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行政とトレイルランニング

定期的に届く市の広報誌によると、2018年4月から鎌倉市役所の、つまり行政組織が変わったようです。そこで考えてみました。あの問題はどこが扱うのか?

それは、『鎌倉トレイルラン規制の条例化問題』です。
2014年3月5日に陳情書が採択されてから丸4年。特に進展ないまま組織変更を迎えました。これまで担当していたのは観光商工課。当初は課長案件でしたが、最近は主任案件になり、行政としての優先度が下がったのか、それとも、より実務レベルに落とし込んだことを意味するのか、行政マンに聞きたいところです。

さて、新しい組織では、どこが担当となるのでしょう? 先日、現担当者(主任)にメールにて問い合わせをして、返事を待ってるところですが、勝手に予測してみたいと思います。

・分割される観光課
大本命。それは市民生活部の一部となり、地域のつながり課の中に属します。トレイルの利用は地域をつなげ、観光に寄与するという文脈でしょうか。なぜ「観光」なのかは、鎌倉のトレイルが観光資源とみなされているからです。順当であればこの課でしょう。

・防災安全部総合防災課
トレイルの維持・管理は行政にとって防災につながる。そう話をしてたのは以前に取材したことがある青梅市でした。似たような発言を各地で聞いたことがあり、昨今の山での事故は防災目線と言えますし、山火事や土砂災害など、災害対策や事故対策としてトレイルは重要な役割を担っています。

・健康福祉部高齢者いきいき課
人口の6割以上が50代以上という高齢化が進む鎌倉市。医療費の削減は国が率先して行う大きな福祉政策であり、市民のいきいきとした健康増進とトレイルの活用は密接な関係を作り上げます。

・スポーツ課
「スポーツ」という真っ当なくくりとしては、いきいき課と同じ健康福祉部内にあるスポーツ課が担うという考えは最もしっくりくる収まりどころ。直接スポーツ課の人と話したことはないですが、積極利用という前向きな取り組みとして推進するには強い関係性を見出せる部署です。

・環境政策課あるいは環境保全課
自然環境の保全と利活用という環境省の指針に照らし合わせた場合、必ず関わる部署です。市の面積の中で森林率が40%ほどの鎌倉市において、また、人工林の比率が高いことからも、人間の“手”による定期的な活動が必要とされる見逃せない分野であり、このスポーツの社会性を見出す観点としても重要な課です。

・下水道河川課あるいは公園課
トレイルと下水道河川と聞くと意外に思うかもしれませんが、かつて市民生活の一部であった里山のトレイルは、下水道河川と強い関わりを有しています。今でも下水道河川における作業道として機能しているトレイルがあり、なんらかの活用を考える場合、「それは、下水道河川課で聞いてくれない?」と言われることが珍しくありません。公園課は説明不要ですよね。

・教育総務課
青少年の育成という観点ではここの管轄です。結果的に鎌倉トレイル規制問題を起こしてしまった鎌倉アルプスレースでは、この視点から教育委員会より9年に渡って後援を受けていました。

・文化財課
100を軽く超える寺社仏閣を備える鎌倉市において、トレイルの地権者(地主)が寺社である場合は珍しくありません。つまり、彼らの私有地です。さらに、その寺社が文化財の指定を受けている場合、トレイルという土地も指定の範囲に含まれます。“市民に広く開放する”という大義のもと、自由に使えているトレイルも、活用や整備という話になった場合、その管轄は文化財課となります。かのハイキングクリーンが、良かれと思って木段などトレイル整備をして”口頭注意”を受けたことがあり、最も保守的な課だと言われています。

・消防本部
何らかの事故やトラブルが発生した場合、出動するのは消防です。防災課とも深く関わる社会インフラでもあるこの部署、全国のトレイル大会が行われるとき、彼らと強固に連携した関係作りは最重要項目です。

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このように、トレイルに関わる事案は一つの部署で片付く縦割りではなく、多岐にわたる横串の連携であることがよく分かります。さらに、年間2000万人が訪れる観光地である鎌倉市にとって、課題も施策も複雑に絡み合います。
日本の国土の7割と言われる森林。特に山間部を使うトレイルランニングというスポーツにとって、地元行政との強い結びつきは必須事項で、どんなに小さな大会であっても、行政と良好な関係を構築することは極めて優先度の高い事案です。

鎌倉では「規制問題」という負の形で取り扱いが始まったこともあり、(旧)観光商工課から引き継ぐ形で観光課が取り扱いそうですが、未来志向で地域社会や暮らしと結びついていくには、行政と広い視野で連携していくことが求められていくことでしょう。


「社会変化が激しい現代社会において、アウトドアスポーツが果たす役割、その重要性も増していくと思うんです。ライフスタイルとしてのスポーツのあり方が注目される時代が今以上に訪れると思っていて、その時、トレイルランニングが必要とされる、もっと愛されると信じています。未来のトレイルランニングをポジティブに捉えていますよ」(鏑木毅「Run+Trail Vol.29」2/27発売号より

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