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キタムラの「冷製」マネジャー日記 #82


こんにちは。オトタケの右腕ことキタムラです。今週はお盆の週の日記ということもありスピンオフ企画になっております。書いている最中にデータが消えてしまい、一度心が折れましたがなんとか書いてます。一生懸命書いたので読んでください。「カラオケ★バトル 悲喜こもごも編」です。

いまから10年前、私がオトタケと働きだした頃、オトタケはバンドをやり始めた。草野球ならぬ草バンドだったが、オトタケは楽器ができないという理由でボーカルを務めることになった。素人たちは毎週のようにスタジオに集まり、練習を重ね、ミーティングと銘打った飲み会でバカ話をした。今から思うと、飲み会を開くためにスタジオで待ち合わせ、ついでにちょっとバンドの練習をしたと言えなくもない。

私はそのバンドにもマネジャーという立場で参加した。スタジオの手配や飲み会の予約などの雑用をこなしながら、ほんの少しだけバンドをかじったことがあるという理由でスタジオであ~だこ~だ助言などをしていたらボーカルに煙たがられたため、スタジオには一切近寄らないようになった。

下手ながらもライブをこなし、小さいライブハウスの集客記録を更新するなど活動を続けていたが、リズムはいつもバラバラ、ボーカルは音を外しまくり。いつまでたっても上手くならなかった。しかし、不思議とミュージシャンの人脈が広く、そのなかの1人である「FUNKIST」のボーカル・染谷西郷氏に、厚かましくも対バン(一緒にライブ)しましょうと持ちかけた。するとなんの間違えか、彼らのライブに客演として参加することになった。会場は渋谷のクアトロ。キャパシティおよそ800人という、我々にしてみれば大きすぎるハコだったが、オトタケバンド以外は人気のあるバンドだったため会場は満員になった。

持ち時間は15分、3曲分の演奏時間をいただいたことになる。1曲目はなんとかかんとか持ちこたえた。お客さんも暖かく見守ってくれていたが、MC後のバラードで事件は起きた。情感たっぷりの歌い始めを外したかと思うと、アカペラで始まるワンフレーズをまるまる外してしまったのだ。観客はみなキョトンとしている。客席の後方で見守っていた右腕は、これはえらいこっちゃとオトタケに合図を送ったのだが、感極まって目をつぶっているらしくさっぱり気づかない。舞台袖まで行って曲を止めるべきか、それともこちらも目をつぶるか……。
そこからの記憶は曖昧だ。一つだけ覚えているのは、一度外れた音程はけっして戻らなかったということだ。この日のことは、今でも私のトラウマである。

ときは流れて2020年。長い梅雨に入ったころ、あるオファーが届いた。
テレビ東京の『THEカラオケ★バトル』という番組からだった。腕に覚えのある歌自慢が、カラオケ機材の精密採点の得点を競い合う、忖度なしの歌バトル番組である。今回のサブタイトルは、なんと「芸能界 隠れ歌うま王決定戦」。そこにオトタケに出演してほしいというのだった。

オトタケがインスタグラムに上げた、スナックでカラオケを歌っている動画を見てのお声がけということだった。オトタケは目を閉じて歌い、それに対する絶賛コメントが並んでいるのだが、実はワタクシ、オトタケのカラオケ動画が大嫌いである。カラオケだとライブハウスよりはずいぶんマシに聞こえるが、どうしてもあのトラウマを思い出してしまう。この企画、オトタケには黙ったままお断りしようかとも思ったが、さすがに報告ぐらいはしておこうと思いとどまった。

右「テレ東のカラオケバトルって番組から出演依頼がありましたけど、『歌うま王決定戦』ということなのでお断りしておきますね」
乙「え、そうなの? 何歌おうかな?」

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「乙武洋匡の七転び八起き」
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