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みんな、三浦瑠麗さんにはどんなイメージを抱いているんだろう?

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古市憲寿さんの紹介で初めて三浦さんにお会いしたのは、ちょうど3年前の秋。専門は国際政治というお堅い分野だし、テレビで話している姿はとても断定的な口調だし、正直、お会いする前は「とっつきづらい方なのかな」というイメージを抱いていた。

ところが、2時間ほどお話をするうちに、すっかりそんなイメージは霧散していた。テレビで見る印象とはまるで違う、穏やかで、やわらかな話し方をする方だった。「テレビで見ていた芸能人が、実際に会ってみたらイメージが違っていた」なんて本当にどこにでも転がっている話だけど、三浦さんとの出会いもまさにそうした意外性のあるものだった。

当時の私はまだ活動自粛中で、その数ヶ月後には海外放浪の旅に出てしまったりもしたこともあり、しばらくお会いする機会はないままだった。けれど2018年に帰国し、少しずつ活動を再開するうちに、番組などでご一緒させていただく機会が多くなった。相変わらず番組に出演しているときは凛とした印象を与える三浦さんだったけれど、相変わらずスタジオを離れると穏やかで、やわらかな三浦さんだった。

去年の夏くらいだっただろうか。ひさしぶりに古市さんと三浦さんと食事をすることになった。お二人の仕事は絶好調で、それぞれの本業は社会学者と国際政治学者でありながら、メディアからは引っ張りだこの存在となっていた。

それでも、三浦さんはあまり浮かない様子だった。伝えたいことが、うまく伝えられていない。真摯に伝えても、どうしてもバイアスをかけて見られてしまう。そんなジレンマを感じているようだった。

「乙武さんに書いてもらえばいいのに」

古市さんが、あのテレビで見せる、いたずらっぽい笑みを浮かべて言った。

私は、「案外、いいアイディアかもしれない」と思っていた。

これでも20代の頃は、スポーツライターとしてインタビューの腕を磨いてきた。アスリートの人物像を掘り下げる記事を書くことは、一応、得意分野としていた。昔取った杵柄で、もしかしたらお役に立てるかもしれない。そう考えた。

「僕でよかったら書きましょうか?」
「僕の名前は一切出さず、黒子に徹してもいいですし」

三浦さんは少しためらった後、こう言った。

「乙武さんなら、いいかも」

なぜ、私は自身が黒子に徹してまで「三浦瑠麗を描きたい」と思ったのか。理由は、二つある。

一つは、私自身が長年にわたって世間からバイアスをかけた目で見られてきたからだ。「等身大の自分を見てもらえない」といった苦しさは、一度でも味わった者でなければなかなか理解できないように思う。幸か不幸か、私は三浦さんのジレンマを、理解できる側の人間だった。

もう一つは、論者としての三浦瑠麗を、とても信頼していたからだ。最近では右にしろ左にしろ、威勢のいいことを言った者勝ちのような風潮があり、私はそれにうんざりしていた。そのあおりを食って、大局観から本質を突くことのできる論者がめっきり少なくなってしまった印象がある。

そうした意味で、三浦さんは数少ない「本質を突く」議論ができる論者だと感じていた。だからこそ、社会の羅針盤として、より多くの人に三浦さんの話に耳を傾けてほしいと思っていた。彼女に対する妙なバイアスがその妨げとなっているなら、それを取り除くお手伝いをしたいと思ったのだ。

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そうして数ヶ月に一度、文藝春秋の会議室や三浦さんのオフィスで長時間にわたりお話を伺う機会を持つようになった。その内容は、生い立ちから思春期の恋愛、そして政治の話まで多岐に渡った。途中、編集者から「対談という形にしたい」という申し入れがあり、私も三浦さんのドキッとさせられる質問にたじろぎながら、あれこれとお話しさせていただいた。

とりとめもなく語らい続けたけれど、気づくと大きな流れになっていた。

私は、障害者。だけれども、三浦さんは健常者。
三浦さんは、女性。だけれども、私は男性。

それぞれにマイノリティ性を抱え、場面によっては制約を受けながら生きてきた。だからこそ、他者の生きづらさにも敏感でありたいと思っていた。けれども、たがいの話に耳を傾けてみると、まだまだ思いが至っていなかったことに気づかされる。そんな対談になっていた。

昨日、そんな私達の対談がカタチになった。

『それでも、逃げない』というタイトルは、三浦さんの発案だ。

「女性」や「障害者」という属性から逃れることはできないけれど、そこから目を背けた生き方はできるのかもしれない。しかし、私たちはそうした道を望まない。あくまで女性として、あくまで障害者として、享けた人生を全うする覚悟でいる。

最後に、三浦さんが書いてくださった「あとがき」から。

私たちの対話を読んで、少しでも心身を縛っていた鎖がほどけるような、そんな気分になっていただけたとしたら著者冥利に尽きる。

まったく、この一文に尽きる。

1月には私たちのトークイベントも開催されることになったので、ぜひいらしてくださいね!

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