組織は今後永続的に最強だ!」と感じたことが参画する最大の理由であり、今も変わらぬ共感を感じている。

"7つのルール"とは、
①自由主義で行こう
②創造性がなければ意味がない
③ユーザーの理想から始める
④スピードで驚かす
⑤迷ったら挑戦する道を選ぶ
⑥渦中の友を助ける
⑦異能は才能

"オープンコミュニケーション"がこの文化の要

入社当初、「なぜ上記の"7つのルール"が成り立ってるんだ?」と不思議に思ったことを思い出す。本当に自由主義で"個人のwill"を尊重し、極端な例だと「出勤義務」が無かったり、メンバー個人個人が「創造的」であり、どんどん新しい挑戦が生まれて、カオスになるくらい・・・。超絶稼働しながら毎年の売上も150%成長を続けている。
普通の企業ならサボる人や異能集団すぎる故のCONFLICTが起きて学級崩壊してもおかしくない。
もちろんグループ全体でもマネジメント層でも現場でも、全員が"7つのルール"の体現を大切にしているからではあるが、それにしても「性善説」がここまで成り立つのか?という率直な疑問があった。
組織に交わりマネジメントを任される中で、この疑問という謎を徹底的に考えていった。その結果、一つの解に至った。
それが「オープンコミュニケーション」である。

最強の組織文化「オープンコミュニケーション」とは?

「オープンコミュニケーション」とは、そのまま額面通り「オープンにコミュニケーションすること」だ。ただ、ユーザベースグループにおける「オープンコミュニケーション」の実行力は一般的なそれとは異なる。単なるお題目ではないのだ。どんな企業にも組織課題は山積していると思う。
例えば、

▼それぞれの部門が縦割りになり、部分最適のみ。
▼相互理解と相互尊重が無く、社内調整業務というムダな仕事ややり直しが絶えない。
▼風通しが悪く、適切な意見交換が行われず、現場、中間管理職、経営陣の間に溝がある。
▼組織内的なタブーが存在しており、本音が語られるのは喫煙ルームや新橋のガード下ばかり。
▼会社の未来や、ミッション/ビジョンは語られず、個人と組織が「学習障害」に陥っている。

(組織課題って、どれも「根深い課題」であり改善が大変ですよね)
これらの組織課題は総じて、「相互コミュニケーション不全」が根本原因だと思う。そのため、「オープンコミュニケーション」で全て解決できるのでは?と個人的に感じている。
ユーザベースグループの組織の強さは、社員どおし(水平上下ともに)の相互理解と相互尊重という「心理的安全性」の上に「オープンコミュニケーション」がワークし、"7つのルール"が「学習する組織」を実現し、「会社のミッション/ビジョン」が全てを牽引していくというカタチに整理できる。

ユーザベースの"7つのルール"とバリューに助けられた恥ずかしくも嬉しい話

私自身も、この「オープンコミュニケーション」に助けられた経験がある。お恥ずかしながら、せっかくなので、ここでもオープンコミュニケーションしておく(笑)
2018年4月から現在のチームのマネジメントを引き継ぎ、文字通り昼夜を問わず仕事をしていたのだが、売上拡大のためのマネジメントスキームの構築と環境整備、日々追われる個別案件対応、その上にプレイングとして現場対応を一気に担ったため、本来のマネジメント業務に割く時間が取れず、「右を取ると左が落ちる」といった具合にマネージャーとしての責務を完全に果たせておらずチームメンバーにも迷惑をかけてしまっていた。

そんな折、同僚のO氏から「オープンコミュニケーションなので言いますが、いまの飯塚さんのマネジメントは、本来のあなたの強みが発揮されず、自身のパフォーマンスが発揮できていない」と率直に意見をくれた。このことがターニングポイントであり、本当に助けになったのだ。
O氏は、「パフォーマンスが発揮されていない」と忠告しながらも「僕にでできるところを助けるから役割分担しよう」と提案してくれた。
当時、マネジメント業務の全てを自分で背負って、自分でも後手になってしまっている部分を認識しながらも、寝る間も惜しんで動いているのに後手が解消されず、自分自身が苦しんでいた。

