シリーズ『シャンソンの乱』 第2回 "断固たる強い意志"

 スポーツの試合での誤審によってチームが試合判定を巡って審判個人を訴えるという前代未聞の事態が起きたシリーズ『シャンソンの乱』第2回は、審判個人を訴えたシャンソン側の"意志の強さ"を検証します。

 去年の11月29日、女子バスケットボールWリーグシャンソン化粧品-デンソー戦の終了間際、”誤審”が起き、翌月の12月28日、静岡地裁に約3,000万円の損害賠償金と新聞への謝罪広告掲載を求めて主審の平育雄氏を訴えるまでの約1ヶ月の間に何があったのか、時系列で追うとこうなる。

◆11月30日 不利な判定があったとして、Wリーグに抗議文書を送付。◆12月2日 シャンソンの所属する静岡県協会がWリーグに検証、謝罪などを求めた意見書を提出。
◆12月6日 Wリーグの斎藤聖美会長と、日本協会の川淵三郎会長に意見書を提出。
◆12月7日 シャンソン川村修社長が都内スポーツ庁に出向き、鈴木大地長官に異例の直訴。経緯を説明する。
◆12月8日 日本協会の川淵会長は「まずはWリーグの中で解決すること」と静観の姿勢。
◆12月8、11、18日 3度にわたってWリーグの西井専務理事に書面を提出。
◆12月16日 Wリーグからビデオ判定の導入、コミッショナー常設を検討するなどの回答が書面であった。
◆12月28日 主審に約3,000万円の損害賠償と新聞への謝罪文掲載を求め、静岡地裁に提訴。

◆1月27日 提訴に対し、Wリーグは「再発防止策の検討中に遺憾」と見解。


【強い意志①】
 これらの過程の中で、シャンソン側の強い意志が感じられるエピソードがいくつかある。まず一つは、12月7日に社長自らスポーツ庁に出向き、鈴木大地長官に異例の直訴をしたこと。

 リーグや協会に対して意見書を提出することはスポーツの”誤審”では想定内の行動だが、いきなりスポーツ庁に出向き、鈴木大地長官に直訴した背景について、川村社長は「選手のためにやれることはすべてやってあげたかった」と説明したという。

 社長のパフォーマンスかと揶揄する声もある中、シーズン中の1試合の判定を巡って、社長自ら動くことは異例であり、強い意志を感じる。

【強い意志②】
 その後の12月16日。Wリーグからビデオ判定の導入、コミッショナー常設を検討するなどの回答が書面で送られたが、これらを不服とし、一気に提訴へと突き進む。

 リーグ側が示したのはいわゆる公式見解のような"再発防止策"。しかし、当該試合の審判3人が12月中旬から試合を外され「再研修」を受けているのだが、シャンソン側の目的は他にあるのだろうか? 

 シャンソンは、振り上げたコブシを下ろすことなく、年末押し迫る12月28日、主審の平育雄氏に約3,000万円の損害賠償と新聞への謝罪文掲載を求め、静岡地裁に提訴するに至る。

【強い意志③】
 新年を迎え、この事態は悪化をたどることになる。
 1/27、Wリーグの臨時部長会が開かれ、その席上でWリーグの西井専務理事が「誤審で訴えられたらたまらない。審判たちが『シャンソン戦の笛を吹きたくない』と言っている」と発言。
 さらに、シャンソンにペナルティーを科す可能性まで伝え、提訴の取り下げを求めるような発言をするが、同席したシャンソンの杉山部長は「ある意味、圧力かなと感じている」と話し、リーグ側に対する不信感をさらに募らせることになる。

 この日、Wリーグ側は『シャンソン化粧品による審判への提訴について』と題した文書を出し、「再発防止策の検討中に遺憾」との見解を示したことで、両者は真っ向から対立することとなり、法廷闘争へと突入することになった。

(『シャンソン化粧品による審判への提訴について』WリーグHPより)


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この"シャンソンの乱"はシリーズです。次回第3回は、シャンソン側の提訴内容を法的な観点から検証します。

第1回 "残り0.6秒のファウル" 
第2回 "断固たる強い意志"

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