都会の渦

肌寒いような、太陽が熱いような。

少し冷たい夜風と、戦闘力の高い蚊。

朝に一匹、僕の血を分けた生き物を成敗しました。

せっかく血を分けたのに心痛む。


絵の具まみれの靴を履いて、下の階に住む

住民を起こさぬようゴミ出しに向かう。

ビニール袋ってうるさいな。

こんなに薄いのに、

なんでこんな大きな音がなるんだろう。

まぁいいや


実家を離れてもうすぐ半年になります。

今でも週1日は帰っているから、

遠い存在ではないんだけど、

やっぱり家を出たんだなって

こういう何気ない瞬間に自覚する。


9人兄弟の3番目として生まれ育ったから、

子供が家にいないのがすごく変な感じ。

くだらない喧嘩も、家事をすることも、

兄弟をお風呂に入れることもなくなり、

部屋を片付けなさいと言われることも減った。


関わる人は家族からシェアハウスメンバーになった。

朝に乗る乗り物は、田舎の山を走るバスから

無機質な大阪の地下鉄に変わった。


マクドに行く回数が増えた。

回転寿司に行く回数が増えた。

夜中にラーメンを食べることが増えた。

大阪の喧騒に負けじと、

耳につけるヘッドホンの音量が上がった。

歩く速度は自然に速くなり、

スマホを見る回数は増え、

どこへ行くにもMacを持ち運ぶようになった。

ヨドバシカメラの品揃えを見てもどうも思わないし、

難波のオタロードもグリコも日常風景に変わった。

生活が良くなったのか

悪くなったのかわからないけど、

いつの間にか僕は都会に適応していた。


この場所ではお金が燃料だ。

都会はお金を燃料に動いているみたい。

人も、ビルも、車も、キャッチのお兄さんも、

燃料はお金。

だから僕も適応してみた。

使うお金も入るお金も増えていた。

不思議だ。

住む場所を変えただけなのに。


でも、別にそれだけ。

使うお金が増えたから入るお金が増えただけで、

入るお金が増えたから使うお金が増えたわけじゃない。

つまり何も凄くない。

本当に、住む場所を変えただけ。


都会の渦はすごい。

いろんな引力が働いてて、

刺激と興奮と混沌が渦を巻いてる。


何に飲み込まれるかの違いでしかなくて、

全部同じに映るんだ。

ファッションの渦、化粧品の渦、

好きなアーティストの渦、

好きなアニメの渦。

カラオケ、映画、シーシャ、

ダーツ、クラブ、ボーリング、

居酒屋も全部同じだ。

ただ渦を巻いてる。

その集合体が街で

天満や難波は酒の渦が強い。

アメ村は音楽とファッションの渦が強い。

天王寺は諦めと今日限りの楽しさの渦。

本町と梅田は承認欲求の渦。


本当にこれで良いのかって思った瞬間には

これでいいんだ。って街の渦の声がする。


最初は呑まれるのが楽で、

途中から疑問を持つけど、

だんだん疑問と倦怠感があるのが普通になる。

最終的にもう気力もなくて、

渦の巻かれる方に流される。



孫子は言った。


水は低きに流れ、人は易きに流れる。


水が低い方へ流れるように、

人も楽な方を選ぶ。

いいとか悪いとかはなくて、そういうもの。

どれだけ努力しても世界は楽な方に流れる。

技術は人を楽にさせる道にしか発展せず、

思考することも、心の声を聞くこともしなくなり、

今日1番刺激を得れる渦に向かって飛び込む。

派手なネオンの裏腹に色褪せた世界。

世の中がどこか生きずらくて

自分らしく在れなくて、

自分らしさもよくわからなくて、

自分の上位互換みたいな人に出会って、

自分の存在意義を失って、挑戦する理由も、

好きなことを好きだと言う勇気も無くなり、

世の中の流行りの枠組みの中でしか

個性を探せなくなり、渦に呑まれる。

そんなの流行りの中で探す個性は無個性で

悲しいしつまらない。


だけど、そんな世界だからこそ

変わらない価値観を持って生きるのは美しい。


きっと、そんな生き方は

楽しいことより苦しいことの方が多くて、

1つのことを成し遂げる前に、

10個の障害が立ち塞がるし、

やりたいことをするために、

その5倍のやりたくないことと向き合うんだと思う。

辛いように見えるし絶対辛い。

だけど、

苦しい時間が長いほど

楽しいことの感動は大きくて、

うまくいかないことの数だけ

うまく行った時の達成感や興奮はすごい。

きっと、

本当に面白い人生はレールの上にない。

幸せな環境なことを頭で理解して、

恵まれているのに何か物足りないのは

その生き方が渦の中心へ流されているから。

引力の強い方に流されるのはわかる。

けど、

その違和感を持てているのは今だけで、

渦の中心まで流れてしまったら

違和感すら抱けなくなる。


マインドセットとか、意識高いとか、

自己啓発は自己満っぽいし絶妙に

気持ち悪くて、

誰かにそういう生き方を熱く語るとか

まじで興味ないけど、

好きなことで生き切るって

多分この引力に逆らって自分で渦を起こすことなんだろうな。

真の安定とは学び続けることで、

挑戦し続けることで、

好きなことを好きだと言い続けること。


渦を自分で起こす。


安全にやろうと思うのは、一番危険な落とし穴


今の生活が好きで、

変わらなくて良いと思うなら、

そのままで良いと思う。

本音がそれなのに、

「何かを変えたくて〜」

とか黙ってろって感じ。


本気で生きたいと思っているなら、

変わらなきゃいけないと思っているなら、

見たい景色があるなら、

守りたい何かがあるなら、

今、苦しい方を選べ。

全部、本気でやれ。

全部、結果を出せ。

脳みそ千切れるくらい考えて、

明日立ち上がれないかもと思うくらい走り回って、

気が遠くなるほど失敗して、

数え切れないほど謝って、

世の中の当たり前を捨てて、

やっと好きな人に届けたい価値を届けて生きれる。

見たかった景色が見れる。

守りたかった何かを守れる。


何をやったらいいかわからないとか言う前に、

まず自分ができることを全部やる。



まだ全部足りない。

まだ誰も救えてないし、助けれてないし、

思考も行動も継続力も足りない。


お金も時間も仲間もいて、

幸せだと感じる時間は増えたけど、

満腹のお腹に食料を入れているような

最近はそんな感覚。

幸せは、泣くような感動は、

苦しいけど楽しくて仕方がないあの熱中は

自分が本気で生きている時にしか

顕在化してくれないんだろうな。


消費するエンターテイメントにはもう飽きた。

自分で作りたい。創造したい。

感動させたい。熱狂させたい。

人間として生きれてよかったと言わせたい。

好奇心と遊び心と優しさと強さを持ち合わせたい。

感動していたい。理解できなくて、だけど

ただ波動が強いのが分かる愛のある表現に溺れたい。

感動させた人の顔を見たい。




結局、自由とは、制約に気がつくところから始まるんだと思う。

自分を繋いでいる鎖が長くて重いほど、

縛られているのに気がつけない。

確かに、この世界は残酷で意地悪で不公平。

だけど、それ以上に面白くて美しくて自由だし、

それに気が付けるような、

気が付かせれるような生き方がしたい。


渦を起こす










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