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【ワールドフリッパー】『光彩の摩天楼』で王道サイバーパンク結婚式を見せつけられた話

サイバーパンク・マリッジブルー・仲直り女女婚こと『光彩の摩天楼』最高でしたね! 今回は『光彩の摩天楼』をめぐる代替不可能性とあいつら結婚したんだ性の話をしたいと思います。

みなさんはバレッタリーダーでマザー・ラヴのハートをショットしまくりましたか? バレッタを歓迎しますできていない人はエリヤのケツにラヴをブッ刺すだけでデチューンバレラヴ射撃プレイできるのでおすすめです。大丈夫、きっといいことあるよ。恒常だし。どうしてもバレラヴ新婚成分が足りずトークン回せず下水みたいな空気を吸うぐらいならラヴのキャラエピその1をチェックしようね!

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『光彩の摩天楼』はサイバーパンクのド王道

メインシナリオ5章『機人の惑星』が人類の絶えた完全なロボットSFだとすれば、『光彩の摩天楼』は人類がギリギリでテクノロジーに呑まれず共存している世界です。

企業歴520年。広告まみれの明けない夜空。大企業が国家同然の権力を持ち、吸う空気すら立派な商品。完全栄養食ソイフードに電気信号で味をつけ、眼鏡を変えるような気軽さで脳みそを機械と交換する―――夢のあるような、やっぱりないのだろう近未来のディストピア、クオリアシティ。

そんなクオリアシティを生きるシューター(なんでも屋)のバレッタと相棒ハッカーラヴのコンビこそ『光彩の摩天楼』の主人公でした。

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そう、サイバーパンク。繰り返しましょう。『光彩の摩天楼』はサイバーパンクのド王道です。サイバネティクス(科学技術)が人間の機能を拡張し、ともすれば人と技術の境目が揺らいだ世界観。それがサイバーパンクの定義のひとつでしょう。筆者の狭い見識で先達を挙げるなら『攻殻機動隊』『ニンジャスレイヤー』『幻想再帰のアリュージョニスト』などがあります。

このような作品群で定番となる命題に

「なにもかもをテクノロジーで代替、拡張できるならば、この世に”取り換えられないモノ”(代替不可能性)は存在しないのではないか?」

が、ひとつあります。

クオリアシティでは事実上”取り換えられない”モノは存在しません。当然です。大企業が牛耳る世界において、売買不可なオンリーワンは商売の邪魔でしかないのですから。生まれ持った肉体も育んだ精神もテクノロジーで自由に改造できてしまうし、貧民の人生は大企業が売り上げグラフを伸ばすための商品にすぎません。

シティで生きる主人公のふたりも同様です。荒事担当のバレッタも左眼と聴覚、全身の神経をサイバーで改造しています。支援担当のラヴはそもそもホログラムでしかバレッタと会っておらず、肉体をネットワークで代替しているといえるでしょう。

いくらでも交換可能で、いくらでも替えがある。
ならばクオリアシティにおいて譲れないモノ、かけがえない絶対は存在しないのだろうか?
「光彩の摩天楼」はそんなサイバーパンクのど真ん中に真正面から挑んでいます。ゆえに王道。

そんな問いに対して”YES”を唱えるように突きつけられた回答が、シナリオ前半ラストにおけるラヴの裏切りです。

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本編の主人公であるアルクたち星見の街の旅人がクオリアシティに漂流し、彼らの存在を知ったバレッタが「ワールドフリッパーを使えば本物の空が見らえるかもしれない」と夢見たのが本イベントの始まりです。

しかしバレッタが求めるワールドフリッパーは、ラヴが社長を勤めるDayAndNightの最深部に眠る企業秘密でした。ラヴはそれまで隠していた正体を告げるとともに「バレッタとのコンビは退屈な日々を慰める娯楽にすぎなかった」と告げ、見事に裏切ったわけです。

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”自由の弾丸”を名乗り、クソッタレな世界でも自由を愛していたバレッタの人生そのものが大企業のVIPお気に入りの”商品”に過ぎなかった。あまりにも強烈な皮肉に絶句したプレイヤーも多かったと思います。

