宇禰 日和

詩を書きます。

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元旦の折

こんばんは、年明けしました。こんにちは2024年。 久しぶりにnoteを開いたら、この時期のわたしは何を感じて何に感情を揺さぶられていたのか、どくどくとその当時の感情を思い出した。 日々日記を書くような習慣のないわたしには、これはきっと良いことなのでしょう。 思い出すということは、忘れないことだから。 過去の自分も過去の過ちも喜びも悲しみも全部自分のものとして記憶できる、刻みつけられる。そういうものを残せるというとこ、 文章を書き読み手がどんなに少なくてもそれを世に公開す

    • ソラシド

      海の中だね、ここ、海の中だね 触れたらはじけて死んでしまうしゃぼん玉の泡を食べながら きみはくつくつ笑う。 最初から存在しない旅立ちだった 帰ってくることを想定しない ううん、そうじゃない 帰ってなんて、きたくなかった。 触れていたかった、ずっとふたりきり きみとだけ一緒に眠り続ける 幼い子に語りかけるように なでつけて、可愛がるだけの、愛おしい わたしだけの顔をして 孕まないわたしときみと 空っぽの殻だけの機体 外はずっと風が騒がしいのに こども部屋から叫び声は聞

      • 万年

        開いた本のカビ臭さに咳をして ここに何年もあった事実を吐き出す ただしく 正しく 正常に 折り重ねていかねばならない生活が 目の前にいて いま、ここ、このいっときに 正しく正常な 反論をせねばならない 思いを全部口にして 投げだされた音が痛い わたしは いつかの母と同じ台詞を言って 押し黙る これきっと血 正しい血統を持ったわたし 何年もここにあって本を手放すということは わたしが切断されていくということ 知識なんて脳内のどこにも存在しない 小さく軽く燃える分納紙 吹き

        • 早朝に妹と一緒に雪道を歩く 上を向けば青空なのにそこからチラチラチラチラと白いものが落ちて頬が冷たい 踏み出す一歩ごとに絶えずサクザクと柔い雪を踏む音がして白い世界にそれだけが存在する音みたいだった 妹は楽しそうに早足で それじゃ滑って転ぶよって教えたのに雪の上でスキップができるかどうか試していて 案の定お尻から落下して それでもゲラゲラ笑いながら同じ高さから音を出す 誰かの何かになるって楽しい? わたしはそうでもないけれど、 あなたがどうだか知らないけれど 前に好きだっ

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        • 25本

        記事

          無感覚なままで生きているんです。心躍る出来事のない生活というものがこんなにも単調でこんなにも平和的でそしてこんなにも穏やかなことを知りませんでした。わたしは、 声が出ているんでしょうか。 仕事はどうですか、と聞かれるたびにどう答えて良いのかわからずに笑う癖をお辞めなさいと、言ってあげたかった。泣くのを、堪えたまま、笑うのは、情けのない、気持ちになります。岩石みたいなチョコレートケーキで誤魔化して、どこまでも行けるのなら、どこまでも息のできる場所を探して行きたかった。何もできぬ

          反射板の夜

          ピストルが合法の国にいたらとっくの昔のこんな夜に死んでいただろうと思う。 わたしは 努力ができずそのくせ良い結果ばかり求め折り合いのつかなさに死にたがり他人に求めないふりをして投げ飛ばす、くせに、抱きしめてとせがみ左腕、ばかりを撫でてわたしとあなたの間に区切りをつける / … // / 紙風船は潰れてしまうから やさしく手を当てなさい 強く叩くと潰れてしまうから やさしく叩きなさい 夕焼け小焼けで日が暮れて 山のお寺の鐘が鳴って からすが七つの子を生み育てても 帰り

          反射板の夜

          COVID-19

               適切な距離を保つ  物理的な距離の分だけ連絡が途絶えた  あの夜  首元にハサミを突きつけられて 「きみならいいよ」といった唇  責め立てる文章でしか話せないわたしの  唯一の受容する愛だった  のに  きみの見えない日々にやり切れなくて  別の人と口づけで交わる  髪を撫でてくれた夜の分だけ  何だって頑張れる気がしていた  少しずつきみを蓄えて  神様にだってなれる気がした  きみと同じ病で  数日違いの同じタイミングで  死ねるなら  それはとても希望だ

          空白

          こころがつらくなってくる つらい という言葉には かなしいとかくるしいとか ふあんとかさびしいとか さむいとかこわいとか だきしめてほしいとか 全てが混じり合っていて リリリリリリリリリリリ… 耳鳴りが連なっている 「これ以上続く場合は精神的な原因の可能性がありますので、そういった投薬と治療になります。」 その病院には行かなかった 暗に投げられた そういったひとなんです、あなたは。 という意味を捉えたくなかった 明日へ踏み込むとき ひとは  前を向いているのか 下

          日記 (2020年5月2日)

