見出し画像

はっきり言って襲名するまで、玉秀斎の凄さをわかっておりませんでした。
その本当の凄さを理解されていたのはわが師匠、四代目・旭堂南陵だけじゃないでしょうか!!

なぜ玉秀斎が凄いのか。
実は玉秀斎が世に起こしたムーブメントは大きく3つあると思います。

まず1つ目。
それは玉秀斎を擁する玉田家は幕末の神道講釈師・玉田永教の流れを組むところから
『菅原道真天神記』
『安倍晴明伝』
を得意ネタの1つとしておりました。
どちらも奇想天外な物語で、神様になるにふさわしい方々の物語。
その語り方も普通の着物で張り扇をもって講談をするのではなく、
神職の格好で手に釈をもって語るんですから、普通じゃありません(笑)
コスプレなのか、演出なのか、思い付きなのか!!
とにかくお客様をその世界に浸って頂こうという思いがこちらに伝わってきます。
ちなみに、『安倍晴明伝』が元ネタの1つになって、平成の陰陽師ブームが起こったという説もあります!!!(知らんけど)

そして2つ目のムーブメントはネタの改良です。
「この紋所が目に入らぬか」
で有名な水戸黄門。
あれ、実は玉田家が改良するまで、旅をしながら俳句を詠む人の好いおじいさんの話だったんです。
『それでは面白くない』ということで、水戸黄門に助さん格さんを従えさせて悪者退治するという勧善懲悪の物語として完成させたのでした。
そう、あの人気テレビシリーズの原型は玉田家にあったんです。


最後に3つ目のムーブメント。
それが猿飛佐助、霧隠才蔵などの真田十勇士を世に広めた立川文庫の出版です。
この立川文庫の出版にこぎつけたのが先代・玉秀斎でした。
今の時代では、
「立川文庫?なに、それ?」
という感じですが、出版された当時は文字が読める少年少女の殆どは立川文庫と共に成長したと言ってもいいぐらいの状況でした。
熱心な読者の中から、川端康成、湯川秀樹といったノーベル賞受賞者も輩出しているんです(笑)
ちなみに、ぼくはスウェーデン時代、ノーベル賞授賞式に参加したことがあってスウェーデン関係に繋がるだけで幸せを味わえます!!

ちなみに、立川文庫が大ヒットした時代に日本にやってきた最新技術が映画でした。
この映画と忍者の相性がよかったんです。
普通のお芝居ではできないドロンと消えることができたり、他のモノに変身するということが映画ではできました。
ですので、立川文庫は映画の世界にも影響を与えているんです。

立川文庫の凄いところは、それ以前は講談師が語ったものをそのまま速記する講談速記本が主流でしたが、立川文庫は講談師が語ったものを本にするだけでなく、編集したり、勝手に新しい物語を作り始めたり、講談を語らなくても勝手に出版できる講談本になったのでした。

「歴史物語を出版するのに、講談師は絶対に必要と思ってたけど、立川文庫めっちゃ売れてるやん。もしかして売れる歴史物って講談師じゃなくても作れるんじゃないの?」
と出版社が思い始めたときに、起こったのが1つの事件。
それが、当時隆盛を極めた浪曲の速記本に嫉妬した講談師事件です(笑)

出版社はいつの時代も売れるものを出したい。
当たり前のことです。
そこで、当時人気のあった浪曲の速記本を出そうとしましたが、講談師が怒ったんだそうです。
「歴史のなう浪曲の速記本を出すのなら、講談の速記本はもう出させない。どうするはっきり決めろ」
出版社に選択を迫ったのでした。
出版社は最初は困ったのですが、先程のお話、
「面白い歴史ものは、講談師がいなくても出版できるんじゃない」
の想いがむくむく湧いてきて、遂に講談師にこう言い渡しました。
「わかりました。浪曲の速記本は出しません」
「やっとわかった俺たちのありがたさが!!」
自信満々の講談師に出版社の方が続けて
「でも、講談の速記本ももう出しません」
「えー、そんなこと言わないで!!!そんなつもりじゃないんだから」
と講談師がなだめても時すでに遅し。

それ以来、出版社は世に出版済みの講談速記本や立川文庫をお手本に若い作家を集めれ歴史小説を書かせたんです。
その流れででてきたのが吉川英治さん、司馬遼太郎さんたちなんです。
凄くないですか!!!!(笑)

ちなみに、今でも残る出版社の講談社さんは講談の速記本を出していたので、『講談』という名前が残っているそうですよ。

そんなわけで、大きなムーブメントを起こしてきた玉田玉秀斎と玉田家はその波動が今でも微かに残っていて、びっくりするような出会いがあるんです。
「玉秀斎さんに会いたかった」
「玉秀斎さん、生きていたんですね」
「玉秀斎と話がしたかった」
そんな出会いがある度に襲名させて頂いた責任を感じるのでありました。

玉田玉秀斎になったのは『たまたま』ですが、本当に不思議な物語が動き始めております。
さぁ、現在進行形のこの物語、どんな結末を迎えるのか、それはまたの機会のお楽しみ!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?