商品なのだから顧客であるラヴの都合が悪くなればあっさりと捨てられる。たとえバレッタ本人がラヴを相棒として想っていても、あらゆる物事を代替できるクオリアシティではラヴの所業こそ正道です。
事実、元シューターのキング・ジョンソンは「シューターにとって相棒の裏切りは日常茶飯事」と言っています(「敵の敵はオトモダチ!」参照)。

ここで最初の問いに戻ります。
クオリアシティにおいて、代替不可能なモノはあるのか?
肉体も精神も人生も大切な相棒も、なにもかも。かけがえないモノなんてありえないのか?

クオリアシティで宿る”実感”


摩天楼の現実に打ちのめされたバレッタは、酒(の情報を入れた水)に溺れます。彼女を連れ戻そうとやってきたアルクたちに、バレッタはこう愚痴をたれました。

「私のやろうとしていたことはラヴにとってお節介だったと思う?」
「私ら、友達なんかじゃなかったかな?」

これを受けたアルクたちは、彼女にシンプルな答えを返します。

「バレッタさんはそう思っていないのですか?」
「……ラヴの事は、わからないけどさ」
「バレッタがどう思っているかはバレッタが決める事だよ」

肉体も精神も人生も大切な相棒も、なにもかも。
目に見えるすべてがテクノロジーで代替可能だとしても、その代替性を認めるか拒否するかを判断するのは自分の意志にほかなりません。

自分はどう思うのか。どうしたいのか。テクノロジーでは絶対に侵せない、自分だけが受け取れる実感。クオリアの名を持つ街において、それだけが個人の自由が許される領域なのです。

ラヴの”YES”に対して、バレッタは"NO"を叩きつけました。

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「あの子さ。もうおしまい、って言ってたよな」
「けど……まだまだ全然、私にその気はないぜ!」

一方ラヴは、自分の裏切りに苦悩していました。
DANの社長としてバレッタを排除せねばならない使命と、本当はバレッタとのコンビを続けたかった実感のはざまが少女を苦しめます。
彼女はいくらでも替えがある「はず」の商品を愛してしまいました。

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「でも、私は……間違えたかった」
「ただの完璧なレプリアなら。こんな苦しみはなかったのに……!」

ここに対比があると筆者は考えています。

「ラヴと友達でいたい」その気持ちだけが残ったバレッタ。
「かくあるべし」その使命に縛られて本音に身を委ねられないラヴ。

自分だけが認めうる実感を”譲れない”と見るか、"目をつぶって然るべき”と考えるか。ふたりのケンカは、クオリアシティの本質を裁定する聖戦でもあったのです。

”自由の弾丸”は確かにLOVEを貫いた

バレッタは口癖のように”自由の弾丸”という表現を用います。イベントシナリオ最終話でサブタイトルになっているように、本作を貫く重要なキーワードです。

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初見ではピンときませんが、これまでの話をふまえて考えるならば、”自由の弾丸”は”エゴ”と言い換えられないでしょうか。(代替不可能性の話で言い換えるというのもおかしいですが)

サイバーパンクの大作長編ニンジャ小説『ニンジャスレイヤー』第3部でもキーワードとなった”エゴ”。ニュアンスとしては「自分がどうしたいかが大事。そこに他人が介在する余地はない」と考えられます。

他人を気にせず自分の意志だけで生きる人を我々はエゴイストと侮蔑したりもします。そして同時に「自由な人だ」と称賛する場合もあるでしょう。
”エゴ”と”自由”は表裏一体。ともすれば、バレッタはラヴに裏切られるずっと前から答えを口ずさんでいたのです。彼女の決め台詞「自由の弾丸は、たった今装填された」とは、エゴを貫く覚悟が固まった決意表明なのでしょう。

ラヴと決着をつけようと決意した時もまた、バレッタは”自由の弾丸”を謳います。ラヴと友達でいたい。ラヴの本音がどうであれ、私はそうしたい。私がそう決めた。その頑固なまでに自由な意志は、自分の気持ちに戸惑う少女を撃ち抜くには充分でした。

