「アルプスの少女ハイジ」でハイジを大切に思っていた人は誰か

 わたしは小学生のころ、友達と遊び終えて夕方家に帰ってくると、毎日TVをつけてアニメを見ていた。その中で「アルプスの少女ハイジ」は、何度も何度も再放送をしていて、さらに日曜日の朝にも再放送をしていたので、見たのは1回ではなかったと思う。

 「アルプスの少女ハイジ」といえば、「クララが立った!」でおなじみのアニメ。スイスの山小屋でおじいさんと暮らすハイジが、体の弱いお嬢様(クララ)の遊び相手として、急にドイツのフランクフルト(都会!)へ行くことになり、スイスの山に体の弱いお嬢様も連れてきて、美しい環境にお嬢様の体も回復する、というお話。ざっくりいうと。

 当時の私は、窮屈そうなフランクフルトの生活をしているハイジを見るのは嫌だったし、おじいさんとのかわりばえしないスイスの山の生活を見るのも退屈だった。最終話近くに、クララがアルムにやってきて、「なんて素敵なところ!」となって「クララが立った!」のところしかまともに見ていなかった気がする。

 庶民で美人でもない私は、お金持ちで体が弱くてかわいらしいクララに憧れていたし、貧乏な山羊飼いのペーターは完全脇役って思ってた。フランクフルトのお屋敷の女性執事ロッテンマイヤーさんはひたすら怖くて、おばあさまは優しいけど時々しか居ないし、おじいさんやクララのおとうさんは、興味なしだった。

 それから30年の時を経て、「アルプスの少女ハイジ」の登場人物への印象をガラっと変える出来事が起きた。きっかけは、昨年度、小学校に入学した娘に名作を読ませたいと思ったのと、kindleに「アルプスの少女ハイジ」原作が格安ででていたことだった。

 詳細は割愛するけど、アニメではほとんど語られていない、ハイジがスイスの山へ来る前のことが原作に書かれていた。おじいさんが退役軍人で、自身の子供のことで心に深い傷を負っているのだということ。山のふもとの村の家。そして、ハイジが山へ来る前は、両親と暮らしていたのではないということ。

 では、どう育ってきたのか?両親はハイジが赤ちゃんの時に亡くなっていて、みなしごになったハイジを引き取ってあの年まで育てていたのは、母親の妹(なんと独身!)。

 ハイジのおばさんといえば、アニメでは、派手な帽子をかぶり、突然ハイジを山小屋のおじいさんのところへ押し付けて、また突然フランクフルトのお屋敷に連れて行ってしまう、身勝手な女性というイメージだった。でも実際は、まだ若くて独身なのに、身寄りがなくなった姉の子を引き取って、働きながら育てている、自立した慈悲深い女性だった。

 フランクフルトに突然連れて行っちゃったのも、ハイジの将来を考えて、しっかりした教育を受けさせてあげたかったからだった。山小屋の暮らしでは、おじいさんが亡くなった時・ハイジが大人になった時に、どうなってしまうか。浮浪者のようになるかもしれない。そう考えたら、フランクフルトへ奉公させるのが一番だと思うのは、親のような愛情があれば自然のことと思える。決して身勝手な若い女性の考えではない。

 結果的には、ハイジはフランクフルトの生活に馴染めずに、精神を病んでしまったのだけど、でも現代だって、実の親でも、子どもの将来のためって真剣に思って、塾や習い事やあれこれ詰め込んで、心を追い詰めてしまうことよくあるから。

 ああ、一緒なんだって思った。

 子供のころにアニメを見ていて、今親になった方には、原作本すごくおすすめです。

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