このO氏に「自分自身も後手になっていることが認識していながらも改善できず辛かった」と率直に話せたことだけでも、心の蟠りが溶けていくのを感じた。
そこからは、晴れた景色で業務が遂行でき、自分の強みを活かしたマネジメントに徹し、メンバーの頑張りがあって、昨年度は下期から数字も一気に伸長し、年度内2ヶ月前倒しで年度達成に到達した。

一見当たり前のやりとりなのだが、「オープンコミュニケーション」が私を救ってくれた経験として今でも心に深く刻んでいる。
それ以来、部下から組織的な相談を受けた際は、「それは直接当人とオープンコミュニケーションで率直に意見しよう」と促すようにすることを心がけている。その相互の会話に同席しても、決してマネージャーが代弁してはならない。代弁しては「オープンコミュニケーション」の良さが発揮されないのだ。一瞬のCONFLICTを恐れず、建設的な改善策に期待し、率直に「オープンコミュニケーション」していく。これが、最強の組織文化なのだと思う。

「海賊とよばれた男」を読んだら、そこにユーザベースがあった

話は少し変わるが、この希少な組織「ユーザベースグループ」を日々の業務の中で感じ、できるだけ自身でも体現し、メンバーに促しながら、「こんな組織は、新しく最強の文化だな(ウフフ)」と勝手に思い込んでいたのだが、先日ふと読んだ「海賊とよばれた男」の中に、まったく同じような素晴らしい組織文化が描写されていて衝撃を受けた。
ご存知のことと思うが、「海賊とよばれた男」は百田尚樹氏の歴史経済小説で、『人間尊重』『馘首(解雇)はなし』『出勤簿も就業規則もなし』『社員は家族』などの独特な社是を持つ、戦後混乱期の「国岡商店」を舞台にした作品だ。そこで描かれる店主"国岡鐵造"は、当時の出光興産の出光佐三氏をモデルにしており、生々しい経営哲学が学べる良著である。
本書を読み進める中で、戦後の時代にもかかわらず国岡商店には「就業規則もなければ、出勤簿もなく、定年もない」ときた。(さすがに就業規則はあるが)ユーザベースグループの"7つのルール"「自由主義で行こう」ではないか!!もうこの時点で胸が高鳴りつつ、爆速で読み進めることになった。

「海賊とよばれた男」の名言と"7つのルール"

ここでいくつか「海賊とよばれた男」に出てくる名言を紹介する。

たしかに国岡商店の事業はすべてなくなった。残っているのは借金ばかりだ。しかし、わが社には、何よりも素晴らしい財産が残っている。一千名にものぼる店員たちだ。彼らこそ、国岡商店の最高の資材であり財産である。国岡商店の社是である「人間尊重」の精神が今こそ発揮される時ではないか。

「人財」を一番に考え、個々人のwillを尊重し、個々人のエッジを育て、経営側が社員へ傾聴していくユーザベースグループのそれと同期して感銘を受けた。

タンクの底を浚う事業はひとり国岡商店だけのためではない。商工省の面子のためでもないし、こんなことで恩を売る気もない。この事業を成功させることによって、GHQから日本に石油が配給されることになれば、これほど素晴らしいことはない。すなわちこの事業は日本のために行うものである。渡辺は半ば呆れ半ば感動していた。命知らずの海軍でさえも手を出さなかったタンクの底に降りようと考えるとは。しかも、そのことで見返りさえも期待しない。日本中が自分のことしか考えていない中にあって、いったい何という人なんだ、この人は。

これは「ミッション/ビジョン」経営そのものだと感じた。ユーザベースグループも「経済情報で、世界を変える」というミッションが、全てを司っており、社内でも「社長の上にミッションがある」とされている。
ユーザベースグループではこの「ミッションへの共感」を重要視しており、私が面接する際にも「ミッションフィットしているか?」「バリューが体現できそうか?」を優先して評価しており、「スキルセット」は最後にチェックするくらいだ。スキルがあっても、ミッションフィットせずバリューが体現できる原体験の要素が無ければ徹底して採用しないのである。

これは日本のすべての組織について言えることですが、日本ではまず「組織が先に作られ、トップが決まります。そして下部組織が作られ、その管理者が決まります。順次、そうして下部組織が作られていくために、最終的に非常に大きな組織になってしまうのです。大事なことは、まずその仕事にどれくらいの人数が必要なのかということです。そして、それを適材適所に配置する。あとはそれを管理する上の者を最低限揃えればいい。

