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人手不足の鉄鍋ラーメン屋

ラーメン屋の入り口に「人手不足の為時間がかかります」という紙が貼られていた。外は駐車場には一台しか車が並んでなくて、蝉の鳴き声しか聞こえなくて静かだった。

でも店内に入ってみると、そこは別世界のように混み合っていた。外国人の親子、クールビズな男性、青い髪をした女性と彼氏、普段は交わることがない人たちがラーメン屋に集っている。

レジの上にも改めて「人手不足の為時間がかかります」という紙が貼られていた。黒い字に赤い字を重ねて強調している。きっと時間がかかってイライラしたお客さんに催促されて、店のスタッフもイライラしたのだろう。

赤いTシャツを着たおばさん(以下、赤Tさん)にカウンターに案内されて、チャーシュー麺を頼む。赤Tさんが青いTシャツを着たおじさん(以下青Tさん)に指示を出す。青Tさんは麺を茹でながら、同時にもやしを茹で、鉄鍋を直接コンロにかけながらスープを作っていく。

赤Tさんも、ボウルでネギを和えて、茹で上がったモヤシを皿に移し、鉄鍋ラーメンを運ぶ。青Tさんと赤Tさんはほとんど話さない。でも見事な連携プレーで、どんどんラーメンが運ばれていく。

ガシャガシャン!

ところが赤Tさんが重ねていた皿を崩してしまった。忙しいのに痛恨のロスである。赤Tさんが皿を戻しつつ、青Tさんは怒らず冷静にフォローしている。青Tさんと赤Tさんはほとんど話さない。

僕はカウンター越しでなにかのスポーツを観ている気分になった。ラーメンを待ちながら、心の中で静かに「頑張れ」と応援していた。