火星人と花の色【完結】

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 拝啓、あなたへ
 僕は、大学に戻ろうかなと思っています。鳩を見るたびに、聞いてみるのです。君は何を考えているの、と。彼らは何も教えてはくれません。何も答えてはくれません。何も語ってくれなかったあなたのように。でもきっとそれがあるべき姿なのでしょう。鳩やライオンや、ウィスキーの瓶が自由気ままに過去を語り始めたら、収拾がつかなくなっちゃうから。この手紙が、あなたを救えなかった僕の言い訳みたいに見えるかもしれません。もし、そんなの君らしく無いよ、なんて風に思ったら、川に流してください。あなたのいる傍には、川があるのでしょう? そしてきっとそこには蟹がちこちこ歩いているのでしょう? あの、火星人みたいな不思議な生き物。あのか弱い生き物。僕たちはたくさんの生き物たちの話をしましたね。ライオンや、蟹や、火星人のことを。僕は沙羅を知っています。僕の人生には、ずいぶん深いところで彼女が関わっています。でもそれを話そうとすると、この手紙はきっとポストに入らないし、川の流れにも流れていかない心配があるので、それはまた今度。
 それから、あなたとの日々や、あなたの話を小説にしてみようかなと思っています。もしかすると、沙羅はこの話には登場できないかもしれません。彼女は僕たちの物語にはあまりに悲しすぎるから。
 これで僕からあなたへのメッセージは最後です。ジ・エンド。
 敬具


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