          連日のコロナニュースや先行き不透明さから落ち込み二日間ほとんどなにもせず(この何もせずとはトイレや食事、風呂の放棄)ベッドで夢を見続けた。 何度か夢を見ては起きてまた夢を見ての繰り返しす。 しとしと降る春雨のような静かな夢もあれば、コロナが存在しない未来予想図もあり、かといえばわたしを貼り付けにしていたぶるだけの夢もあるり、わたしと夢の境界線が曖昧になる。 わたしの家には見知らぬ幼い男の子がいて、わたしの家は数人の他人と住んでいて、その幼い男の子が人を殺そうと狂っていく。わた

          日記 (2020年5月2日)

          ナウシカ

          緊急事態宣言が発令された大型連休に乗換の地下道にいて、ただどこにいくあてもなくぼんやりと発車を知らせるアナウンスや、移動はおやめくださいという聴き慣れてしまった声を聞き流していた。どこにいけるあてもないのにポスターは渋谷にある老舗のカフェや新緑の鮮やかな京都を勧めてくる。どこにもいくことができないのに無人の駅に無人の電車が来て無人まま去っていく。 宛名を書き忘れた手紙みたいな人々が街にはたくさんいるんだろう。 出発点も目的地もないままずっと家に止まるだけのそこにあるだけの命、

          新たなる人

          誰かのことを責めたかったわけじゃない けれど責め立てなければ泣くことが出来なかった、怒らないでください、奪わないでください、できないんです、声が追いつかないんです、ごめんなさい、ごめんなさい、こんな人でごめんなさい、なにもできなくてごめんなさい、大人になったわたし、なにもできないままで、誰にも愛されない、何にだってなれるよ、だから自分を信じて。と投げられた言葉を何一つ理解できなかった、18歳の頃、幸せになって。と、見送ってくれた彼女、しあわせがなにかわからないと応えたらかなし

          新たなる人

          うさぎ観音

          うさぎの耳は案外小さくて 数字の一がふたつ 柔らかな手を合わせてこちらを見つめる 平成が終わりますね。 九月も三月もきっとそのうち忘れてしまいますね。 知らないという人々が、また沢山産まれてきますね。 海辺を歩ける日が来るのだろうか かなしくなってしまうから コップいっぱいに温めるだけの星をください うさぎ色したミルクと あの夜の蝋燭の灯と あの夜の雪空と星 うさぎは艶やかな目をして こちらを見ている 日々が流れていく 何もかもが 綴じられるために 終わってしまう

          うさぎ観音

          明け方

          「成人式で会ったのが最後になっちゃった。」 「お父さんはずっと発電所で働いていて、帰ってくるなって。お前は絶対帰ってくるなって。」 何が起きたのか分からなくてテレビをつけた 炎に包まれながら飲み込まれるように流れていった 車も家も木も人さえも スーパーで籠いっぱいに食料品を詰め込んだ人々を見た 野菜も肉も牛乳も品切れ 冷凍できるように食パンを一袋買った 電気もガスも水道も止まらなかった 東京は晴れていて 非日常に街ごと浮かんでいるみたいだった 原子力発電所のニュースが放

          白昼夢

          きみが愛を語る日はいつもかなしい ひたむきに生きてきた両腕を 真っ直ぐに伸ばす仕草が 太陽まで届かないことを知っている 横殴りの白線のような傷跡 向き合わなければならないのは 生と死 どちらなのか 小さな窓のある部屋で外の雨を眺めよう 守られていることに鈍感になり 鳥が撃ち落とされる きみは甘いキャンディになるんだよ なにもかも全て忘れてしまって 適切な体温の中、溶けていくのをゆっくりと感じとればいい ささやかなしあわせがあればいいと歌った歌人は死んでしまった いまをもがく必

          新宿地下道西口 21時17分

          遠く冷えた日々に明け方を探して道を歩く 整理整頓をしましょう 正しく生きていくために 人生を整えましょう 正しく死んでいくために 地盤のゆるい土地は沈みます 沈めば家は傾きます 傾けば もう誰も迎えにきてはくれません 床に散らばった皿の破片 蒼白した翌朝 明けはこない 大なり小なり ずっと付き合っていくことになるでしょう 唱えられた言葉とともに 一粒ずつ身体に含む 誤魔化しながら歩まなければならない意味 手のひら ひらいて とじて 空をやさしく握って 忘れら

          新宿地下道西口 21時17分

          差違

          今夜はたくさん星が落ちてくるからってふたりで青山のイルミネーションをこの世から断絶した 暗闇は男も女もわからなくなる 最初から何も見えないまま出会えばよかったんだって、眼球ごとすり潰して、醜いほど美しい曲線を持つきみの横顔、隣合わせ香りだけ嗅ぐ犬のような あなたは友達だからって いつかきみが話してくれた きみは男の人と手を繋いでいて 笑うと、きらきらきらきらきらきらきらきら 男の人はみな一様に 顔の造形とか胸の張りや背後の尻の曲線肌の柔さそれだけを値踏みしてくるのに きみは漏