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医学部5年生にもなって休学した僕の話②

医学部5年生にもなって休学した僕の話」の続きです。

転機

このように迷走していたなか、思いがけないものが転機を与えてくれました。それは、留学先のロンドンで初めて出会った「プログラミング」というスキルです。
僕の隣のデスクにいたドイツ人が、プログラミング使っちゃえば楽勝だよ〜と言いながら、朝10時に研究室に来て、優雅にランチとお茶をして、夕方16時に帰るという日々を送りながらも成果を出している様子がうざいというか羨ましいというかで、日本に帰国してからすぐにプログラミングの勉強を始めました。
そしてこのプログラミングというものを介して、僕は人生を変える2つの大きな出会いを果たすことになります。

1つ目は、St. Gallen Symposiumです。これは世界中から今のビジネスリーダーと、U35の未来のビジネスリーダーを集めて3日間議論するというものです。2018年のテーマはAIが浸透した後の社会という、プログラミングを始めた僕にとって非常に興味深いテーマでした。参加者のうち100名はエッセイ大会で公募するということだったので、一所懸命エッセイを書いて招待してもらいました。
そこで目にしたのは、まさに「世界の動き」でした。社会の中で何が関心事で、自分がいかにそこから取り残されているかということを痛感しました。そもそも自分はビジネスというものにあまり関心がないどころか少しネガティブな感情すら持っているところからのスタートです。他の参加者より学びのレベルが低く恐縮ですが、世界中の多くの人が市場経済のなかで生きているなか、自分がそこから隔離されたまま医師になって、本当になりたい自分になれるのだろうかと思うようになりました。

2つ目は、GeekSalonという恵比寿にあるプログラミングコミュニティです。
そこで僕は、不思議なまでに魅力的な同年代の大学生たちに出会いました。
自分の中で、とても印象強く残っているさりげない会話があります。どんな経緯かは忘れましたが、僕は友人2人と、人から「プライド」をとったらどうなるかという話をしていました。僕は今しているほとんどのことをやらなくなると答えました。人は根本まで深めていくと承認欲求の塊であり、頑張ることの原動力はそこにあると考えていたからです。しかし、2人は違いました。「特に何も変わらない」と言ってのけたのです。そもそも自分が自然にしててやりたいと思ったことを追いかけているので、プライドが無くなったところでそれは変わらないと言うのです。
僕にとってこれは衝撃でした。そして、衝撃を受けると同時に妙に納得もしていました。僕がGeekSalonの人たちに不思議なまでに魅力を感じたのは、彼らが僕と違い、自然体の自分がやりたいことを素直に実行しているからなのだろうと。
それから、自分もやらなきゃいけないことや周りの評価に人生を支配されずに、自分がやりたいことを追いかけたいと思うようになりました。

思いがけない決断

この2つのできごとを通して、自分はとにかく変わらなければという思いが強くなったのが今年の7月のこと。そのまま1ヶ月の夏休みに入りました。
時間的に余裕ができたので改めて自分の「ハシゴ」について考え始め、医療と他分野の「協力」というところを突き詰めたいなと思うようになります。
当初は自分がプログラミングを勉強していたこともあり、エンジニアと医療者を繋げる存在になりたいと思っていました。そして、冗談で「休学でもしてプログラミングオタクになりてえなー笑笑」と言っていました。

そんななか8月の下旬に入り、思いがけない事件がおきます。
その日は、ちょうど落合陽一さんの講演会で、「医者がエンジニアと一緒に仕事したいなら、ダブルメジャーくらいの勢いじゃないとフツーに無理。」と言われた日でした。確かに今ヘルステックで起業してる医者たちってみんな自分でコード書ける人だよなぁと思いながらベッドに入りました。
目を閉じて10分くらいした頃でしょうか、唐突に「休学」という文字が頭にポンっと浮かびました。最初はいつもの冗談のハズでしたが、妙に頭を離れませんでした。このまま卒業して幸せなんだろうかとか、1年あったら何ができるだろうとか、でも休学したらみんなと卒業旅行いけないなぁとか、色々考え始めました。

気づいたら朝でした。こんなことは初めてで、日が昇っていくのを見ながら、結局自分は休学したいんだなと妙に納得しました。そして、たまには道を外れてみようかと決心しました。

そのあとは速く、大学でお世話になっている先生に相談し、親にも自分の意志を伝え、ちょうどのタイミングで開催された教授会にかけてもらい、2週間後には10月からの僕の休学が決まりました。

軌道修正と原点回帰

そして10月から休学してディープラーニングを勉強しよう!と息巻いていましたが、ここで自分が尊敬する大先輩の医師たちからのフィードバックを頂きます。技術革新はすごいスピードで起こっているので、ディープラーニングを使って今やりたいことがない限り、時間が勿体ないんじゃないか。一人の非常に親切な先生は、AI研究で有名な東大の松尾教授の記事を送り、今ある技術がのちの技術革新のベースにすらならない可能性が高いと教えてくださいました。松尾教授までそう言うならそれが正しいのだろうと思い、素直に軌道修正することにします。

よくよく考えれば、自分の中で手段が目的化していました。
自分は医療とICTの融合の先に、何をやりたかったのか。

その状態で休学期間が始まり、とことん自分と向き合うことができました。

そしてようやく、4年越しに、医師を志した時の自分の原点に立ち戻ります。

そう、自分は患者さんの横に立って、患者さんの心を動かすような医療をやりたかったんだ。

自分が医師として脂が乗ってくるであろう2025-2030年ごろ、ICTは医療・ヘルスケアに浸透して、モバイル端末等を介してより患者さんの生活に寄り添う形で医療は提供され、業務効率化の結果医師はより患者さんと向き合えるようになるはず。
そのような時代において医師として自分がやりたいのは、「健康」という誰しも求めていながら実際に行動を起こしづらいゴールを、どのようにすれば患者さんやまだ患者でない人たちと一緒に目指せるかという設計(=デザイン)であり、さらにその結果として医学的アウトカムの改善をデータとして示すようなことをやりたい。
そのために必要な知識として、認知心理学とそのデザインへの応用、データサイエンスを勉強することにしました。
そして、将来的にはデザインと医療の架け橋の一つになりたいと思っています。
第一歩として、学生の間から未来の医療者とデザイナーを繋ごうと思い、Colonb'sという団体も立ち上げました。これに関してはまた今度お話しします。

最後に

読んでもらえば分かる通り、僕の人生は結構グダグダです!笑
でも紆余曲折を経て、最初よりも色々と進化した状態で、ようやく原点に戻ってきました。この軸は少なくとも当分はブレないのではないかなと思っています。
今後も簡単にはいかないだろうと思いますが、一所懸命生きていきます。


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