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日記hibi/ 2018/12/3〜12/9

12月3日(月)
朝から、新刊の搬入と告知・受注スケジュールの打合せをして、翌週校了の新刊のゲラを直して、翌々週搬入の新刊の受注を集め集計する。が、基本的にはしごとは本屋という心持ちでいる。
編集校正->受注->搬入の進行管理、というのは、まぁ編集校正に関わるかどうかの差はあるけれども、どの本でも担当しており、12月はそれが3件重なっていた。それで、わけがわからないよ、という状況に陥っている。受注や進行管理は先々週からチラシチラシ~していたため、事務的に作業すれば進んでいくところがあるが、編集、校正の部分はどうしようもなく、深夜に新刊の進行のことで電話をして、調整して、なんというか、そのまま各々作業があるのでしつつ、通話はつないだままなので時折打合せ的に会話をする、というような、なぞの、カップルかよ! 的なシチュエーションで深夜に延々と作業して夜が更けていった。

12月4日(火)
お腹が空いたので、コンビニに行くと▲の形のパンが売られており、唐突に、「あのシベリア」が食べたくなる。どこが作っているかわからないけれども、コンビニのパンコーナーの隅っこにさり気なく置いてある「あのシベリア」で、食べたくなってしまうとてきめん、疲れているし甘いものだしちょうどいいし、この空腹を沈めてくれるのに適任なのはあれである、という気持ちが高ぶってしまって、探してみたがいまいるコンビニでは売っていないようで、近隣の別のコンビニに向かい、しかしそこにもなく、まいばすけっとに向かったところ、しっかりあったので、美味しくいただいた。
今日も校正のためにゲラを裏紙に大量に印刷している。とくに古いもの、下の方にあるものは経年で押しつぶされて、しっかり平らになっているのでたいへん使いやすい。

12月5日(水)
小屋BOOKSやANDONといったHABのほかに本を置いているお店に納品に行く、八木書店にも追加の本を納品する、という作業をマストのタスクとして課したため、ひとまず家でメールを返したりなどの最低限のしごとを行い、店に向かい準備を整えてから出発した。したところ、なぜか道中にものすごい時間がかかってしまい、原付移動で寒さにやられたこともあり、どうしようもなく疲弊してしまって、ひとまずコーヒーを淹れた。へたれこむように座ってコーヒーを飲む。コーヒーがあってよかった。
そもそもとても寒かった、それで凍えながら八木書店に向かい、納品をし、それから今後の精算方法についてちょっとシビアにちゃんと話し合っていた。ぼくは真面目にやろうとすればするほど強い調子で話してしまうことが多くて、なんというか、会社員のころはそれはもう強い話し方をする人だったのだけれど、ちょっと内容的にそのようになってしまい、「やー。しまったなぁ、困ったなぁ、でもちゃんとしないとなぁ」と困惑かつ自覚しながら話していた。そうすると、知り合いの古本屋さんが仕入れでいらっしゃり、雰囲気を察したのかどうなのか、普段よりラフに話しかけてくださり場が和んだ。ありがたい。人に支えられて生きている。話は話でまとまるところにまとめ、しかし思いの外時間がかかってしまい、早くも暗くなった町中に出て、門前仲町のANDONに納品をするために向かう。寒い。そこでも顔見知りの方がいたので近況の報告など行うが、時間がないので早めに切り上げて、そこから清澄白河のリトルトーキョーに流れたときにはもう真っ暗で、寒く、気持ちも沈んでいたなかで、リトルトーキョーの1階には人がいないようで中も真っ暗だった。ので、より心は沈んだ。おそらく上階の事務所に人がいるので、声をかければ開けていただけるが、もうその体力というか、気力が萎えており、また来ればいいかと、リトルトーキョーと家は近いし、と、一度帰還した。それでコーヒーを飲んだ。からだを温めながらしごとをする。寒くて暗い、そして時間がなく急いでいる、というのは、こんなに人の心を落とすものなのかと、思ったし、だから余裕をもっていきたいものだとも思ったが、余裕とは、何で、どこにあるのだろうか。沈んでいる。寒くて暗くて、時間がないからだと思う。

