見出し画像

横浜市役所100大事業(行イノ#2)

 横浜市役所では年間どのくらいの事業(行政サービスなど)を実施していると思いますか?
 横浜市の予算は、一般会計、特別会計、公営企業会計の3つの会計で構成されていて、一般会計だけで約2,100事業(令和4年度)を実施しています。
 そして、約2,100ある事業のうち上位100事業で、市税収入などの一般財源の90%以上を活用します。
 今回は、一般財源の活用額の多い100事業(以下、100大事業)の概要を
説明します。

なぜ、100大事業に着目したのか

 「横浜市長期財政推計」(令和4年8月更新版)では、2030年度時点で
横浜市の収入と支出の差である収支差が▲500億円と見込んでいます。収入よりも支出が500億円多いということです。収入と支出がイコールとなるようにするために、「まだ先のことだし・・・」と無関心となるのではなく、今からしっかり対応していくことが必要であり、これを「歳出改革」として位置付けて、進めていくことで収支差解消を図ろうと考えています。
 この歳出改革の取組の一つに100大事業の分析があります。100大事業個々の構造転換、一般財源の配分の見直しができないかなど確認するため、100大事業の現状や課題などの分析を行うことにしました。第1弾として、100大事業の全体の傾向をみていくために、以下の概要分析を行いました。
・100大事業には、どんな事業があるのか
・一般財源を多く使っている事業はどのような性質のものか
・一般財源を多く使っている事業の対象者はどのような層か
・どの分野の事業に一般財源が多く使われているか
・一般財源を多く使っている事業の実施根拠は何か

100大事業には、どんな事業があるのか

 100大事業を一覧化してみました。一般財源を多く使っている事業を左→中→右の順に並べました。

100大事業一覧

 事業の性質によって、色分けしています。人件費はピンク、公債費(借入金の返済)はグレー、法律などに基づき実施しなければならない福祉保障給付や医療などに関する事業はベージュ、公共施設の管理運営や市民・事業者のみなさんを対象とする補助金の交付などの事業は水色、公共施設整備は黄緑などに色分けしています。左側の上位30事業くらいは、ベージュ色の福祉保障給付や医療などに関する事業が多くなっています。
 では、上位10事業と、その事業で使っている一般財源額を具体的にみてみましょう。

1. 人件費 3,167億円
  家庭ごみ収集、消防・救急、市立学校の教員、区役所の窓口職員など市役所職員に係る費用
2. 公債費 1,828億円
  市債(借入金)の返済にあてる費用
3. 介護保険事業費会計繰出金 460億円
  介護保険事業の運営経費に対し、横浜市が負担する費用。介護保険事業の財源は、保険料50%と税金(国・県・市)50%で構成
4. 下水道事業会計繰出金 411億円
 下水道事業の運営経費のうち、雨水処理などに対して横浜市が負担する費用。下水道事業には雨水処理と汚水処理があり、雨水処理は税金で、汚水処理は下水道使用料を財源に実施
5. 後期高齢者医療事業費会計繰出金 347億円
 
 75歳以上の高齢者が加入する医療保険事業の運営経費に対して、横浜市が
負担する費用。後期高齢者医療事業の財源は、保険料50%と税金(国・県・市)50%で構成
6. 施設型給付費 322億円
  保育所や幼稚園の運営費。財源は利用料(保育料)と税金(国・県・市)で構成。幼児教育・保育の無償化により、令和2年10月から3~5歳児の利用料は無料
 7. 生活保護費 314億円
  生活に困っている人に対し、憲法が定める、最低限度の生活を保障するための事業費。財源は税金(国75%、市25%)
8.保育・教育施設向上支援費 275億円
 保育所や幼稚園の運営にあたり、子どもたちの豊かな育ちを支えるための保育人材の確保や、子どもたちを受け入れる環境改善の費用について、運営団体に対し助成
 9. 国民健康保険事業費会計繰出金 167億円
   職場を通して加入する“健康保険”と、75歳以上の高齢者が加入する“後期高齢者医療保険”以外の人が加入する医療保険である「国民健康保険」の運営経費に対して、横浜市が負担する費用。国民健康保険事業の財源は、概ね、保険料50%と税金(国・県・市)50%で構成
10.個性ある区づくり推進費 132億円 
  区庁舎・区民利用施設の管理や、地域の特性・ニーズに応じて個性ある区づくりを推進するための費用

 このように市民生活に必要な事業や市役所の運営に必要な事業が並んでいます。また、多くは法律で横浜市役所が実施することが決められている事業ばかりです。

一般財源を多く使っている事業の性質は?

