ユミソン氏の告発に対する対応について

以下は、本年9月17日にAMSEA関係者・受講生、社会と芸術フォーラム関係者に送付した文書です。私たちなりの取り組みと対応、方向性を示したものです。MeToo運動を支持する立場から可能な限り、誠実に対応してまいりたいと考えております。

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社会の芸術フォーラム、AMSEAにてご協力いただいているみなさま

社会の芸術フォーラム、AMSEAへの多大なご尽力を誠にありがとうございます。本メールは、おそらくは多くのみなさまを困惑させてしまう事案について、ご説明させていただきたく思い、送信させていただきました。

すでにご存じのかたも多いかと思いますが、現代美術家のユミソン氏が、AMSEAスタッフの北田暁大、神野真吾さん、井上文雄さんの三名のパワハラを告発する文章をネットに公開されました。本件は、今のところ、ユミソン氏からの告発①(https://note.mu/yumisong/n/ndbc953bd5add)、北田による応答(https://note.mu/gyodaikitada/n/nd70231002478)、神野先生による応答(https://www.facebook.com/photo.php?fbid=2871721652855828&set=a.256124567748896&type=3&theater))、井上さんによる応答(https://docs.google.com/…/1IznDBQef7Ff_JxqsaocaBCDJ7_h…/edit)、ユミソン氏からの告発②(https://note.mu/yumisong/n/na9b03fba1756)といった形で展開しています。

#MeToo運動・拡大の重要性は疑うべくもありません 。法や男性中心的な社会規範においてかき消されてきた被害者の痛切な体験と思いを言葉や行動に結実させるというme too運動の方法論は、歴史修正主義や差別問題、ジェンダー・セクシュアリティ等を重要な課題としてきたAMSEAとしても積極的にエンカレッジ・コミットしていくべきものであると認識しています。今回「Mee Tooみたいな何か」としてなされたユミソン氏の告発を、私たちは真摯に受け止め、安易に法的措置に訴えるのではなく、説明責任を果たしていきたいと考えております(状況に応じて他の方法論での応答責任を果たしていく可能性もありますが)。
私たちは、この事案を地方芸術祭をめぐる「ディレクション」「コンプライアンス」「意志決定の公正性・透明性」の観点から捉えており、ユミソン氏は、そうした提案や批判のプロセスを「圧力」「パワハラ」と呼んでいるのではないかと推察いたしますが、異なる捉え方もあるでしょう。渦中にいた当時の私たちには到底不可能でしたが、あらためてこの事案(私たち自身の言動を含む)を、各種情報の精査、関係者へのヒアリング、しかるべき機関への情報開示請求なども行い、精査・調査し、「アートワールド」にかかわるなんらかの問題提起につなげていきたいと思っております。MeTooの潮流に棹さしつつ(告発を無効化するのではなく)、しかしそれでも告発の個別の内容について、私たちの説明責任を果たしていくこと、そうした方向性を模索していきたいと考えております。

関係してくるアクターの数も膨大ですし、どうしても個人情報・特定につながる内容も含んでしまうため、性急なネット上でのやりとりは控え、調査と証拠収集、ヒアリング等を慎重に進めていきたいと思います。その報告までには、数年スパンの時間がかかってしまうと思いますし、私たちの「色眼鏡」にも注意深くあらねばなりません。時間はかかりますが、「無応答」「平謝り」「一方的な反論」ほど不誠実な態度はないと思いますので、私たちは理に適った形で説明責任を果たしていきたいと考えております。具体的には事態を再検証・精査し、報告書を作成し、それを利害関係のないしかるべき第三者に提出し、ご判断を仰ぎたいと考えています。報告書そのものは個人情報の塊なので「公開」は難しいと思いますが、なんらかの形で社会に対するアカウンタビリティを担保するよう方法を模索いたします。
個人情報関連で問題のない限りにおいて個別の問い合わせには対応させていただきますので、ご寛恕のほどなにとぞよろしくお願いいたします。

またユミソン氏が他のかたの「パワハラ」被害体験を伝聞・風聞に基づいて記し、それをいわば代理告発しているわけですが、これについて「あるともないともいえない」というのが現状です。ハラスメントサポートの基本ですが、なによりご本人の話を聞き、無理に背中を押すのではなく、ご本人が納得できる救済措置を講じていくことが大切です。「ある」といえば「誰なのか」という詮索を招きご本人の意向に反してしまうケースもあり得ます。また「ない」とするのも仮にあった場合には明白な虚偽となるでしょうし、そうした隠蔽は断固許されざるものです。

今後、フォーラムやAMSEAでは、受講生のみなさま、関係者のみなさまが安心してセクハラ、パワハラの被害等を相談・申立てできる体制を即座に構築してまいります。信頼できるフェミニスト、ジェンダー研究者に、代表含めスタッフとも個人的な関わりのない専門家を紹介していただき、秘密漏洩を管理し、サポートしていく部署を設置いたします。窓口含めてAMSEA外部がよいと考えますので、この点早急に整えてまいります。
「大げさなのではないか」「自分だけがそう捉えているんじゃないか」といった「遠慮」は無用です。どのようなことでもかまいません。違和感を感じたら、そちらの窓口にお問い合わせいただけると幸いです。

私たちのアラフドアートアニュアルでの痛烈な体験―-もちろんそれは「私たち」の観点からの「痛烈さ」ですが--が、「搾取」「包摂・排除」「表現の不自由」「差別」「ジェンダー・セクシュアリティ」といったテーマについての理解と議論を深める場としての「社会の芸術フォーラム」の設立に繋がりました(少なくとも告発を受けた私たち三人の動機としては)。そして、AMSEAではあらゆる意味でアートの「社会性」を、将来のアートワールドを担う皆さんに考えてもらいたく、講義や講習のプログラムを組み立てました。その「体験」をポジティブな方向へと開花させていくこと、それが「アラフド後」の私たちの目指したものです。しかし、いまあらためて振り返り、徹底的に精査し、問題提起を行う必要を痛感しています。もちろん、みなさんにはユミソン氏の告発にも耳を傾け、公正な形で事態を解釈していただきたく思います。

みなさまには多大なご心配をおかけしてしまい、心より申し訳なく思っております。
引き続きなにとぞよろしくお願いいたします。

2019年9月17日 元社会のフォーラム共同代表、AMSEA代表 北田暁大

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