12月6日(木)
夜には作っている雑誌のゲラの赤字を調整することになっていて、ここ数日紙束を持ち歩いている。今日の夜までにまとめておく、というタスクだったため空き時間があると読んでいる。
後楽園で取材があり、それを終えるとまたしても外は真っ暗で、やはり心は沈んだが、取材先が本屋であったので、本を購入してことなきを得た、という気持ちになる。マンガナイトBOOK。マンガ。『魔法が使えなくても』。
明かりと、作業場所を求めてマックに入ることにして、疲れている気がして糖分を欲し、マックシェイクを購入して、席についた。
けっこう長くマックにいるが、すぐ脇の席の女性のグループはぼくが座った18時過ぎからいまこの瞬間、20時近くまでずっと話している。すごい。学生のカップルが並んで座って勉強している、こちらもずっといて、ただ勉強なので理解できるが、19:30ごろから集中力が乱れ始めたのか、少しづついちゃつくようなやり取りがかわされている。地味そうな、というと失礼だけれど、誠実そうな雰囲気の男女で、なんだか、やっぱり、だとしても、若者は若者なのだなぁと思い、それはそれでなんだかとてもほっこり、というか、応援だなぁ、と気持ちの悪い視線を送っている。ぼくも集中力が切れ始め、そして作業のキリもいいので席を立ち、約束の時間まで少し間があったので、そういえば後楽園駅の駅ビルには本屋があったはず、と赴き、そこでぶらぶらしていた。資格系が充実していたが、中央大学が近いからだろうか、というか十中八九そうだろう、という品揃え。こういった本屋に来たときにいつもするように、ざっと全体を俯瞰して、売れ筋のコーナーの揃えやトレンドを確認し、配本のない個人書店ではむしろなかなか実物を見る機会がない新刊の文庫が網羅されているコーナーを物色し、ビジネス書もみるだけ見てみて、それからマンガを、さっきもマンガをみたのにマンガを巡回していたら、『尾かしら付き。』という、佐原ミズの新刊がでていて、佐原ミズは好きでよく読むのだけれど、「尾かしら」というのは「豚のしっぽ」がある男の子の話のようで、なんというかこれは、アウレリャノ!!! と思い、すぐさま購入した。アウレリャノ……。
そのあとでライオン堂に赴いて、雑誌の最後(になるといい)赤字を2人で入れていた。21時スタートだったので今日は終わらないんじゃないか、という気配をお互い抱えていたが、23時ごろなんだか終わりそう、という気配を共有し、そうして終わりを迎えた。終わった! 不安しかないが、とりあえずスキャンして、デザインの修正をお願いすることで今日は終わりにした。原稿については主に、これいいよね、ここ面白かったよね、よかった、自由なテーマのエッセイなのにネタかぶりwww といった話をしていた。
そこから帰り、あまりに空腹だったため、しかし深夜でろくな店は空いておらず、さりとてラーメンという気分では、今日も昨日も明日もまったくないので、駅前の松屋が選ばれ、とにもかくにも牛丼を食した。食したところ、相方が近所のバーにおり、たいへん楽しく飲んでいるということだったので合流し、しかしながら眠い、これはねむいなぁという気分でビールを飲んだあと、帰ってから気力で入浴をこなし、崩れるよう布団にダイブしてすぐに寝た。

12月7日(金)
起き上がる。飲んだ日の眠りが浅く、ちょっと早めに起きてしまうのはどういうことなのだろう、あるあるな気がするが、どうなんだろう、と昨日マンガナイトBOOKSで買った『魔法が使えなくても』を読み始めると、ヤバイ、ヤバイ、尊い、ヤバイ、と朝から活動する気力を得ることができたので活力。マンガは販売用に1冊発注された。
雑誌が出ますよという速報を流すというので、急いで注文書などを整えていった。なるべく一報のタイミングで注文書と注文先が同時に公開されているのが好ましいだろうと思っているので準備し、そうすると、もう一点、新規取次扱いするもの、これは雑誌の案件よりも前に進めていたものがあって、発売日も直近の設定であったので、順番的にこちらが先でないと、と思い結局、2つの注文書を急ぎ作ることになった。やはり今週もチラシチラシ~、なのだったが、成し遂げられ、いざ告知をと思った土壇場になって、webサイトの「取次」のページから、同じページに200以上のアイテムは置けません、というアラートが出てきた。そんなに? と思ったが、そもそもの効率を考えずに増築を繰り返したHABのサイトは、一つにまとめればいいような文字コンテンツが3つ、4つの別アイテムで表示される構成になってしまっていて、とにかく非効率だった。が、いま直している時間がないので応急処置で最低限のアイテムだけを集約し、なんとか体裁が整ったので、告知した。
「『ニューQ』と『しししし』をよろしくおねがいします。」
そうしていると、昨日の赤字を受け取ったデザイナーさんから修正の確認が来て、そしてその修正の最中に新たな赤字も見つかる、など、僕らの目は節穴か、という案件が舞い込み、もう、なんというか、「終わらないパーティ、始めよう!」という状況が訪れた、が、完璧と思って入稿できたことはないので大抵は粘り強くやるしかない、ということになる。粘る。

