作曲の会「Shining」第15回作品展 × 粋吹 ibuki The 3rd Regular Concert の感想

https://www.youtube.com/playlist?list=PLoYvU4jU5xAuzP1uAgSbN04q2Jnc8l8z5

こちら、以前ご案内いただいていたものを、やっとこさ拝聴。
感想をお送りするとお約束していたのだが、Twitterに書くととんだTL荒らしになってしまうのでこちらへ。

まず演奏が良い。それぞれの曲に丁寧に寄り添いながらも、自分たちの音楽活動として楽しく演奏している。葛西さんの指揮は常に作曲家視点で作曲家に寄り添いながらされていて、これはどんな腕のある専業指揮者でもなかなか出来ないことだと思う。

音はガッチリとミックスされている感じで聴きやすい。一方生で聴くと、多分少し上手くいかなかったんだろうなとか、もっと立体的なんだろうななど、印象が変わるところもあるような気がする。

Prayer -平和への祈り- / 上野 友裕

美しいメロディにテンションカチ盛りで懐かしく暖かい。日本のサントラっぽい高音木管やマレットの使い方。
でもメロディのオクターブの取り方などボイシングにこだわりを感じる。
テーマの再現部への流れ、途切れるのでなく、もう少しモチーフの変奏を色々巻き込んで光が見えて再現に至る、、ような感じも聴いてみたい。

きぬかけを往きて / 高畑 和輝

モチーフのじわじわとした変容が楽しい。半音階のモチーフが出てくるたびに硬軟いろんなボイシングになるのも楽しい。他の楽器が入って、ボイシングとダイナミクス以外でもサウンドのスケール感がコントロールされたようなのも聴いてみたい。

空色の空 ─吹奏楽のための─ / 後藤 元信

穏やかな日に釣りに行って、魚が何も釣れないけれどぼんやりしているときを思い出す。クラの中音域のクラスターが美しい。これは吹奏楽ならではの価値があるオーケストレーション。そこに重なる他の楽器の和音も、楽器ならではの価値がある出方で見事。でもクラの高音トレモロだけブラバン臭さを少し感じてしまって、何か他の良い手があれば最高なんだけど何かありますかね。

罪のアントニム / 岩井 晴輝

コード進行やモチーフの音選びが日本の往年の劇伴みたいで大好きです。多分概ね物語の流れに沿ってると思われるので、ナレーションが入っても面白いもしれない。
大きい音になった時に木管楽器の重要な動きが埋もれる感じがするので、要素を絞って
骨太なオーケストレーションにしたものも聴いてみたい。

ワンダリング・エリュトロン / 石川 健人

まさに近代クラシックとポピュラーのイディオムが真ん中で混ざった感じで楽しい。オーケストレーションは概ね吹奏楽ポップス、あるいは往年のアメリカの教育的作品近いので、安心して聴ける。この上で近現代音楽のオーケストレーションがなされたところがあるようなものも聴いてみたい。

心のままに ─吹奏楽のための─ / 金田 侑か

素直なメロディとシンプルな作りなので表現したいことがよく分かる。
それぞれの場面が短くクッションなしで繋がるので、それぞれの場面でもう少し熟して盛り上がり、有機的に繋がるようなものも聴いてみたい。

ベルガマスク組曲 / C.ドビュッシー(姫野 七弦)

力作アレンジ。原曲に忠実に、でもおそらくアマチュアの吹奏楽でも安心して演奏できるように丁寧にオーケストレーションされている。せっかくのドビュッシーなので、木管楽器が重なったときそれぞれの音色感にもう少し敏感で、音域や機能性だけでなく、その楽器の音やその組み合わせならではの音という視点で細かく音が塗り分けられたものも聴いてみたい。

吹奏楽のための前奏曲 / 姫野 七弦

ハーモニーも美しく、オーケストレーションもバランスよくいろんな音が聞こえて完成度高い。曲想にしては少しストイックな側面のあるオーケストレーションなので、ベルガマスク組曲にこの曲ぐらいのオーケストレーションの出入り具合があり、吹奏楽のための前奏曲がベルガマスク組曲ぐらいのサービス精神あるオーケストレーションだったらすごく良いかなと思った。

若葉のうた ─吹奏楽のための─ / 後藤 元信

息の長い良いメロディに豊かなハーモニーがついている。オーケストレーションが厚すぎず、でもきちんと楽器同士が有機的に繋がっていて良い。耳が良いのだと思う。どの場面も安定した伴奏がついているので、バランス感が揺らいでハッとさせる場面があるようなものも聴いてみたい。

黎明のはじまり -吹奏楽のための- / 西山 怜志

吹奏楽であまり聞かないオーケストレーションが沢山聴けて楽しい。楽器の機能性や全体的なバランスよりもその場面で聴きたい楽器を中心に音を選んでいる意思を感じる。対旋律がメロディに追随するものが多いので、違うストーリーを語って絡み合うような場面も聴きたい。

人はいつでも星に導かれている / 高畑 和輝

音色のグラデーションが素晴らしい。吹奏楽ならではの、管楽器の多様な本数・組み合わせによるユニゾンをパレットとして使い分けている。一本のラインがゆらぎながら違う音色へ移ろいゆくとか、フレーズが一音ごとに散り散りにいろんな楽器に配置されるのとか、は実に武満さんっぽい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?