マイク

【書籍】小泉今日子書評集

僕の人生の節目には、いつも小泉今日子がいた、といえば大袈裟か。いつもは嘘です。でも、いくつかの節目の場面にkyon2は現れた。

3年目の浪人をしているとき、明るい浪人生を演じながら、漠然とした不安と戦っていた時代、テレビも電話もない生活の中、唯一聴いていたラジオ番組は、「小泉今日子のオールナイトニッポン」だった。

社会人になって20年近く映画館にも演劇の舞台にも足を運ばなくなっていた。小泉今日子が出演した『東京ソナタ』、『グーグーだって猫である』、『高き彼物』が、僕をそこに引き戻してくれた。

40歳を超えて久しぶりにライブステージに立ち、『なんてったってアイドル』を歌う彼女を見て、「歳をとったことを言い訳にしない」と決めた。

そんな彼女の書評集。読売新聞に掲載された10年分の書評だ。だけど、単なる紹介ではない。彼女が何を感じ、何を考えながら読んだかが伝わってくる。結果的に、38歳から48歳までの小泉今日子の人生が透けて見える、良質なエッセイになっている。

彼女が紡ぎだす言葉は、人を惹きつける。きっと歌手として、女優として、多くの言葉に触れ、それを咀嚼し、表現してきた経験がこうした言葉を生み出しているのだと思う。それは嫉妬を覚えるほどだ。

『書評集』の書評はやっぱり書けない。まして自分も書評を書いている。嫉妬を覚えるほどの作品集を冷静に書評するなんてできるわけがありません。にもかかわらずこれを書いているのは、伝えたいことがあるからだ。それは

「読めばわかる」

1冊読み終わると、読みたいと思える本が膨大に増えているはずだ。さらに、小泉今日子の言葉に励まされ、生きる力が湧いてくる、というおまけもついてくる。


気づけられる言葉は数々ある。ひとつだけ紹介して終わりにする。実は読売新聞に掲載された当時に読み、この10年近く、僕をひそかに支えてくれた言葉です。

山田詠美の『無銭優雅』の書評から。

同世代のせいか、この本には気持ち良く共感できる言葉がたくさんあった。そして、生きることを存分に楽しめる自信が今むくむくと心に沸いている。ビバ、四十代! と叫びたいくらいだ。


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