年収300万円の25歳OLが株とFXで20万円儲けた話


「お金は力だ。より多くのお金を持っていれば、それだけ多くの選択肢が与えられる。」
(ロバート・キヨサキ  投資家)


昔から、お金が好きだった。

弟や友人にお金を貸す度に利子を取り(今思えば相当嫌な奴だった)、人生初のアルバイトは時給3000円のホステスを選び(お客さんに差し出すライターが手汗で滑り点火できなかったのですぐ辞めた)、新卒で選んだ仕事は定時で帰れる地元ホワイト企業だった(面白くなくてこれももう辞めた)。

友情、プライド、やりがい、何かを犠牲にしてもなぜお金が欲しいのか。


唐突だが、皆さんは「どうぶつの森」というゲームをご存知でしょうか。


簡単に言うとどうぶつ達が暮らす村にプレイヤーが移住し、彼らと交流しながらほのぼのとしたスローライフを楽しむ、という自由度の高いゲームである。このゲームのゴールは特に定まっておらず、虫や魚の図鑑をコンプリートしたり、自宅のインテリアを整えたり、住人達との親密度を極限まで高めたりと、人によって様々。

私のゴールは「お金を貯めること」だった。

このゲームのスタートは「家の借金を返すために働く」というなかなかエグい設定(いい意味で)がされているが、この借金システムが当面は「稼がなければ」という目的を与えてくれる。

これを最も効率的に稼ぐのが、「カブ」システムだった。

もちろん、現実の株取引とは異なり、子ども向けにかなり簡略化されている。が、「安いときに買って高いときに売る」という基本は同じ。

苦労して虫や魚を捕った労働時間の半分で、カブが高騰しあっという間に借金を返し、その後はほかのプレイヤーより悠々自適な生活を楽しむ、という仮想セミリタイアを小学生ながら満喫していた私はこう思い始めていた。

「現実世界でもカブで成功したら、将来自由になれるのかな」

早速、古本屋で投資やお金についての本を手に取って読んだ。「ユダヤ人大富豪の教え」や「金持ち父さん」シリーズは物語形式でお金の知識がない小学生でも面白く読むことができた。お金を儲ける手段は自分の労働力以外にもある。いや、むしろ早々に自分以外にお金を儲けてもらう必要がある。稼いだお金は力になり、さらなるお金を稼いでくれる。

思い立ったら吉日。

母親にせがんで古本屋へ連れて行ってもらった。お金のコーナーを物色し、初心者向けの株式投資の仕方や株必勝法について書かれている本を片っ端から開いた。閉じた。

なにこれ難しい。

当時小学生の私のおつむでは理解不能。なんだ取引所って。なんだチャートって。そもそも企業ってなんだ。証券口座ってどうやって作るんだ。

諦めてはまた本を開き、諦めてはまた本を開き。中学生のときも理解できず、高校生になってもやっぱり分からなかった。大学生になる頃には資料を取り寄せてみたりもしたけれど、中途半端に理解できる分逆に手を出せなくなった。震災直後の不景気だったし、リーマンショックの痛みも癒えていなくて、投資のニュースは損した話の方が圧倒的に多かった。そんなの怖い。

それから時が経ち、社会人になった。

給料の低さに愕然とした。

予定では30歳までに1000万円貯金を作り40歳で起業し50歳からセミリタイア、気ままなスローライフを送るはずだったのに、全然足りない。

当時24歳の私の給料は300万円。昇給率は低いので30代までは給料はそんなに変わらない。ここから6年間で1000万円貯めるには1年間に約160万円貯める必要がある。ということは、使えるお金はたった140万円?その間ずっと、自分の体を酷使しながら?虫や魚を捕るために駆けずり回ったどうぶつの森の主人公のように?買いたいものを我慢して、小さな家で暮らして、たまの娯楽は住人とのおしゃべり?


