仁丹の匂い

とある温泉に行った時の話です。

平日の夜だったのでお客さんが少なく、私と友人の二人だけでした。
話しながら露天風呂で過ごし、洗い場に戻ってきたらおじいさんが一人、内風呂に浸かっていました。
特段、気にすることはなく、体を洗いながら喋って、さて、上がろうかと思った時に、そのおじいさんがいないんです。

回りを見渡してもいないし、上がった音もしていないし、ドアの開け閉めの音もしていない。かといって、露天風呂に向かって歩いて行く音もしていないし、通っていった形跡もない。露天風呂に行くなら私の後ろを通らないと行けないので。

おかしいなと思っておじいさんが湯船にいた付近に行くと、仁丹の匂いが残っていました。

もしかしたら、そこで亡くなられた方だったのかもしれない。

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ぐっさん

怪談師ぐっさん

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