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医学部5年生にもなって休学した僕の話

note初投稿です。波多野裕斗といいます。
現在、東京医科歯科大学医学科の第5学年の課程を1年間休学し、認知心理学とデータサイエンスを勉強しています。
医学科の6年間の中でこの時期に休学しようという人はあまりおらず、「なんで今!?」と言われることが多いので、これまでの道のりと今僕が考えていることをまとめてみました。
いつもは何かと大義名分をつけてカッコつけがちな僕ですが、今回はありのまま書いてみようと思います。

僕は今、デザイナーと医療者が同じ視点に立ち共に働くことで、日常生活という文脈に乗っている「人」に照準を当てた医療を提供する社会作りに貢献したいと思っています。

これまでの迷走

僕が医学部に入学したのは2014年の春でした。高校生の時に授業で見た「Patch Adams」という、笑いで人を治す医師の映画がきっかけで、映画の中に出てくる「医学の知識は超豊富だけどクソ野郎な医師」と「笑いを切り口に患者さんの心を動かすPatch」を足して2で割らないようなスーパーマンになりたいという無邪気な野心をもち、医学部に進学しました。
入学後は、この無邪気な野心を構成する2要素のうち医学的な優秀さを求め、とにかくオンリーワンの存在になりたくて色々なものに手を出しました。一番時間を費やしたのは生物系の基礎研究です。そこそこに没頭して、9:00-17:00は講義、17:00-23:00は研究室という日も多々ありました。他に、大学が提供してくれる課外プログラムとして、グローバルヘルスについて討論形式で学ぶものに参加していたり、デザイン思考をワークショップ形式で学ぶものに参加していたりしました。また、臨床医学という面では、普通の講義だけでなく症例から病気を勉強した方が良いだろうと思い、ケーススタディの勉強会を開いたりしていました。
このように色々なものに手を出していく中で、2年生の時には友人とともに、文科省主催プレゼン大会の関東ブロックで災害時の排泄物処理問題を解消するトイレの提案をして優勝したり、4年生の時には大学の留学プログラムでImperial College Londonにて半年間がん研究に取り組む機会をいただいたり、5年生では病院実習が始まる前の白衣式で誓いの言葉を述べさせて頂いたりと、それなりに見た目の良い4年間を過ごしてきました。

しかし、当時の僕を見ていた人や、ここまで読んだ人の中には、こう思う人が多いと思います。

結局お前は何をしたいんだ?

実は、僕の中でもこれが大問題でした。
人から聞かれた時用に、一応「臨床と研究を繋ぐ人になる」とかいう答えを用意してはいたのですが、別に心の底から自分がそういう人になりたいとは思っていませんでした。単純に、これまでやってきたことを総合すると、そういうことになるのかなぁと。
そしてお気づきの人もいるかもしれませんが、冒頭に紹介したPatchのような、人の心にフォーカスをあてた医療ということに関して僕はこれまで何もしていませんでした。
目の前にある「頑張れば良いことがありそうなもの」を追い続けた結果、完全に道を見失い、自分が何者かも分からなくなっていたのでした。
友達と2人で僕の家で飲みながら、自分が結局何をしたいのかが分からないと泣きながら相談したこともありました。

迷走する中での手がかり

このように迷走する中で、僕は自分が進みたい道の手がかりをかろうじて2つ見つけていました。「ハシゴ」と「協力」です。

1つ目の「ハシゴ」は、2年生の時にお世話になっていた研究室の教授に、研究室を変えたいと言った時に頂いた言葉です。曰く、「今君が取り組もうとしているものと同じ問題を、世界中の天才たちも解決しようとしている。今のやり方や考え方で彼らにできないんだったら、同じことをやっても絶対に解決できない。今越えられない壁を越えるには、新しいハシゴを作らなきゃいけない。」
研究の基本的な考え方ではありながら、改めて言葉にして言われると、僕の心には深く刺さりました。そして、自分が作れる「ハシゴ」って何だろうかと考えるようになりました。

2つ目の「協力」は、熊本地震の時に得たものです。
熊本地震が起こった時、募金で集まった支援金の使い道が不透明であるために支援金が集まりづらくなっている可能性があるという話を聞きました。何か力になりたいと思ったので、すぐさま仲間を集め、各募金団体に電話インタビューをしてその結果をfacebookページに文章でまとめて発信するということをしました。
結果は、端的にいうと大失敗でした。情報がリーチする層は知り合いの域を出ず、情報拡散をお願いした復興支援コミュニティでは情報を信用できないと言われてしまいました。
この話を、大学で人文科学を教えている先生にした際に言われた言葉が、当時の僕にとっては衝撃でした。
「どうして医大生だけでやろうとしたの?」
確かに、情報発信はfacebookよりもwebサイト、テキストよりもイラストの方が見やすいのは間違いなく、それは分かっていながらそのスキルが無いので諦めていました。
医大生が20人くらい集まったチームで、他専門の人と協力するという選択肢を持てなかったというのは、割と医療界全体の閉鎖性を反映しているのではないかと思い、医療と他分野の「協力」というところに目を向けるようになりました。

この2つの手がかりから、自分が作りたい「ハシゴ」は医療と何かの「協力」のところになるのかなぁとぼんやりと考え始めます。



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