くれなずめ

よく行く映画館で予告を観て以来、気になっていた映画。

高良健吾さんや浜野謙太さんと好きな俳優さんが出演しているし観てみるかなと思い、昨年の5月に回数券を使って観賞。

内容は、スクールヒエラルキー的にはやや低めに属する静岡の高校生だった6人組がメインの話。俺様ちゃんのようで抜けている明石、長いものに巻かれろキャラなようで実は熱血漢な欽一、弄られキャラでお調子者なソース、年下なのに一番のブレーキ役なヒロナリ、いかつい顔と反比例した繊細さと内気さを持つネジ、そして、うじうじしているのに妙なこだわりがある気持ちの優しい吉尾。

この6人が同級生の結婚式のために5年ぶりに集まり、余興の練習をするところからはじまる。

しかし、どこか変。結婚式のスタッフの言葉や他の5人は年相応の顔つきになっているのに吉尾だけ時が止まったようにあどけない顔つき。

そう、吉尾は5年前に突然この世を去った。残された5人はまだそれを受け入れられず、想い出や心残りを引きずっているのだ……という内容。

冒頭20分は、6人の高校生男子メンタル引きずったような言動やホモソーシャルすれすれの行動や態度に高校時代の嫌な記憶が芋づる式に蘇り、あわやフラッシュバックで席を立とうかと思った程。しかし、なんとか持ちこたえて観賞を続行すると若さゆえの痛さという皮膚を紙やすりで削られたようなヒリヒリ感とともに、   いて当たり前だと思っていた大事な人を失った時の空白や虚脱感、いないことをわかってはいても受け入れられない悲嘆が6人のエピソードを追う度に押し寄せてくる。

前を向いて進めだなんてそんなものは傲慢だ。

ていうか言った奴ちょっと来い。思い切り殴ってやるから。

前に進めないのはそれだけ淋しいからだ。会いたいからだ。もう会えないのがわかっているけれど心の置場所が見つからないからだ。

5人の吉尾との想い出、吉尾とのあまりに短い永の別れ、吉尾のいない日々のくだりは個人的には話で恐縮だがこれまで見送ってきた、見送ることもできなかった大切な人たちの顔が浮かび、あやうく涙腺が弛みかけた。

そして。後半、だんだん吉尾の死を認識してきた5人の突飛な行動と、高校時代の彼らが文化祭でやったコントを再現したような浄化の仕方は、舞台、しかも良くも悪くも下北沢の劇場でやる舞台が原案だからかなあと思うと同時に映画でこれをやると斬新さといなたさ表裏一体だねと遠い目に。

しかし、6人が結婚式の余興でやらかして場を白けさせたウルフルズの『それが答えだ!』に合わせて踊る赤フンダンス、そして、けじめをつけるための“過去の書き換え”のくだりは笑って泣いた。

そしてラストシーン。
暮れなずむ空やどんどん藍色になっていく周りの景色の静謐な美しさは残された5人の心残りにきっちり折り合いをつけたかのように穏やかな顔と後ろ姿とともに忘れられないラストシーンとなった。

同時に、エンドロールまで見届けた後、無性にウルフルズが聴きたくなり、ベスト盤をアマゾンで購入してしまった。

もしかしたら、何回かウルフルズのベスト盤を聴いてうたた寝しているうちに今は亡き友人たちの夢を見るのかもしれないな。

そんなことを、映画を見た帰り、奇しくも暮れなずむ空を見ながら思った。

(文責・コサイミキ)

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