22_奈川渡ダムc

02|岩盤の強化(長野県松本市・奈川渡ダム)

<大地の手触り> 土木学会誌 2014年2月号表紙

 アーチ(ドーム)構造によって膨大な水圧を支えるアーチダムは、コンクリートのボリュームが少なくて済むが、極めて強固な岩盤を有する谷でなければ成立しない。3つのアーチダムが連続する松本市の梓川流域の地質は、よほど頑丈なのだろうと素人考えで想像しながら現地を訪れた。

 奈川渡ダムの下流面を見るなり、巨大な曲面の美しさに目を奪われた。水平に設置されたキャットウォークがその端正な造形を引き立てているのだろう。堤頂を歩いて対岸に渡り右岸側の山肌に目をやると、その表面はコンクリートのピラーによってしっかり補強されていることに気がついた。

 自然地形の微妙な揺らぎをトレースしたその形状は、ヒューマンスケールをはるかに超える人工物として環境に 寄り添っている。アーチという理性的な造形と大地の表皮をなぞった野生的な造形。おなじコンクリートがみせるこのコントラストは、ダムという構造物ならではの魅力ではないだろうか。

文・写真:八馬 智 HACHIMA Satoshi

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