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第2夜 魔法の指輪

その夫婦は とても仲の悪い夫婦でした。

二人は いつも口喧嘩をしていました。

「お前ほんま 嫌いやわ!無理や!」

「私もやわ!ほんま嫌い!なんか もう うけつけへん!!」

と、毎日そんな ちょうしです。

ケンカの理由は 知りません。

ただただ 毎日毎日

「嫌いだ、嫌いだ!」

と、言い合っています。

娘のアイちゃんは 毎日毎日それを聴くのが嫌で嫌で たまりませんでした。

どうにかしようと アイちゃんは 毎日毎日

「どうか おかあさんとおとうさんが 仲直りしてくれますように。」

と神社の鈴を鳴らし お賽銭を五円だけ投げ入れ お参りしていました。

いつものように お参りしていると背の高い銀髪の切長の目をしたキツネっぽい お兄さんが アイちゃんに話しかけてきました。

「やぁ、おはよう。君は どうして毎日毎日 お参りをしてくれるんだい?」

その男は 神主さんのような格好をしていたので アイちゃんは

『神社関係の人やな。』

と思い 悩みを打ち明けました。

「…………なるほど。お母さんとお父さんに仲直りして欲しいと……そうだ!それじゃあ この指輪をあげよう!」

そう言って小さな巾着をゴソゴソとあさりガラス玉のついた指輪を取り出しました。

「この指輪をお母さんの指につけてあげなさい。そうすれば きっと仲直りできるよ。知らんけど。」

アイちゃんは とにかく仲直りしてほしかったので ダメでも良いから試してみようとその指輪を貰おうと右手を差し出すと、

「500円で ええよ。」

と、お兄さんが言ってきたので、『くれるんちゃうんかい…』と思いましたが 500円でその指輪を買いました。


家に帰ってさっそく、そのガラス玉のついた指輪を折り紙で作った カーネーションと一緒にお母さんにプレゼントしました。

ちょうど 母の日だったので お母さんは とても喜んで指輪を 左手のくすり指に はめニコニコしながら指輪をしばらく眺めていました。


アイちゃんも お母さんをジッと眺めていましたが、特に変化は ありません。


『ハァ…騙されたかぁ…』

と 思ったと同時に バスルームの方からお父さんが大声で何か叫んでいるのが聞こえました。

「おい!俺のパンツどこやねん!ちゃんと用意しとけや!」

「はぁ?そこに、置いてあるやろ!ちゃんと見ろ!」

と、またケンカが始まりました。

「ほんま、ムカつくわぁ。嫌いやわぁー。」

と、お父さん。

「私も 好きやわ。」

と、お母さん。

あれ?

「な、なんやねん!気持ち悪い!俺は 嫌いやからな!」

「私も 大好きやっちゅうねん!!」

お母さんは 焦ります。

自分の思ったことと反対の言葉が口から出てしまうのです。

なんとアイちゃんが貰ったガラスの指輪は 思ったことと反対の事を言ってしまう魔法の指輪だったのです。

「あぁー、ちょうしくるうなぁ!お前のことなんか 嫌いや嫌いや嫌いや嫌いや!!」

「ワタシも アンタのことなんか 好きや好きや好きや!!」

お母さんは 訳が分からなくなり更に叫びます。

「えぇか、ワタシは アンタのことが大好きなんや!誰が何と言おうと大好きやねん!!」

すると、お父さんは 黙ってしまい しばらく沈黙が続くとお父さんから 話し出しました。

「実は、俺もお前のことが好きや……ずっと好きなんやけど素直に好きっていうのが カッコ悪いというか、恥ずかしいというか…すまんな。」

「そうや!ワタシは アンタが好きやねん!こっち来て!」

そう言われた お父さんは お母さんに近づきギュッと抱きしめました。

「そうやねん…そうやねん…」

必死に『違うねん』と言いたいお母さんでしたが、どうしても『そうやねん』と言ってしまいます。

「ありがとう。ずっと俺は 仲直りしたかったんやけど 変な意地を張ってもうて素直に謝る事が出来んかったみたいや。
例え 嘘でも お前が俺に好きって言うてくれて俺は 気付いた お前の事が好きみたいや。」

「……なんなん?そんなん言われたら ワタシ アンタの事 嫌いになってまうやんか……。」

「あぁ、そうや例え嫌いになられても 俺はお前の事が好きって事に気づいてしもた。
いや、気付いてたんやけど なんかしょうもない事で意地張って………お前が そうやって言うてくれて意地張ってる自分が 情け無くなってきて……愛してるとかは まだ、恥ずかしくてよう言わんけど めっちゃ好きや。ほんまは ずっと前からめっちゃ好きでした。」

「あぁー!もうっ!ワタシもアンタが嫌いや!大っ嫌いやっ!!!!」

そう叫んだ 瞬間 お母さんの指輪に付いたガラス玉が虹色に輝きながら粉々に砕けてしまいました。

それから アイちゃんは 週一位で 3人で神社にお参りするようになりました。

指輪を売って くれた神主さん風のお兄さんにお礼を言いたかったけど何度 通ってもお兄さんと会うことはできませんでした。

この話の教訓・・・言葉には、力がある。

サポートとは?・・・データマイニングの際の、相関分析の指標のひとつで、ある関連購買における支持率を表す。たとえば砂糖について卵の関連購買でサポートが20%の場合、砂糖と卵を一緒に購入する顧客が顧客全体の20%という意味である。 要するに心から嬉しいということでです!