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友田とん×柿内正午・対談記事公開のオシラセ

友田とん×柿内正午「ナンセンスな問いに対しても誠実に考え続ける」
*ポイエティークラジオ第二十二回(2020年12月7日公開)を再構成したテキストを公開しました。音声とは違った印象のある文章です。ぜひどうぞ!

(記事はこちら)


(関連イベント)

【5/9にお二人の対談イベントがある】のでその前哨戦としてもお楽しみください。アーカイブ配信とともに、参加者にはこのイベントの文字起こしをしたテキストをペーパーとして差し上げます。(ダイレクトマーケティング)
(予約はこちら↓)


(冒頭サンプルのみ記載)

〈ただナンセンスで喜んでいるだけというのだとお話として深まらない〉

柿内:こんにちは、ポイエティークラジオです。お相手はわたくし柿内正午と、特別ゲストでこの方です。

友田:友田とんです、よろしくおねがいします。

柿内:今日は、友田さんが新しく出された『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する2』という本を読んで、たいへん面白かったのでその話をしたいぞ、というところでお呼びしているんですけれど……、友田さんについては、詳しいことは各自調べてもらって。いきなり本題からはじめられればと思っています。

 で、早速。もともと『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する1』が出たときに、いつ買いに行こうかなって悩んでいたら友田さんに「早く本屋さんに走ったほうがいいですよ」みたいなことをTwitterで言っていただいて。それで走って買いに行って読んで。

2019.04.18(5-p.135)
きのう、昼休みにツイッターを開くと友田とんさんからリプライをいただいていて、それは「『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する』を好きな本屋まで買いに行くか文フリまで待つか悩みに悩んでいる。」というつぶやきに対するもので、わ、なんかかまってほしいみたいな投稿になっちゃっただろうか、なんてことを思わなかったがいま思うと思われて、とにかく「代わりに読む人」の営業さんは熱心だなあと感心して、いい仕事ぶり、と思って、だからさっさと買いに行くことになった。
(プルーストを読む生活 柿内正午 H.A.B p.283)

それから満を持しての2巻なんですけれど、読んでいて、1巻はアハハと笑いながら、それこそ『『百年の孤独』を代わりに読む』(友田とん、代わりに読む人)の次はこんな感じなんだ、と思いながら読んでいたんですけど、2巻になってある意味真骨頂じゃないですけれど、『『百年の孤独』を代わりに読む』の終盤でA子さんがまた出てくるところみたいな、書いている本人も暗中模索で苦しんでいるような感じが2巻は続いている気がして。もちろんアハハと笑える部分もあるんですけど、いよいよ探求の旅というか、冒険が始まっていくんだ、というところをすごく感じるなと。

友田:そうなんですよね。1巻のただただおかしいという話が2巻以降も続くと思っていた人が結構いらっしゃるんじゃないかと思っていて。いまちょうど本屋さんに本が届き始めて、いろんな方がTwitterとかで紹介してくださっているんですが、本のパラパラ見た印象とか、文章をちょっと読んでみて、1巻と同じように紹介いただいていることもあって。でも読んでいくとわかるんですが、今回は全く違う感じにしたんですよね。柿内さんも以前の(ラジオ)放送で「どうなるのかわからなくて怖い」ということを言ってくださっていて。ぼくも着地点、行き先がわからないまま書いていたところがあって、いま読みなおすと「暗いな」というか、笑えないんじゃないかっていうか。笑えないことはないと思うんだけど、ただ何も考えずにアハハという感じではない。逆にそこを今回はしっかりと書きたいと思ったんですよね。

柿内:これ最初からシリーズ前提というか、一冊目の時点でちゃんと「1」と書かれて出ているじゃないですか。こういう展開って最初から思っていたものなのか、書いているうちに出てきたものなのか。

友田:書いているうちに、ですね。一番最初はタイトルの「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する」という言葉だけがぱっとあって、どう始まるかもぜんぜんわからなかったんですけど、書き始めたら(1巻冒頭の)フレンチトーストの話になって。言葉だけが出てきたときは、2巻と、最初のフレンチトーストをただ食べられないおかしな話との中間くらいのイメージだったと思うんですよ。ただ、最初に出てきたのがフレンチトーストだったから、ずいぶん軽い話になったなと自分でも思っていて。でも、ただナンセンスで喜んでいるだけというのだとお話として深まらないというか。深いところに行きたいというのはあるんですよね。それがただただおかしい話だけしていて深くなるんだったらそれでもいいんだけど、深くなるんだったらちゃんと……というか、重たいところも出てくるんだなというところが2巻ではありましたね。

柿内:ぼくも今回読んでいて、これは読み方としてはずるいかもしれないんですけど、友田さんって自分でレーベルも立ち上げられて、流通から何から何まで自分でやられているじゃないですか。友田さんが自分で本を作っていて、その本を届けるためにはじめられたような活動、それはすごく誠実なものだと思っているんですが、その活動の内容も本に反映されてきたのかなとも感じていて。これも語弊のある言い方かもしれないですが、友田とんという作家はある意味、社会活動家というか、めちゃくちゃ「ナンセンス」な切り口から、実はかなり社会派なことをやっている作家なのかもしれない。きっかけはナンセンスだけれども、そこからやろうとしていることは…‥、実用的というか、実践的なことをやっているんだなと思いました。

友田:一見ふざけているんだけれど、ナンセンスなことをやったほうが足をすくわれない、っていうのかな。具体的な社会問題に取り組むのはすごく重要な仕事なんですけど、ぼくがそういうふうに取り組んでしまうと、なんか「お勉強」みたいになっちゃうんですよね。正座して読んでしまう。もちろんお勉強は良くて、それ自体も好きなんですが、もっと違う可能性を模索しようと思うと、一見ふざけているように見える形で試行錯誤する場がないと窮屈というか。それは危険なことではあって、とんでもなく間違ったことを言う可能性もあるので十分気をつけなきゃいけないんですけど。だから、ナンセンスなように見えて社会的な問題を実践しているように見える。それはそうありたいと思いますね。出来ているかどうかはまだ自信がないんですけど。

柿内:ぼくは1巻を読んだときに……、

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