春なのに...

春一番があって
空気が変わったのを感じて
躰(からだ)が弛んで
心地よさを味わった

心地よさを味わったら
きっと気分も変わる——

どっこい、なかなかそうはいきません

月並みな話ですが
まだ、喪失感を味わっています
そう簡単に癒えるものでもないのが月並みなのでしょうが


でも
喪失感を味わうことができるというのは
とてもしあわせなことだと思っています

そんな思いを味わうことになるなんて
以前なら思わなかった
そうした感性を失ってしまったと思っていたから

理不尽に抗うのにそうした感性は重荷になると思っていたし
実際に抗っているうちは【蓋】をしていたのでしょう

若い頃は抗うだけのエネルギーがあったのも間違いない
今はもう そんなエネルギーはないけれど
かわりに素直に受け止めることができるようになった

よかった
よかった


確固たる【自己】なんてものは
ほんとうはない

確固とした【自己】だと思えるようなものは
ぜんぶ偽りです
だからなくていい

〈自己〉とは周囲との「関係」です
「関係」の渦巻きの中心で揺れ動いているもの

大切なものを喪失すると渦巻きの中心が大きく乱れる
でも 生きていて 時間が動けば
渦巻きはやがて形を整える

その形は以前とは別の形をしているだろうけど
そしておそらくは より大きく
より深くなっている

運が悪いと渦巻きは形を整えることができずに消滅してしまうかもしれません
理不尽な世界では不運はどうしようもないところがあります

でも 自ら 渦巻きの〈再生〉を邪魔する理由はない
【偽りの自己】を大切に抱えようとしてしまうと
再生の邪魔になる

こうなると 不運ではない
ふしあわせなことです

感じるままに。