無理だ。


いや、正確にはできないことはないが、それをするには多大な我慢と犠牲を強いられる。何が悲しくて華の20代にやりたいことを我慢してチマチマ節約しないといけないのか。使った金額の分だけ人は成長する。若いうちにお金の遣い方を学びなさい、というのはイタリアの格言だったか。お金を稼ぐのは力を得て自由な生活を送るため、自由になりたいのに不自由に暮らしていたら本末転倒でしょ。


結果、すっからかんである。


このままでは私の理想の生活が・・・と焦燥感だけが募る社会人1年目の終わり、ふと「100万円種金があれば投資でいくらでも増やせる」という記事を見つけた。2015年、ちょうどアベノミクス効果で景気が上向いてきた時期だった。

思い立ったら吉日。

小学生の時に分からなかった証券口座は、大人になった今ではインターネットで簡単に開設できた。まず50万円を振り込み、うち10万円を株に、10万円をFXで運用することにした。20万円だったら例えゼロになったとしても本業で取り返せる。

投資の神様ウォーレン・バフェットの教えに基づき、株の投資先は知っている会社のみに絞った。

正確には、知っている人が勤めている会社。

地元の人がベタ褒めしている中小企業や学生時代に有能だった友人が就職した会社、取引先で会った優秀な人が勤めている会社のうち、決算書も綺麗でここ10年間で比較的安値の株を買った。企業は人なり、良い人材がいる会社はいい会社に決まっています。うん。完全にフィーリングである。

こんな適当に始めた株投資だったにも関わらず、配当含め年間10万円の利益を投資初年度に確定した。アベノミクス始動の年だったのも大きかったかもしれない。

FXは損した話が株以上に多いため最初は恐る恐るだった。が、よくよく調べると大きなレバレッジを掛けない限りそんなことは起こらない。自分でどのくらいリスクを取れるか、節度を持って臨めば想定内の損失で済むのである。そういえば上記の話を持ち出してFXを批判する奴は皆FX未経験者だった。要は、株と同じで高い時に売り安い時に買えばいいのである。

当時は英国がEUから離脱するか否か、という政局的にかなり不安定な時期だった。イギリスポンドはここ10年で最低額。お買い得ではあるが、今後さらに下がるかもしれない、もしくは元に戻って今まで以上に上がるかもしれない。色々考えた結果、まあ当分は本当に離脱することはないでしょう、例え離脱したとしても天下の大英帝国、最終的には盛り返すに決まっています。たぶん。と全てポンドにつぎ込んだ。こちらも完全にフィーリングである。

これが当たり、10万円儲けた。こちらは単に運が良かったのだろう。直感、というのは意外に当たるものだ。

ちなみに年間20万円以上儲けると確定申告が必要であり、納税する必要が出てきてしまう。中途半端に儲けると税金で取られてしまい、逆に取り分が少なくなってしまうのだ。それを避けるため、その年はそれで終わった。

それ以来、気が向いた時に株やFXをやっており、現在は株とFXそれぞれ100万円ずつ運用している。

もちろん負けることもあるし(アメリカ大統領選はヒラリーの勝利に賭けて結局10万円損した)、逆に思いがけない勝ちが来ることもある(前々から良いサービスだなと思っていた会社が、突然親会社に高値で吸収されて10万円儲かった)。

このお金が増えた減った、という部分はもちろん醍醐味ではあるけれど。

それ以上に投資の面白いところは、世界と私を繋げてくれるところだ。

自分はちっぽけな存在で、ちっぽけな場所にいるけれど、株やFXをしている間は世界を意識することができる。企業の製品、合併情報、各国の大統領選挙、国家間の関係、資源、etc.

政治家や経済学者ならともかく、一般人の私たちが政治や経済について考える機会なんて、日常ではほとんどないけれど。

世界が今どうなっていて、これからどうなるのか。何が主流になって、何が消えていくのか。知識と分析力を武器に世界に想いを馳せるのはとても楽しい。今自分のいる場所に何の面白みがなくても、株やFXについて考えている間は視野が何倍にも広がる。

それをきっかけに、興味のある分野が増えて、知識が増えて、またそういったことを多く知っている人たちとの出会いを経て、さらに知識が増えて。政治や経済の知識だけじゃなくて、歴史や心理学も意外と必要なんだと学んだりして。お金を稼ぐ、のももちろん目的の一つなんだけど、それ以上に自分の教養が深まっていくプロセスが楽しい。

株やFXって生き馬の目を抜くような冷たい仕組み、だと思っていたけれど、私みたいに趣味娯楽の範囲で楽しんでいる人間には、もっとあたたかいものというか。

人や社会との繋がりを広げてくれるツールなんだなと。

なりたい自分に近づけてくれる手段の一つなんだなと。


そんなわけで、今日も休憩時間の合間に株とFXを覗いています。

選択肢の多い人生にするために。




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