羽場の麹屋

羽場の麹屋

最近の記事

そこに愛はあるのか~愛とプライド~

なんだか古い月9の名ゼリフみたいになってしまったが、連日炎天下の中で早朝から日が落ちるまで(本当に時間を惜しんでギリギリまで)頑張っている現場の皆さんを見ていると、本当に愛しかないなあ、と、ありがたい気持ちでいっぱいになる。 文化財の改修工事。 建物の痕跡をたどり、「とある時代」をめがけて忠実に復元していくことと、この先もこの建物が健康な状態で守られてゆくことの二つの意味がある。 設計図に細かく指示のあるもの、現場で確認しながら決断するもの。今の時代ならほかのもので簡略的

    • うん、やっぱり間違いじゃなかった

      先日くらをでお食事をお召し上がりになったご夫婦が、帰り際に声をかけてくれた 「建物の在り方があまりにも素晴らしいし、器もセンスがいいし、お料理も最高に美味しかったよ、どなたか著名な方がプロデュースしたのですか?」 私は答えた 「いえ、設計施工はこれから著名になるかもしれない知識とセンスとあそび心抜群の若いコンビで、器や家具は私の好みで選んでおります。お料理は素朴なものばかりですが、どれも今日美味しく召し上がっていただくために数年前から仕込んでいたものです。」 聴くと、その

      • わたしごと、みんなごと

        講師の真紀ちゃん(あえてそう呼ぶ)に初めてお会いしたのは2020年の3月に行われた県が主催するあるセミナー。 それまでの私は「まちづくり」というキーワードで行われていた学びの場になるべくたくさん参加して、自分の暮らしから不安をなくすには?ということをひたすらに考えていたと思います。それにはきっと、まちの仕組みそのものを理解する必要があると。 まきちゃんのお話はそれまで教わったどの考え方とも違い、与えられるものではなく「気づき自分から行動すること」にこそ意味がある。というも

        • よこてのカモシカ集団

          私たちが暮らす横手市には、現在二十数件の麹屋がある。 世帯数3.5万ほどの横手市に麹屋が二十軒、と言えば、麹の消費量を想像していただけるだろうか。雪解け時期の味噌づくりから始まり、夏は農作業の合間に食べる野菜の浅漬け、秋は冬のための保存食を作り、冬は大人も子供も麹で作った優しい甘さの甘酒を飲む。一年中麹を使った料理がどの家の食卓にものぼるのだから、麹屋は一年中忙しくさせてもらえている。 物議を醸しだす、雰囲気を醸す、など日常でも「醸す」という単語を使うことがある。状況が沸き

        そこに愛はあるのか~愛とプライド~

          麹屋で働く、という選択肢があります

          私たちの会社は、大正七年創業の「羽場こうじ店」という麹屋です。 地域のみなさんにご愛顧いただき、この地域の食文化、少し大袈裟に言ってしまえば、地域のご家庭の台所を縁の下の力持ち的に支え続けてきました。おかげさまで創業100年を迎えることが出来ました。本当にありがとうございます。 私たちの地域は、米どころ秋田の中でも有数の米産地ゆえに、米を中心とした食文化が栄え、また、雪深く厳しい冬が続く地域の知恵として、古くから米麹を使った漬け物や保存食などの「発酵食文化」が生活の中に根づ

          麹屋で働く、という選択肢があります

          雪と暮らす

          今年の横手市は、全国ニュースでも取り上げてもらうぐらい記録的な雪の量です。雪に慣れている自分たちですら連日の降雪に面食らってしまうほど。 雪は水のかたまりだから、それが積もっていくということは、重さがかかるということ。 日中に気温が上がったり雨が降ったりで引き締まったところで夜に冷え込むと、重くて硬い雪になって行きます。大人の背丈より高く積もった屋根の雪は、ほっておくと建物を潰してしまうぐらいの重さに。 そこで必要な作業が「雪おろし」というわけです。 イメージはカキ氷。

          雪と暮らす

          受賞のご報告

          旧勇駒酒造内の飲食物販スペース(旬菜みそ茶屋くらをの部分ですね、)はこの度、【ウッドファーストあきた木造・木質化建築賞】の木質化、リノベーション部門で最優秀賞を頂くことになりました。 全ての話題がウイルスにはじまりウイルスに終わる、本当にしんどくて泣いた2020年だったけれど、締めくくりの月に褒美をもらえた感じがして、心の底から嬉しいです。 様々な面で大きな意味を持つ改装だったから、工事に取りかかるまでは試案に試案を重ね、何年もかかった。実際に工事が始まってみると予想通り「

          受賞のご報告

          今日もありがとう

          びっくりしたことに、昨年の今日書いたnoteの記事が「下書き」になったままで公開されていなかった。 一年温めて、さっき公開ボタンを押した。 ということで、一年後の今日。7周年を迎えまた、noteを書いている。昨年のわたしには知る由もない大変な一年であったが、あの日に感じた[いつもと同じことへのありがたい]は、いつでも普通にあるものでは無い、ということを体験した。 改装のための長い休業、コロナウィルスの脅威、三月の新装開店後すぐの休業要請、売上減(というか無し)の恐怖、大事

