インターネット上の匿名攻撃に対しての法的論点整理(第6回/全8回)
こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。
インターネット上の匿名攻撃に対しての法的論点整理(全8回)。
本日は6回目です。
復習として、全体像が書いてある1回目をご確認ください。
記事を開くのが面倒な方のために、目次だけ書いておきますね。
① プライバシー侵害【2回目】
② 名誉毀損(含む信用毀損)【3回目】
③ 脅迫、強要【4回目】
④ ストーカー行為【5回目】
⑤ 業務妨害行為
さて、では本題に入ります。
前回(URLを下に載せます)は、ストーカー行為について、途中まで解説したので、今回はその続き、後半戦です!
◆ストーカー行為◆
刑事処罰がありうる『ストーカー行為』とは、『つきまとい等』を、繰り返し行うことでしたよね。
ストーカー行為等の規制に関する法律
(定義)
第二条 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
2 前項第五号の「電子メールの送信等」とは、次の各号のいずれかに掲げる行為(電話をかけること及びファクシミリ装置を用いて送信することを除く。)をいう。
一 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。次号において同じ。)の送信を行うこと。
二 前号に掲げるもののほか、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること。
3 この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。
今日は、1項に定めてある行為をピックアップします。
①つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、うろつき
これは、条文のとおり、生活圏の周りに、物理的にウロウロすることです。怖いですよね。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
②監視の告知
監視してるぞ!と告げる事です。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
③面会、交際の要求
これ、結構多いと思います。特に別れる別れないという、一度交際関係にあった当事者間に多いです。
①とセットになると怖さ倍増ですよね。
三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
④ 粗暴な言動
これは、他の行動に当てはまらないけど、強い言葉や、乱暴な行動があった際の、いわば『お守り条項』です。抜けや漏れを防止する効果があります。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
⑤無言電話、連続電話等
これもよくあります。愛情が怨念に変わるとこうなります。
電話番号や電話の着信履歴は、相手や行為の特定の貴重な証拠になるので、怖いですけど、できればそのまま取っておいてください(せめてスクリーンショットで、自機の番号と特定できるように保存してください)。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
⑥迷惑物の送り付け
これは本当に気味が悪いと思います。
以前、段ボールで、自分の所有品が知らない名前から送られてきた事案に出会いましたが、それはそれは恐怖だったでしょう。
こちらも、証拠保全のため、段ボールや送り状、物品をそのままとっておくことをお勧めします。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
⑦名誉毀損的な告知
あんまり見かけませんが、脅しの一種として、使われることが想定されます。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
⑧リベンジポルノ的な言動
最近は、誰もが撮影機器を手軽に持っており、撮影や保存が容易な上、拡散する媒体も多いので最も精神的な苦痛が大きい類型です。
見つけたら、削除の依頼を出すのはもちろんなのですが、消える前にその場で必ず証拠保全をお願いします。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
以上、インターネット上の匿名攻撃に対しての法的論点整理(第6回/全8回)でした!
では、また。
記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。