一見当たり前なことでもあるが、"7つのルール"の中でも「迷ったら挑戦する道を選ぶ」に通じるところを感じる。ユーザベースグループでも「Quartz Media, Inc.」の買収を始め、多くのグループ会社や事業が生まれている。個人のwillを尊重し挑戦を後押しする中で、そうした「やりたい事業」がまずそこにあって、必要なメンバーが集まり、最後にマネジメントを適切に配置するという流れ。これはNewsPickもそうだ。

銀行は単なる金貸しではない。採算ある事業、たしかな未来のある事業と思えばこそ、融資もする。ラジオのことを何も知らない経理部長が行って、銀行家を納得はさせられない。(店主国岡鐵造は、銀行との融資交渉に惨敗していたラジオ修理事業を推進する元海軍出身の担当者に「熱意が足りない」と叱咤激励をした)

これは"7つのルール"とは異なるが、ユーザベースグループの各グループ会社の創業者は、皆「自分がまずやりたい」という「熱意」が先にあって、事業が生まれてきたそうだ。個人のwillこそ最高の推進力であり、その熱意は戦後直後の銀行でさえ融資の決断を促すものだと共感した。

ユーザベースの"7つのルール"とバリューを因数分解して演繹帰納をして考えたら、この書籍に行き着いた

以上、少し長く書きすぎたが、最後に、私がNewsPicks(およびユーザベースグループ)のバリューをいち早くキャッチアップし、かつ自分なりに咀嚼していく中で、以下の本に行き着いたのでご紹介しておく。

「学習する組織」入門

この著書は、ある人生の先輩からオススメして頂いたものだ。オススメされてチラ見して、すぐに惹きつけられた本の一つだ。「学習する組織」は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のピーター・センゲが提唱した新しい組織の概念であり、実践のための手法が体系だててあり、大変わかりやすい。
調べてみたら、どうやら、ナイキ、ユニリーバ、インテル、VISA、世界銀行など多くの企業・組織に取り入れられており、国内でも日産、リクルート、国際協力機構などで導入されているという。
簡単に要点だけ列記しておく。

3つの力と5つのDiscipline

<3つの力>
1. 志を育成する力:
個人、チーム、組織が、自分たちが本当に望むことを思い描き、それに向かって自ら望んで変化していくための意識と能力
2. 複雑性を理解する力:
自らの理解とほかの人の理解を重ね合わせて、さまざまなつながりでつくられるシステムの全体像とその作用を理解する意識と能力
3. 共創的に対話する力:
個人、チーム、組織に根強く存在する無意識の前提を振り返り、内省しながら、ともに創造的に考え、話し合うための意識と能力
<5つのDiscipline>
▼自己マスタリー:
ビジョンと現実の両方を見据えて探求内省を行い、自ら意識的に選択を行うこと、そして根源とつながって自身のあり方を磨き続けること
▼システム思考:
組織や市場や社会における相互関連性を理解すること、多様な個の集まった全体性を感じること
▼メンタル・モデル:
自らの思考やコミュニケーションの開放性を保つこと、そして、自らの無知を知りながら真実を愛する心を育むこと
▼チーム学習:
メンバーたちが「今ここ」にありのままにいてエネルギーを集め、メンバー間の意図や理解が「合致」した状態を生み出すこと
▼共有ビジョン:
メンバーの間で互いの目的やビジョンの共通性を見いだし、その理念と互いに対してコミットするパートナーシップを築くこと

この著書の三分の一を読了した時点で、「あれ?"7つのルール"じゃね?」と気づき、その後、二度読み直した結果、"7つのルール"が体現するのは「学習する組織」なのでは?と個人的に帰結した。もしご興味があれば、ぜひご一読ください。(「学習する組織」入門)

色々と偉そうに書かせていただきましたが、私個人も会社も、実際には課題も山積し、まだまだ成長しなくてはならない状態ではありますが、一旦、現時点までの「私の理解」としてまとめさせていただきました。
組織課題ネタは尽きないので、また別の角度から書きたいと思います。

以上、長文となり恐縮ですが、最後までお読みいただき感謝です。

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