          今日もありがとう

          6周年を迎えて

          10月最後の日曜日、晴れ。 今日もお客様に恵まれますようにと願いながら、大きく入口の戸を開いて朝の冷たい空気を店に通す。 次々に今日のメンバーも出勤、いつも通り朝の丁寧な掃除を済ませて、朝礼。 「今日も一日よろしくお願いします。」 台所はご飯の釜からもうもうと湯気があがり、お出汁のいい香りが漂い、野菜を切る音、擦り鉢で長いもを擂る音、道具を洗う音、たくさんの音に包まれる。多くの言葉を交わさなくても、あうんの呼吸で作業が流れる。 「そういえば、今日くらを、誕生日だよ。」

          6周年を迎えて

          おうちでくらを

          いつも当店をご利用いただき、本当にありがとうございます。 新型コロナウイルス感染拡大防止、お客様とスタッフの安全確保を第一に考え、当面の間ランチの営業をお休みすることといたしました。 ランチをお休みしている間、お弁当やお惣菜で皆さまにくらをの味を楽しんでいただけるように準備いたしました。ラインナップは下記の通りです。 どうぞよろしくお願いいたします。 【月替わりのお弁当(お味噌汁付き)】 ニシンをわかめと煮付け、筍土佐煮、ばっけ味噌、干し野菜と鶏ハムの梅サラダ、卵味噌漬け、

          おうちでくらを

          味噌や麹もポチっとしてください。

          4月に入ったタイミングがちょうど店休日、今日は久しぶりにくらをの台所から安心の香りが漂っていた。 お米が炊き上がるあのなんとも言えない甘い湯気と、出汁に味噌が溶ける香り、ばっけ味噌や含め煮や漬け物のそれぞれ。 香りをかいでいて、思ったんです。 やはりね、毎日のことだから食事はホッとするものをテーブルいっぱいに並べたいよね。いや、ツヤツヤのごはんと野菜がたっぷり入った味噌汁に、麹でかるく揉んだ漬物がひとくち分あれば、本当にそれだけでもじゅうぶんにホッとするんだものね。 今

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          4月からの営業についてお願いとお知らせ

          味噌や麹など、毎日に必要な食品を扱う店として出来る限りの努力をいたします。でも、状況が日々変わる今の決断が全てではないとも感じています。ご来店のお客様には気持ちよくご利用いただき、スタッフも安心して業務に徹することが出来るようどうぞご理解を頂けますようお願い申し上げます。 新型コロナウィルスによる感染拡大を防ぐため、お客様にお願いとお知らせを記しました。 ①弱酸性次亜塩素酸の消毒液を設置しています。どなた様も入店前の手指消毒をお願いします。 ②密室密閉空間を作らないよ

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          くるり岸田さんと、くらをのごはん

          人気ロックバンドくるりの岸田さんが、某日「ものづくりと発酵食」をテーマにした旅~秋田と山形編~でくらをに立ち寄ってくださった。 お話を頂いたとき嬉しさもあったけれど、不安の方が大きかった。予定されている時間は一時間。そのたった一時間で、どうやってこの大切な文化をお伝えしようか。 私のつたない説明では伝えきれないということはわかっていたし(食堂を始めて六年たってもまだ言葉で伝えきれた試しがない)パソコンやスマホで探せばそれなりの情報はどこにいても手に入る。わざわざ秋田まで来て

          くるり岸田さんと、くらをのごはん

          2020年3月1日グランドオープンです

          長い間お休みをいただいておりましたくらをのお昼ご飯を いよいよ明日3月1日より再開いたします。大変お待たせいたしました。 再開に際し、待ち遠しい「気持ち」とは裏腹に「現実」に対するお願いがあります。 新型コロナウイルス感染症に対し様々な情報が飛び交う中でのグランドオープンとなります。どうぞ慌てず、ご自身のご判断で、体調万全にしてお越しください。私たちスタッフも手洗いうがいなど実施してお迎えいたします。過剰な心配は必要ないのですが、 「持ち込まず、持ち帰らない」場所でありた

          2020年3月1日グランドオープンです

          答えはあなたの中にある

          2019年12月1日 日曜日。 秋田県潟上市ダイサンクレタ店内ワークショップスペースをお借りして【出前版 麹料理と発酵の教室 『こうじ学』プレ講座 ~ 麹のチカラを知ろう~】を行いました。 2020年春から始める本講座をたくさんの方に知っていただきたくて、映画で例えるなら「予告編」のような講座。 座学(雪国秋田県南の発酵について)、実験(違いを知る)、体験(料理の試食)を二時間にギュッと圧縮した内容で、午前と午後に一回ずつ行いました。 麹のチカラを可視化する、食べてみ

          答えはあなたの中にある

          くらをの2020年

          昨年11月末から始まったリフレッシュ工事。 はがせばはがすほど、この蔵がどんなふうに生きてきたのかがわかる。 いや違うな。むしろなぞは深まるばかり。 先人たちの謎のメッセージ、天井はがすとまた天井、へ?こんなところにまさかの玄関?とか。 増田町は重伝建エリア。古いものはそのままに、という概念が少なくとも私にもあったけれど、江戸から今日まで数え切れないほどたくさんの増築、改装、修繕を繰り返してきた(だろう)この蔵で、古いものっていったいどの時のもので、それは残すべきものなの

          くらをの2020年