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おもしろかったドラマ 2022年1月

私のサブスクとのつき合い方は、「どうしてもこの作品が観たいんだ」という気持ちが中心です。
自分が観たい作品を配信している動画配信サイトに加入し、それを見終えたら退会して別のサイトへ移ります。

1月はFODプレミアムに加入していました。2月はNetflixに加入すると思います。アニメ『Great Pretender』が観たいので。

『アバランチ』

今回、このドラマが観たくてFODプレミアムに加入したのです。

地上波で第1話を見ましたが、悪党を成敗するための手段が「ネットに晒す」ことだったので、ショボく感じてしまい、1話で離脱してしまいました。しかし意外と評判が良いので、「これはやはり見ておくべきか?」という気になり、最終回終了後にFODプレミアムで一気見しました。

捜査一課から左遷され、地下室にある「特別犯罪対策企画室」に異動させられた西城英輔は配属早々、室長・山守美智代から、何の説明もなしに車でとある場所まで送らされた。
目的地にたどり着いた先で待っていたのは、常識外れのアウトロー集団・アバランチのメンバーだった。
元警視庁公安部外事三課の羽生誠一と山守を中心としたアバランチは、さまざまな悪事を行う者たちを標的とし、その正体を暴いてはインターネット上の動画チャンネルにアップロードして世に出してゆく。やがて西城もアバランチの一員となり、彼らとともに活動する。
                - Wikipedia -

警察の女性幹部が、(内部の)巨悪を倒すために「法律の手続きによらずに悪を裁く」独自の実行部隊を指揮する、という物語は、同じカンテレ制作のドラマ『DIVER-特殊潜入班-』とまったく同じであり、この『アバランチ』は『DIVER』の上位互換です。

『DIVER』は最初から最後まで見ました。そこそこ面白かったのに、終わり方が中途半端だったな、という印象が残っています。

『アバランチ』は多くの点で『DIVER』より改善され、洗練されています。
・『DIVER』の主人公は暗めで癖のある性格だったが、『アバランチ』の綾野剛は、ヘラヘラしているのに芯がある主人公を好演している。
・『アバランチ』のチームメンバーは、『DIVER』チームより丁寧に描写されており、好感度が高い。『アバランチ』では、メンバー一人一人がなぜチームに加わったのかという背景が、各1話を使って描かれている。
・チームに入ってくる「異物」として、『DIVER』ではカタブツの元自衛官・佐根、『アバランチ』では青臭い元エリート刑事・西城が登場する。佐根がもっと主人公と対立し、緊張をもたらすところが見たかったのに、あまり存在感を発揮できないまま終わった。一方、西城が『アバランチ』チームに共感し、自分なりのやり方で貢献するまでの過程は、自然に描かれていた。

しかし、何より光っているのは、『アバランチ』におけるラスボスの圧倒的な強さです。
『アバランチ』では、ラスボスは内閣官房副長官・大山です。「アバランチチームVS大山」の構図が、シリーズのかなり早い段階で確立されるので、展開が引き締まります。
すばらしいのは、大山が普通に強くて賢いことです。
多くのドラマや映画では、主人公サイドを勝たせるために、悪党が油断したり策に溺れたりして、あり得ないほどショボいミスを犯すことがありますが、大山はそんなことは絶対にしません。「普通、悪党だったら、これぐらいのことは予想して、これぐらいの手は打つよね?」というところを外しません。己の保身のため、合理的に先読みし、合理的に手駒を切り捨てます。
大山は絶対的な権力を持っているので、しょーもないミスをしないだけでも、簡単にアバランチチームを窮地に追い込むことができます。

ラスボスがちゃんとしているために、アバランチチームは一貫して押され気味です。そのため最終話までサスペンスが持続します。
それが、このドラマが面白かった理由だと思います。
あと、綾野剛も良かった。『MIU 404』もそうですが、へらず口ばかり叩いているのにどこか不安定な暴力性を秘めたキャラを演じさせたら、この人はピカイチですよね!

『正義は勝つ』

1995年が舞台ですので、めっちゃくちゃ古いドラマです。織田裕二の若さにびっくり!!!

主人公、高岡淳平は大手法律事務所のセントラル・ロー・オフィスに勤める弁護士で、所長を初めとしたパートナー達やクライアントである大手企業からの信頼も厚く、デビュー戦以来25連勝の凄腕である。新米弁護士・姫野京子は彼に出会い、弁護士としての目標と憧れるが、淳平の手段を選ばないやり方に失望する。しかし、自らの利害で行動する淳平に結果的に助けられ、淳平は京子との交流を深める。
大手法律事務所に務める敏腕弁護士が新米弁護士との出会いを経て、自分の父を死に追いやった巨大な陰謀と戦うシリアスな社会派ドラマ。
                - Wikipedia -

第1話で登場したときの主人公は「勝つために手段を選ばない、どちらかというとダーティな敏腕弁護士」です。
織田裕二が弁護士を演じるドラマというと『SUITS』が思い浮かびます。
実のところ、『正義は勝つ』の淳平が年をとったらそのまま『SUITS』の甲斐になるんだろうな、と想像しても違和感がありません。最初のうちは。

