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【映画レビュー #3】 あの話題の『主戦場』を観て考えたこと。

話題になっていた『主戦場』をやっと観ることができた。

どう話題だったのかというと、日韓関係の火種としてくすぶる慰安婦問題を正面から扱っていることに加え、ケント・ギルバート氏や櫻井よしこ氏、さらには「テキサス親父」の愛称で知られるトニー・マラーノ氏など、この映画に出演している右派論客から、「上映差し止め」を求める声明が発表される事態が起こったのだ。 

彼らの声明は、下記の7項目から構成されている。

(1)商業映画への「出演」は承諾していない
(2)「大学に提出する学術研究」だから協力した
(3)合意書の義務を履行せず
(4)本質はグロテスクなプロパガンダ映画
(5)ディベートの原則を完全に逸脱
(6)目的は保守系論者の人格攻撃
(7)出崎と関係者の責任を問う

このうち私が気になったのは2点だ。

ひとつは、ミキ・デザキ監督が彼らに対して「上智大学院生の研究のため」という理由で出演を求めてきたにもかかわらず、結果的には「商業映画」に使用されたと主張している点(だが、デザキ氏は彼らは合意書にサインしていると反論)。

もうひとつは、右派論客のインタビューを紹介した後、その反論となるインタビューを流すという順序で映画は進行するため、再反論の機会が与えられていないという主張だ。つまり、彼らはデザキ氏に「うまく使われた」「騙された」と主張しているのだ。

日頃、彼らの主張にあまり賛同することはないのだが、今回の件に関してはいささか気の毒に思う部分もあったし、そもそも「慰安婦問題」をフラットに考えたいと思う私にとって、鑑賞する前から「一方に偏っているのではないか」という疑念を抱かされた時点で、それほど魅力的な作品には映っていなかった。

ところが、信頼を寄せる友人から「どんなものか観に行ってみませんか」と誘われたこともあり、うだるような猛暑のなか、渋谷にある小劇場まで足を運ぶことにした。失敬、車椅子の車輪を運ぶことにした。

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