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全力のケンカを経てバレッタとラヴは晴れて仲直りします。バレッタが得た代替不可能な実感は、崩壊したコンビを再びかけがえのないモノに引き戻したのです。
ラヴはDNAの社長からいったん身を引き、バレッタと普通の友達からやり直す道を選びます。使命を放棄し、自身を貫いた”自由の弾丸”を心に装填した、というのがこのコンビにはふさわしいのでしょう。


テクノロジーがなにもかもを代替できる世界において、それでも取り換えられないモノ。
サイバーパンクが避けては通れない問いに対して、「光彩の摩天楼」は一切曲がることなく「自分が”そうしたい”と思う、その実感」を叩きつけたのです。ソシャゲのいちイベントに過ぎないはずの本タイトルでサイバーパンクの王道に真っ向から挑み、これを踏破した。その心意気と成果に筆者は心から拍手を送ります。この記事は、私がそうしたいと決めた証なのかもしれません。

それにしても”自由の弾丸”がラヴを貫く。ラヴをLOVEとするならば、まぎれもなくバレッタは少女のハートを射抜いたのでしょう。やっぱり結婚式じゃねーか。


おまけ:それぞれのキャラ雑感

・バレッタ
主人公その1。星見の街に歓迎できた者の義務として報告しますが、彼女がサイバーに頼りまくってるのはラヴにガッカリされないための努力の一環なんですって。ラヴはバレッタの普通性にあこがれたけど、バレッタはラヴの異能に奮起しているのでお互いがお互いをまぶしいと思い込んでいる。そんなダイヤモンヅ。
シューターになったのは「目の前で駆除されそうになった少女をほっとけず、つい助けてしまったところをラヴに見初められた」なんですよね。あのクソッタレな世界でそんな当たり前の善性を発揮できる女の子を僕たちはヒーローと呼ぶんだよなぁ。光彩の摩天楼第2弾でジョンソンCEOが託してくれそうなライドウォッチ栄えある第1位。
星見の街ではいつも空眺めてる。イベシナリオではラヴに空を見せたいと言っていたけど、本来は自分の夢だったと思われる。バレッタが「空を見たい」とぼやいたところにラヴが「私も見たい」と冗談半分で言ったらノリノリになった的なやりとりがあったのではないか? 自分だけの夢だとがんばれないけどラヴがそう言ってくれたからがんばれたのではないか?ボブはいぶかしんだ。

・ラヴ
主人公その2。星見の街に来てからはあんまりバレッタといちゃつかない。代わりにシロとじゃれあう。尊大で年齢不相応に頭がいいロリとシロが絡む。砂漠の友情……ボックスC、がんばろう!
照れ顔がぶっちゃけ発情しているようにしか見えない。こんなに力強いサイバーパンクであいつら結婚式だといいたくなるのはあの顔のせい。進化後なんてずっとその顔じゃねーか!
闇属性なのに光属性の攻撃力をめちゃくちゃ強化する。あーあーどっかに攻撃力バフが足りてないパワフリ特化仕様でパワフリLv3に必要なコンボを稼ぎたくてラヴの激重スキルウェイトを緩和してくれるそこそこ軽スキルウェイト持ちの射撃パワフリ光属性はいねーかなー!!!!!ホプルとかそういうのいいから。ラヴをリーダーのユニゾンに刺してバレッタを2番目のメインに据えるといいよね……採用です。

・コンダクター
バレラヴ観葉植物社長代理になった企業の犬。なんとなく「ラヴといつまでもDNAをやっていたかった」心情が見え隠れしている。でも一方でラヴには思うがままに生きてほしい親心を抱いている描写もあって……インチキだあいつ!ずるいぞ!ガチャにいねえぞ!

・キング・ジョンソン
ただのいい人。

・星見の街の住人
バレラヴ結婚式の仲人をしてくれたやさしいやつら。異世界を旅する根っからの自由人だからこそ、バレッタに最適なアドバイスを送れたベストオブ狂言回し。7章の更新はよ!

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