『正義は勝つ』と『SUITS』を比較すると、目につくのは「スピード感の違い」です。
『正義は勝つ』では、1話で1つの事件が解決します。『SUITS』ではたいてい、毎回メインの事件とサブの事件が1件ずつあり、それらが同時進行で、互いに関連し合ったりしなかったりしながら解決します。
(スピード感がありすぎるせいか、『SUITS』については「話が難しくてわかりにくい」と感じる視聴者も多かったようです)
『正義は勝つ』は、インターネットも携帯電話もなかった時代のドラマです。「努力している」「苦労している」ところを描写しようとしてか、やたら登場人物が文献を調べている場面が出てきます。現代なら考えられない場面です、ネットで調べれば済むのですから。
『SUITS』は、この手の場面をすべてカットできるので、スピーディな物語展開が可能だったんだろうな、とも思いました。

『正義は勝つ』を見ていて猛烈な古さを感じるのは、「働く女性」の扱い方です。
『正義は勝つ』のヒロインは女性弁護士。それなのにドジっ子で、「ガリ勉をしたわけでもないのに」司法試験に楽々合格した経歴を持ち、あさはかで思慮に欠けた「恋愛脳」の持ち主。その恋愛ボケぶりは、20世紀の出来の悪い少女漫画のようです。感情だけで暴走する愚かな彼女を見ているとイライラします。20世紀には、女はその程度の存在であるべきだと考えられていたのでしょうね。
『SUITS』は、所長は言うに及ばず、パラリーガルも秘書も、女性メインキャラはみんなカッコいい。都内の一流法律事務所に勤務しているのですから、そちらの方が自然でしょう。

『正義は勝つ』の良いところは、シリーズ全体としてのストーリーラインがはっきりしているところです。主人公は、冤罪で自殺した父の仇を打つため、育ての親とも言える大恩ある人物に立ち向かいます。そのあたりの展開は、なかなか胸アツです。(『SUITS』はストーリーラインが迷走をきわめましたから……)

個人的には、勝つためには手段を選ばないダーティな主人公が、後半で普通の「良い子ちゃん」になってしまったのが残念でした。
主人公は、「負け犬として死んだ父のようにはならない」ことを信条として、勝つことにこだわっていたはずなのです。
それがなぜ、「天国の父に認められたい」「あのときの父を弁護している」みたいな動機で、上司に反旗を翻すのでしょう? 視聴率的に、織田裕二を「良い人」にしないわけにはいかなかったのだとしても。

ダーティな男が、見失っていた正義に目覚める過程をもうちょっと丁寧に描いてくれていたら、とても感動できたと思います。

『振り返れば奴がいる』

同じく織田裕二主演の、1993年のドラマ。見るつもりはなかったのに、惹き込まれてラストまで一気見してしまいました。

派閥争いが激しい天真楼病院に、確かな腕を持っている熱血漢の青年医師 石川 玄が赴任してくる。その勤務先の外科には、天才的なメス捌きをもつ医師 司馬 江太郎がいた。患者に最善の努力を尽くそうとする石川に対し、物事にいい加減で傲慢な態度を取り続ける司馬は、医療の際限について冷酷なまでの判断を下す。
ふたりは、医師としての信念を巡って激しく衝突し、医師としても人間としても傲岸不遜な司馬の言動が許せない石川は、あらゆる手段をもって司馬を病院から追い出そうとする。しかし対する司馬も、手段を選ばずに石川の追求を巧みに躱して、反撃に転じてくる。
      - Wikipedia -

織田裕二が演じる、冷酷で利己主義で、リベートも平気で受け取る本物の「ワル」がすばらしい! 悪い目つき、歪めた口元のシーンが多いので、顔が歪んだままになってしまうのではないかと心配になるほど。

それに対立する、「正義」サイドのはずの石川も、憎しみにとらわれて急速に闇落ちしていきます。
単純な「善い人 VS 悪い人」の構図になっていないのが秀逸。
これは、いい年こいた大人がなりふり構わずガチ喧嘩する物語です。
けれども同時に、こじらせ過ぎた、「愛」に近い「執着」の物語でもあります。後半、「これはもしかするとBLの一種なのでは?」と感じるほどでした。司馬が石川にがんの告知をするのは、愛以外の何物でもないでしょう。

司馬は、「ワルと見せかけて本当はいい人」の典型です。同情すべき事情が次々と明らかになります。それでも司馬は最後まで悪人の仮面をかぶり通し、毒を吐き続けます。そのワルぶりがあまりに徹底しているので、どうしても「いい人」に見えません。そしてワルにふさわしいラストを迎えます。もうびっくり。

石川に好意を寄せる新米女医師。この人も、あさはかで感情的で愚かな、「恋愛脳」に支配された暴走キャラとして描かれています。弁護士や医師といった専門職に就く女性が、いくら新米とはいえ、こんなに愚かなはずはないのですが……。
恋愛至上主義を世に広めたトレンディドラマの影響でしょうか? 何にせよ、時代を感じる描写です。

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