12月8日(土)
店を開けられる土曜日。このまえ水曜日に溜まっていた荷物の不在表を回収し、その荷物が午後から届くことになっていたため待つつもりでいると、この二日間の間にまた不在票が届いていたようで、その分の再配達も今日お願いしたい、なんならまとめてほしい、と思い連絡をすると、水曜の分の荷物と同じ時間帯指定はもう受付終了とのことで、仕方なく16時ごろの再配達ということにした。すると、一度配達員の方が13時ごろに来てくださり、開梱して、店番して待っているともう一度同じ配達員の方が16時ごろに来てくださり、荷物をいただいた。たいへんありがたく、同時に申し訳なく思ったが、配送のシフトやルートはどうなっているのだろうか。が、結局たまたま同じ住所であっただけで、ほかの場所にも、それはたとえば同じビルの一つ上の階であっても、同じシフトで届けているのだから、彼はずっとこの周りを何度も郵便局と往復しながら荷物を届けて回っているのだ、という当たり前のことを思った。それももちろんしごとだし、しごとだ。ぼくはこうして、ずっと同じ場所に座っている。これもしごとだし、しごとだ。
届けてもらった荷物に一つ、大きめの箱があり、それはぼくが20冊まとめて頼んだ新刊の入荷だった。週2日しか営業しない店なので、10冊以上の入荷は殆どないのだけれど、極めて珍しい例外としてその本は発注され、届いた箱を開けると、そこには、茶紙に包まれた、いわゆる「結束」という状態のまま本がはいっていた。印刷所が出版社に納品してくれた梱包のまま、ぼくのところまで再度郵送された、ということになり、それは発送する身としてはとても作業しやすいことで、なおかつ紙に包まれているので本も輸送中に傷みにくい形であり、だから効率が良かったし、みんなハッピーな案件だった。世界のエコとハッピーに貢献したぞ、と結束を愛おしみ、そうして丁寧に紙を剥がした。剥がした紙はHABからの発送の梱包用紙に使うので、とっておくのだ。エコ。
店を終えて帰ると、相方が燻製をやりたいと準備しており、燻製ははじめてのことだったので、おっかなびっくり燻したところ美味しく出来上がった。

12月9日(日)
序盤にぽこぽこと本が売れて、良きスタート、と思っていたら15時くらいからぱったりと人がいなくなって、なんだか僕が一人で作業している、みたいな空間が生まれた。それはそれで、という気もするが、基本的には寂しい。だいたい夜まで寂しい感じは続き、16時ごろに何人か入っていらっしゃったが、お二人組の方に「なにかおすすめの本ありますか?」という超困る振りを受けて「いやだなぁ」と思いながらも懸命な努力で一冊勧めたところ、別段その本のことは考慮されず、なんだかほかの本の話などされた上(日常的に本を読む系の人たちのようではあった)、何も買わずに帰っていかれた。とても寂しい。しかしながら、多少の売上は、ほかの方の購買で延び、まぁ平均、というライン落ち着いた。閉店してから『尾かしら付き。』を読む。本当にアウレリャノなんじゃないか、というか意識はしているような描写があり、しかしながら、当たり前だが、佐原ミズの漫画であって、たいへん魅力的だった。まんぞく。
夜にお好み焼きを作って食べ、昨日の燻製に引き続きなんだか煙臭い我が家で、少し前から手を付けていた『あるノルウェーの大工の日記』を読み終えた。専門分野の作業が、網羅的でも親切でもない書き方で、たくさんはいっているのがよかった。なんかわからないけれども、どうやらどんどん出来ていっているぞ、この屋根裏、というのがわかったし、彼が仕事に誇りをもっていることもわかった。

#READING  『あるノルウェー大工の日記』(オーレ・トシュテンセン、エクスナレッジ)
#READING  『魔法が使えなくても』(紀伊カンナ、祥伝社)
#READING  『尾かしら付き。』(佐原ミズ、徳間書店)


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