 どのような性質の事業に一般財源が多く使われているのでしょうか。「100大事業には、どんな事業があるのか」のところでも少し触れましたが、市役所が行っている事業は、事業の性質により、大きくは次のように区分されます。

・人件費 
 家庭ごみ収集、消防・救急、市立学校の教員、区役所の窓口職員など市役所職員に係る費用

・扶助費
 児童、高齢者、障害者、生活困窮者などへの支援のための費用

・行政運営費
 行政活動の基礎となる費用。ごみ収集や学校の運営など市民サービスに関する費用、各市民利用施設の管理運営に関する費用、市役所内部の管理経費など

・施設等整備費
 道路、橋、公園、公立学校、公営住宅など公共施設を整備するための費用

・公債費
 
市債(借入金)の返済にあてる費用

・繰出金
 水道や市営地下鉄・バス、市立病院といった公営企業や一般会計と会計を分けて運営している各特別会計事業の運営や施設整備に対する負担金や補助金

 下のグラフをご覧ください。性質別事業ごとに棒グラフが2つ並んでいます。左側(水色)は一般財源、右側(黄色)は事業数です。
 一般財源を多く使っている事業の性質をみると、人件費3,167億円、扶助費1,893億円、公債費1,828億円となっています。事業数では、行政運営費40事業、扶助費30事業、施設等整備費16事業です。 

性質別 (1)

一般財源を多く使っている事業の対象者は?

 どのような対象者向けの事業に一般財源が多く使われているのでしょうか。対象者を「こども」「高齢者」「障害者」「生活困窮者」「特定の団体・事業者」それ以外は、広く「市民全体」と区分し、確認してみました。
 事業数、一般財源ともに、市民全体を対象とした事業が最も多くなっています。市民全体を対象した事業では一般財源を6,665億円活用し、内訳の上位に、人件費(3,167億円)、公債費(1,828億円)、下水道事業や国民健康保険事業などへの繰出金(722億円)があり、この3つで約86%を占めています。
   また、こどもを対象とした事業では1,467億円の一般財源を活用しています。内訳の上位は、施設型給付費(322億円)、保育・教育施設向上支援費(275億円)となっています。

対象者別

 事業の性質と対象者をクロス集計してみました。
 扶助費や行政運営費中の市民事業費では、こども対象の事業での一般財源活用額はそれぞれ1,021億円、258億円と他の対象者に比べて多くなっています。行政運営費中、市民助成費、施設運営費についても、市民全体を対象とする事業に次いで、こども対象の事業で一般財源が使われています。

性質別×対象

<参考>行政運営費の内訳
・市民事業費
 行政が主体となって行う市民サービスのための経費
 事業例:家庭ごみ収集運搬業務委託事業、敬老特別乗車証交付事業

・市民助成費
 市民が主体となって行う活動を支援する経費
 事業例:個性ある区づくり推進費(自主企画事業費)、私立幼稚園等預かり保育補助事業

・施設管理費
 市民利用施設等の管理費
 事業例:文化施設運営事業、学校運営振興費(教材や教具の整備)

・庁舎管理費・企画管理費
 主に行政が利用する施設等の管理費や企画費調査費等の経費
 事業例:情報システム運営管理事業
  

 一般財源を多く使っている事業の分野は?

  次に、どのような分野に一般財源が使われているのかみていきましょう。横浜市財政見える化ダッシュボードの23分野別にみてみると、「行政運営」で3,300億円であり、人件費(3,167億円)が大部分を占めています。
 次は「財政・会計」の1,908億円で、主な事業は公債費(1,828億円)です。以下、「子育て」1,057億円、「介護・高齢者福祉」904億円、「まちづくり」807億円と続きます。
 

分野別

一般財源を多く使っている事業の実施根拠は?

 最後に、100大事業の実施根拠をみていきましょう。
 法律を根拠としているものが75事業、法律の規定はないものの、条例を制定し実施しているものが16事業、規則や方針決裁等に基づき実施しているものが9事業となっています。法律を根拠に実施している事業が多いですね。
 法律を根拠に実施する事業をさらに分解してみます。法律を根拠に実施する事業では、一般財源だけで実施するのではなく、国から負担金や補助金といった財源が市役所に入り、その財源も使って実施することになります(事業によっては国からの財源が入らないものもあります)。
 国からの財源は、単価や対象者などの基準が定められています。この基準以上に、単価設定を引き上げたり、対象者を広げて事業を実施しているかどうか、いわゆる「上乗せ横出し」の有無を確認してみました。上乗せ横出しをせず実施しているものは49事業、上乗せ横出しをして実施ているものは26事業ありました。  


実施根拠


マクロの分析からミクロ分析へ

 事業の実施根拠をみても、法律に基づいて行っている事業が多く、裏を返すと市役所としてやるべき市民サービスを行っていると言えますので、事業そのものをやめるとことはなかなか難しそうです。また、将来を見据えて、こどもや若い世代への投資やまちづくりといったこともおろそかにすることはできません。
 とはいえ、それぞれの事業について、
 ・ニーズに沿って進められているか
 ・実施目的に対し、実施の効果はどうか
 ・効率的にできる余地はないか
など、さらに確認・点検するなど、ミクロでみていくことが必要です。
 現在、事業ごとに事業所管部署による自己分析を行っています。その内容は令和5年度予算案と同時期に公表する予定です。
 横浜市役所100大事業第2弾では、個々の事業の分析結果をご紹介します。少しお待ちくださいね。