ゴールの仕方〜Brisbane Trail Ultra編

 Run boys! Run girls! のブログが話題になってたことで、それに便乗する体験記です。

 7/9、千葉の船橋駅で起きた人身事故の影響で、乗ろうと思っていた成田エクスプレスが大幅に遅延。京急を使って千葉を抜け、東京をやり過ごし、神奈川の自宅まで向かう長い車中を利用して、連続ツィートした内容を補足しながら追記します。

 ブリスベンの中心部から10kmほど離れたナショナルパークを舞台に行われたこの大会『Brisbane Trail Ultra』。その110kmにエントリーした私。
 街の中心部からわずか10kmほどでウルトラトレイルの大会が開ける立地環境が驚きなのだけど、第一回目のこの大会のフィニッシュは街のど真ん中でした。
 それはつまり、100kmほど駆け抜けてきたトレイルを出て、ブリスベンの市街を通るコース設計がされていて、僕にとってこのラスト10kmのCity Runがハイライトのように記憶に残っています。

 高級住宅街を抜け、大きなスタジアムをぐるりと周り、ブリスベン川に架かるブリッジを渡り、ライトアップされた川辺を進み、メトロポリタンなビル群などを抜けていくことで、私はブリスベンという街を郊外から中心部にかけて体感する機会にもなりました。

 無理やり東京に例えるなら、高尾山周辺の山々を走り抜けると、田園調布のような高級住宅地が現れ、駒沢公園のような広大なスポーツ施設を巡り、新宿のような高層ビル群をすり抜け、レンボーブリッジを渡り、聖路加病院あたりのベイエリアを水辺に沿って進み、天王洲アイルのT.Y.HARBORでフィニッシュする感じです。すみません、かえって分かりづらいですね。

 ま、その立地環境が10kmほどというコンパクトさがブリスベンと思って頂けたらそれでいいのですが、街ってトレイルより難しいのです。
 どこがコースなのか、交差点のどっちに行けばいいのか、選択肢があり過ぎてトレイルの方がずっと簡単なのです。
 とか言いながら、トレイルで8kmもロストしちゃったのですけど(笑)、スマホにGPXデータを入れ、マップに落としていたので、にらめっこ状態で進んでいました。

 残り3kmくらいになった時です。背後からハァハァしながら2mほどもある2人の大男が迫ってきました。MichaelとCallumでした。

M「Hi! 調子はどうだい?」
私「いやー、道が分からないんだよ」
M「俺たちに付いてこいよ」
私「ヨロシク!」

 そんな会話をして大男たちに付いていくことにしました。
 ヒョードルとミルコ・クロコップのような2人のすぐ後ろを追走した残り1.5kmくらいだったか、Callmuが突然足を止め、歩き始めてしまいました。
「先に行ってくれ!」Michael から言われ、仕方がなくスマホを取り出し、再びにらめっこをしながら(ペースを落として) 進むこと残り300mくらい、ものすごい勢いで大男ふたりがまた迫ってきたのです。
 後から聞くと、“あの日本人を目指して、最後まで力を出し切ろう!”とMichaelがCallumを鼓舞していたそうな。

 少し遠目ではあったけどゴールゲートが見えていたこと、ランボーのblog『ゴールの作法』を読んでいたこともあり、いろんな思いが頭をよぎりました。
 でも、迫り来る大男2名がなんだか怖くて(だって、ヒョードルとミルコに追われたら怖いじゃん!)、よし、振り切ってやる!みたいな気持ちになった私は、111.7kmも走ったあとのスプリント勝負を買いました。
 結果、5秒差くらいで先にフィニッシュ。フィニッシュした時間が深夜2時前ということもあって、観客はもちろんゼロ。カメラマンもいない中、3名のスタッフがお出迎えしてくれました。

 途中で歩いてしまったCallumが感極まって泣いていました。どうやら初めてのウルトラトレイルだったようで、そんな彼を鼓舞し続けたMichaelが彼の肩を何度も叩きながら祝福しておりました。そして3名のスタッフもCallumを囲んで祝福の嵐。
「お、俺は置き去りか!?」と微笑ましく苦笑いしながらその光景を見ていると、Michaelが手を差し出し話しかけてきました。

M「最後、負けたよ。かなりプッシュしたはずなのに、君は速かった」
私「お互いナイスランだった。ただね、君たちデカいんだよ(笑)。だから怖かったんだ。逃げてただけさ」
M 「アハハ!そうだよな。こんな真夜中に追いかけられたら(笑)。いろんなゴールがあるけど、Callumには最後まで走って欲しかったんだ」
私「その気持ちを尊重するよ。僕の方は大丈夫。お陰で最後まで力を出し切った気分になれたよ。本当はゆったり噛みしめるようにゴールしたかったけどさ(笑)」
M「ボディは俺たちが大きいけど、ハートは君の方が大きいな(笑)」
私「スプリント勝負に勝ったのも俺な!(笑)」
(そして、固い握手とハグ)

 こんな会話をした翌日、ゴール会場は最終ランナーを待ちながら、すでにフィニッシュした選手たちやエイドスタッフたちが集まって、緩やかなフェスのような状態に。
 その中でボッチでビールを飲んでいた私のことを見つけたCallumが近寄ってきました。

C「Michaelから聞いたよ。野良犬のように追いかけてしまって(苦笑)」
山「こんな大型犬に追いかけられたら逃げるしかないだろ!?(笑)」
C「そうだよな!分かる。もし、嫌な気分にさせたならと思って、一言声を掛けたかったんだ」
山「何も問題ない。その気持ちで十分だよ。それより初挑戦だったんだって? 泣いてたもんな」
C「泣いてねーし」
山「泣いてたじゃねーか」
C「汗だよ」
山「(笑)。直前に心が折れて歩いたのに、持ち直した強さを尊敬する」
C「ホント出し切ったよ。しばらく走りたくないね」
山「おめでとう。ビッグハートは僕だってMichaelに言われたけど、ストロングハートは君だね」
C「話せて良かった。また走ろう!」

+

 ゴールの仕方として、別にどっちでもいいのだけど、Callumが他者に目を向ける視点を持ってくれたことと、こうして私を探して行動に移したことが嬉しかった。最後にまた握手をしたらグローブみたいな手だった。

ーその後ー

私「ゴール目前はビールのことしか考えていないんだけどさ、君はどんな気持ちだった?」
C「普段は俺も同じだ。でも、昨日は『あと少しだ。これで終われる。早く終わりたい』って考えていたな」
私「で、ビールは飲んだのか?」
C「実はまだなんだ。一緒に飲まないか? 俺に奢らせてくれ」
私「初挑戦のお祝いだ。俺が奢る(笑)」

 そう言い合って、タップが並んだテントに向かっているとMichaelが追いかけてきました。

M「おいお前ら、抜け駆けするなよ。ここは俺が奢る。Callumには祝福。君は俺からの気持ちだ。文句ないだろ?」
私「わかった(笑)」
C「いい考えだ。Bigサイズな!」

 トップから8時間も経過した時点で、1分1秒を争うような走りはしない主義ですけど、最後まで全力を尽くすことをCallumに伝えようとしたMichaelの姿勢はよく理解できました。
 と同時に、スプリント勝負を仕掛けてきたときに、それを受けて立ち、堂々とちぎることで、Callumに先輩風を吹かせることもできて、それも良かったと振り返っています。

「だけどさ、お前らなんでそんなにデカいんだよ。LADYに同じことやったらアウトだぜ!」などと軽口を叩いて、ビールを飲み干しました。

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Yamada Hiroshi

水瓶座のAB型/スポーツジャーナリスト/広告制作会社のプロデューサー/ラジオパーソナリティ/トレイルランのガイド/ライター/某(公社)マーケティング部委員/渋谷の工事/夢は七つの顔を持つこと/孤独好きな寂しがり屋
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